百話 お呼びの伴田兄妹
学校が終わり栞を家まで送ったあと、優親の家までやってきた。そこに来てからだが、別に栞と別れなくても良かったことに気がついた。
まぁ今更かと、そう思った俺は優親に迎えられて家に上がる。
「お兄さん!」
「
家に上がって靴を脱ぐと舞幸ちゃんがやって来て、飛び込むように抱きついてきたのでしっかりと受け止める。
胸に顔を埋めた彼女はぐりぐりと頭を擦り付けて、すぅ〜っと息を吸った。吸うな。
「舞幸ちゃんずっと会いたがってたもんね。まぁ?僕だって好透に会いたかったよ?」
「何で張り合ってんだオメェは」
胸を張って告げた優親に疑問を抱きつつ、抱きついたままの舞幸ちゃんの頭を撫でる。忘れそうになるけどこの子 一つ下なんだよね。
決して小さい子のソレとは違うわけで、俺だから良いものの他の連中にこんな事をすれば勘違いされてしまうぞ。発育だって悪くない、柔けぇんだよ勘弁しろ。
少なくとも栞よりは大きい舞幸ちゃんであった。栞がAくらいなら舞幸ちゃんはDくらいあるんじゃないか?詳しくはないが、多分そう
「舞幸ちゃん、そろそろリビングに行かないと、好透 立ちっぱなしで疲れちゃうよ」
「んふぅ好きぃ……♪はっ!そうですねごめんなさいお兄さん!」
「大丈夫だよ、行こうか」
胸に埋めていた顔を ガバッと上げた彼女はそう言って、俺の手を握ってリビングへと引く。
頬を朱に染めた彼女はとても魅力的に見えた。
苦笑する優親は、一歩下がり着いてきている。
きっと舞幸ちゃんのことを気遣っているのだろう、会いたがってたとか言ってたし。
舞幸ちゃんの手に引かれるままにリビングにあるソファに座ると、彼女は覆い被さるようにして膝の上に座る。
優親はというと、飲み物を持ってきてくれたようで、それを前にあるテーブルの上に置く。
ちなみに彼は、俺が菓子を好まないことを知っているので基本的に持ってこない。飲み物もお茶だ、素晴らしい。
「じゃあ僕は部屋に行ってるよ、ごゆっくりー」
「えっ、珍しいな」
「まぁ今回は舞幸ちゃんが主役みたいなもんだから、僕とはまた今度遊びに行ってよ」
そう言った彼は手を振って部屋に向かった。しかし俺といい舞幸ちゃんといい、少なくとも優親を知る女子たちが見たら発狂するだろうな。
そもそも彼の家にいるということが……ね。
「さてお兄さん、ずっと会えてなくて寂しかったです。今日はその分をしっかり取り返します♪」
「おっお手柔らかにぃ……」
舌なめずりをするようにそう言った舞幸ちゃんは、まるで小悪魔のように妖艶であった。
家の中だというのにまるで出かけるような装いだ、ちゃんと見せて欲しい。
「……今日の舞幸ちゃん、似合ってるじゃない」
「えへへ♪分かりました?せっかくお兄さんが来てくれるので頑張ってみたんですけど、そう言ってくれるとすっごく嬉しいです!」
嬉しいという言葉通りに抱き着いてくる舞幸ちゃん。だから柔いんだってばマジ、困っちゃうなァ俺。
彼女に感じていたイメージ通り、白と黒のコントラストが落ち着きを感じさせる装い。
しかし下は黒のミニスカートだ、落ち着きはどうした。
前に一緒に出かけた時はスキニーパンツだったので、よりそのイメージから乖離してしまう。しかしそれをギャップという形で活かしているので抜かりがないな。
ふわふわと揺れるウェーブしたセミロングがとても似合っており、こりゃモテるわーと思った。
「そういえば、もう少しで文化祭なんですよね?」
「そうだね。舞幸ちゃんも見に来るかい?」
「もちろんです!」
満面の笑みで間髪入れずに答えた舞幸ちゃん。
質問からなんとなくそんな気はしてたよ。会いに来てくれるのなら喜んでだ。
「頑張っているお兄さんが見れるだなんて、そんなのいくら払ってでも行かないと人生損です!」
「ありがとう、せめて優親も見てあげて」
「そう、ですね……優親お兄さんにも会いますよ!お義兄さんですから」
決して優親に興味がないわけではないだろうが、完全に馴染んでいるのかそこまで俺を意識してくれているのか分からないが、彼がちょっと不憫に感じてしまう。
というかそもそも、お兄さんと言うべきは優親にであって俺ではない。兄は俺じゃなくて優親ですよ?
「優親お兄さん目当てで会いたがる友達もいるので、衣織ちゃんと二人ではないですけど、お兄さんのこと皆に自慢しようかなって思ってます!」
「あぁそう……」
だから優親を自慢してあげて、俺は栞と衣織ちゃんおるで困るねん。というか普通に優親を見に来てるんだから、俺を見てもなんとも思わないだろうし、困るだろう。
最初の頃の疾峰がそうだったし。最初の頃は……だけどね。おっかしーなー何で最近は好感度が高いんだ?
「そういえば、今日はお義母さんもお父さんも帰ってくるのが遅いみたいですよ……ゆっくりできそうですね♪」
「ははっ、そうだね」
その " ゆっくり " になにやら(意味深)を感じたが、あまり深入りすることは無いと、とりあえずスルーしておくことにした。
帰るまではまだ少し時間があるようだ。
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