九十九話 珍しい組み合わせ
唐突のお泊まりであったが楽しい一晩を過ごした俺たちは、今日も登校して互いの席に別れて荷物を置いた。優親は先に来ていたようで、俺の姿を見るなり嬉しそうにこちらにやってきた。
「おはよう好透!手の怪我は大丈夫?」
「おはよ、もちろん大丈夫だよ」
そっか!と言いながら前の席に座る優親だが、相変わらずの可愛さだ。こりゃあモテるね。
しかし、そんな彼より何故か俺の方に来る女性がまた一人……
「おっはよ!」
「おはよう小春さん、離れてもらえる?」
もう恒例となったやりとりだ。彼女は相変わらず俺に抱き着いてくるが、必要以上のスキンシップは勘弁してもろてな。
「えぇやだなぁ、ウチのこともたまには構ってよ」
「ほぇー」
もはや何も言うまいと、俺はスルーを決め込む事にした。どうせこれ以上なにをするってわけでもないでしょ?
そう思って油断していたら、彼女はなんと俺の服に手を入れてきた。つめた!
「ちょっおいコラやめい!」
「うぇへへぇ……あったか〜♪」
この妙なスキンシップはどうにかならないのだろうか?困ってしまうのだが……
確かに先日のデートは手を繋いだりしたけどさ、それはあくまであの時のサービスみたいなもんで今はそうじゃない。
あまりにも過剰すぎるスキンシップに翻弄されていると、アレコレしている小春が急に ひぅっ!と声を上げた。
そりゃそうだ、だって栞がいつの間にか目の前にいるんだもん。
「小春、やりすぎ」
「はい……」
栞の圧に小春はすごすごと離れていった。もう何度目のやり取りか分からないが、良く飽きないものだと感心する。
そんな様子を見ていた優親は笑いながら、そういえばと話しかけてくる。
「そういえば今日か明日、ウチにこれる?」
「今日なら行ける、明日はバイト」
先日言っていた舞幸ちゃんのことだろう。先に決めておかないとズルズルと後回しになってしまうので、先んじて予定しておく方が間違いないだろう。
「じゃあ今日来てあげてよ。きっと喜ぶからさ」
「分かった」
しばらく会ってなかったしね。あの子可愛いからお話できるのも嬉しいものだ。
そういえば舞幸ちゃんの連絡先、あるにはあるけど連絡はとってないなぁ。
とはいえわざわざ今日会うことを知らせなくてもいいだろ、サプライズってやつだよサプライズ。
「放課後 どこか遊びにでも行くの?」
声を掛けてきたのは
「あぁ、優親の家に行ってくるよ」
「僕の妹が好透に会いたくて仕方ないみたいだからね。モテモテだよ好透は」
モテモテだなどと 余計なことを言いやがる優親であるが、疾峰は ふふっと口元に手を添えて笑った。
舞幸ちゃんとは少し仲が良いだけだっての、そーゆーのじゃありません!
時間が飛んでお昼時、昼食を食べようと弁当箱をカバンから取り出す。ちなみにこれは自作……ではなく優さんが用意してくれた物だ。嬉しい。
「あの、天美くん……良かったらお昼一緒に食べない?」
「えっ、いいけど……」
座っている俺の背中に手を添えて、屈んで目線を合わせながら疾峰が言った。
可愛い女の子と昼を一緒にできるのは嬉しいので断る理由はない。
そう考え頷くと彼女は ぱぁっと笑顔になった。
「ありがとっ、えへへ♪」
ニコニコ顔で自分の席に座った彼女だが、ソレは俺の後ろの席なので机を後ろに向ける。
こうすりゃ向かい合わせだ、どちらも自分の席なのでちょうどいい。
せっかくなので彼女のお弁当を見てみると、卵焼きにアスパラのベーコン巻きという最高の弁当ド定番が目に入った。あっ、たこさんウィンナーもある。
「天美くんのお弁当、美味しそうだね!自分で作ったの?」
「いや、このお弁当は栞のお母さんが作ってくれてるよ」
「あっ、もしかして変なこと聞いちゃった……?」
なにやら気にしてしまったようだ、自分の親に作ってもらっていないことに何かを感じ取ったらしい。申し訳なさそうな表情をしている。
「いやいや、別にそんなことないよ。ただ栞のお母さんがもし良ければ作ってくれるってことで、お世話になってるだけ。うちの両親は海外にいるから」
「えっ、海外?凄いんだね!じゃあ天美くんは一人暮らしなんだ?」
「そうだよ、さすがに家を長期間空っぽにはできないからね」
おかげで家事の経験が積めて随分とタメになってる。疾峰は すごい!と言ってくれている。褒め上手だなこの子。
「そっか、じゃあ天美くんはいい旦那さんになれそうだね」
「あっありがとう。すごい褒めてくれるけど、照れちゃうな……」
「そう?あはは♪」
明るく笑う疾峰はとても綺麗で、こりゃモテるわーと思ってしまった。
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