八十三話 等しい愛情

「お兄ちゃんってやっぱりモテモテだね、まさかナンパまでされるなんて」


「初めての経験です」


 実際初めてだ……ナンパはね。

 ただ三宅みやけとの件があるので好かないとは言わないよ。


 そんなこんなでまだ乗っていないアトラクションの場所に向かう。

 一応 目玉アトラクションは既に乗っており、一通りのモノは大体乗った。

 あと乗っていないのはここの絶叫モノの中でも少し軽めな物が一つ二つ程度だ。

 とりあえず乗れるものは全部乗っておきたいというものでしょやっぱ。


 という訳で乗りました。

 やっぱり目玉を先に乗ってしまったせいで物足りなく感じてしまう。


「楽しかったねぇ、さてお兄ちゃん、次は何乗ろっか?」


「よし、ならアレだな」


 待ってましたとばかりにはじめに乗ったジェットコースターを指さすと衣織ちゃんはニンマリとした。

 彼女は俺の手を握ってそちらの方へ引っ張る。


「いこいこーぅ♪」


「おっしゃ」


 まだまだ楽しめる、時間いっぱいまで遊んでやるさ!



 衣織いおりちゃんも俺も絶叫モノを乗りまくっては楽しみまくっていた。手を繋ぎあちらこちらへ歩き回ってここでしかできない体験を衣織ちゃんともすることができた。


 気が付けばもう閉園時間だ、名残惜しいが遊園地このばしょを後にする。


「楽しい時間はあっという間だね」


「そうだね。でも、また来ればいいさ」


 楽しい余韻を残しつつ駅に向かい電車に乗る。

 ほかの客たちも帰りのようで、電車が混んでいたため二人で立つことになった。

 衣織ちゃんを扉横の角に、俺はその目の前に配置している。ちなみに彼女は今、俺に抱き着いて息を吸っている。何してんの?


「ふゎぁ…お兄ちゃん成分……♪」


 あまり人に見せてはいけない表情をした彼女であるが、そんなことをされるとこっちまで変な気分になってしまう。ここ外ですよ!

 とはいえあまりの可愛さに頭を撫でてしまい、それがより衣織ちゃんの表情を蕩けさせる結果となってしまった。


「んんーお兄ちゃん好き好き♪」


「俺も大好きだよ」


「ぶぇへへぇ♪」


 他の乗客の目もあるというのに、俺もつられて想いを告げると彼女は吹き出しすように表情が蕩けた。だんだんヤバいことに……


「ねぇねぇ、あの子可愛くない?」


「確かに、えぇー妹さんかな?えっ待ってお兄さんの方イケメンじゃない?」


「確かに!」


 とある女性二人が俺たちのことを見てそんなことを話している。ちなみにナンパしてきた人たちとは別の人たちだ。


「えへへ、お兄ちゃんイケメンだって♪あの人たち見る目あるねぇ♪」


「そりゃ光栄だよ」


 俺が褒められたことで嬉しそうにしている衣織ちゃんがあまりにも可愛くて、ギュッと彼女を抱き締めると嬉しそうな声を出して恍惚とした表情になる。かわいいなぁ…


 途中で車内の椅子が空いたので二人で並んで座る。衣織ちゃんは俺にもたれかかるようにして甘えてきている。可愛い。

 もはや俺の情緒は衣織ちゃんに対する可愛いで埋め尽くされていた。


 

 気が付けばすぅすぅと可愛らしい寝息を立てた衣織ちゃんは俺の肩を枕にしている。

 随分とはしゃいでいたのだから当然だろう、この可愛らしい寝顔は姉妹揃っていい物だ。

 スリスリと頬を撫でると寝ているにも関わらず衣織ちゃんは嬉しそうに身を捩らせる。


 栞のことも衣織ちゃんのことも俺は等しく好きなのだと、ハッキリと再確認した今日この頃であった。



「ただいまお兄ちゃん!」


「おかえり衣織ちゃん」


 あれから家に帰ってきた俺たちは二人でそう言い合った。

 まぁ衣織ちゃんは家でご飯を食べたあとまた戻るんだけどね。でも未来の奥さんなのでこのやり取りは間違っていないハズだ。


 晩御飯は昨日のうちにある程度用意してあるのですぐに用意することができた。

 ご飯を食べ終えて片付け終わった俺たちは、ソファの上で抱き合っていた。

 ……互いの唇を貪欲に求め合いながら。


「ん……ぷはぁ♪お兄ちゃんとのキス、気持ちいい♪」


 衣織ちゃんは俺の胸に頭を押し付けて深く息を吸っている。汗の臭いが心配だ。

 しかし恍惚とした表情から少なくとも不快では無いことが伝わって安心である。


「お兄ちゃん……シよ?」


「いいよ」


 上目遣いでおねだりしてくる彼女を抱きかかえ、ベットの上に向かうのだった。

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