八十二話 遊園地デート再び
「お兄ちゃん!」
土曜日の朝、寝ている俺に飛び込んできたのは俺の愛する恋人、
当然
用事は当然、遊園地デートだ。
「えへへ、楽しみだね♪」
例の遊園地へ向かう電車に乗り、ニコニコとそう言った衣織ちゃんの頭を撫でる。
すると彼女は、嬉しそうに顔を綻ばせて俺に抱きついた。
「まさかこんなにすぐこのチケットを買うなんてね」
「お兄ちゃんこないだお姉ちゃんと来てたもんね」
現地に到着しチケットを購入し手に取った俺はしみじみとそう言った。それを聞いた衣織ちゃんはわざとらしくちょっとトゲのある言い方をしつつも、今日ここに来れたことが嬉しそうだ。
「そうだな。今日はその分沢山遊ぼうね」
「うん♪」
当然だが衣織ちゃんとだって沢山遊びたかったのだ、そう思い彼女とそう言うと可愛らしい笑顔を見せてくれた。
彼女に手を引かれ、最初に入ったのはお化け屋敷である。大丈夫かな?
そう思いながら二人で中に入ったのだがビックリするくらい静かだった。衣織ちゃん強いね。
そういえば彼女はホラー物が好きで、よくそういったゲームやら映画を見ていたことを思い出した。
「あはは…たっタノシカッタナー」
「無理すんな」
どうやらホラー好きの彼女のお眼鏡にはかなわなかったようで、とても困ったような反応をしていたので思わずそう言ってしまった。可愛いけど。
「衣織ちゃんホラー耐性高いもんね」
「そうかな?好きではあるけど…」
喋りながら二人で次に向かうのはジェットコースターである。
この遊園地って何個かあるから楽しめていいんだよね、軽いのから結構話題になってるものまで。
「ちっちょっと怖いかも……」
「ははっ、大丈夫だよ楽しいから」
少し緊張した様子の衣織ちゃんをギュッと抱きしめると、彼女は頭をぐりぐりと押し付けてくる。何この子可愛い。
まだ開園してあまり時間が経っていないためか思ったより早く順番が回ってきた。
スタッフに案内された座席に座り安全バーをしっかりと閉じる。
「なんかドキドキするね」
「分かる」
出発する前のこの時間ってなんかドキドキするよね、俺はこの感覚が好きだ。
時間が経ってコースターが進み最初の坂を登る。カタカタという音が、今登っていることを音で知らせていた。
「ひゃー高い!」
「やっぱり良いなこういうの!」
だいぶ上まで来たことで景色が良くなり、衣織ちゃんも俺もテンションが上がる。
すぐに頂上に来て徐々に下を向き始める。
「あぁっ!くるよお兄ちゃん!」
「あぁ、最高だな!」
これから味わえるスリリングに胸を踊らせた俺は衣織ちゃんにそう答えたのだった。
無事にプラットフォームに戻り座席から降りた俺たちはめちゃくちゃハイになっていた。
衣織ちゃんも目をキラキラさせている。
「はあぁ最っ高!他にもあるしそっちも乗ろ乗ろ!」
「よっしゃ行くか!」
二人してテンションが上がり、あっちへこっちへと回る。とっても楽しい時間だ。
そんな時間はあっという間に過ぎ、気付けばお昼であった。
栞と来た時と違い、今回は
「むむ、どーしよっかな?」
「あんまり重いの食べると…」
「あっ」
メニューを見ながらうんうんと唸りはじめた衣織ちゃんに一応釘を指しておく。
激しいアトラクションに乗るわけだから、あまり重いのは後悔するだろうと意図を込めそう言うと衣織ちゃんはハッとしている。俺の言わんとしていることに気がついたようだ。
「腹八分目くらいにしないとね」
「だな、じゃあ俺はこれ」
「重くないソレ?」
かなりお腹が空いていたのでハンバーグを選んだのだが衣織ちゃんから冷静に返されてしまった。まぁ年頃ですし。
彼女はというとラーメンにしたみたい、そう沢山食べる子じゃないからね。
二人で食事をした後はまたジェットコースターに乗りに行った……がその前にお手洗いに行くことにした。並ぶ時間があるからね。
事を終えてトイレの前で衣織ちゃんを待つ。まぁすぐ来るでしょ。
そう思って待っていると、二人組みの女性から声をかけられる。
「お兄さん、一人ですか?」
「良かったら私たちと遊びません?」
見た感じ大学生くらいだろうか?
金髪ロングの女性と茶髪のボブカット…くらいしか印象がない。可愛くないわけじゃないんだが、如何せん衣織ちゃんの存在が俺にとって強すぎる。
「お誘いは嬉しいんですけど、今日はツレがいるんです。すいません」
やんわりと断ってみる。とはいえこういう状況は初めてなのでどうすればいいのか……
しかし二人はあまり引く気がないらしく食い下がってくる。
「えぇー、せっかくだし一緒に回りましょ?お連れさんも一緒に…ね?」
「それが、連れっていうのは…」
「お兄ちゃん?」
そんなお二人さんに、恋人がいると言おうとしたところで衣織ちゃんが声をかけてくる。
「え、連れって妹さんですか?かわいい!」
「いえ、彼女です」
衣織ちゃんがそう言うと二人は顔を引き攣らせる。そりゃそうだよね。
「あー、ごめんなさいね」
「じゃあウチらはこれで…」
二人はそんなことを言いながらすごすごと立ち去っていった。他の人に声掛けてあげてね。
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