七十九話 なんか違くない?
「おはよう」
「よっ
優親に挨拶されてそれを返す。いつも通りと言えばその通りだが、やはりこういうのは大事だなと思う。
「おはよう
「ん?あぁおはよう
いつもはこれといって挨拶することはないのだが、昨日のことあってなのか知らないが挨拶してきた。
別に仲が悪いわけではないので大して気にせず返したが……まぁそういう気分なのだろう。
「おはよう三宅さん」
「?ぁっ
横から優親も挨拶するが彼女は今まで彼に気付いていなかったようで不意をつかれたような表情を一瞬浮かべた。マジかコイツ人気者なのに……
「……三宅さんって
彼女のことを見た優親が何かを察しているようだが、多分そういうことだろう。
昨日彼女から告白されたことは話していないというのに……
彼女も交えた三人でゲームの話で盛り上がっていると、後ろからまた抱きつかれた。犯人は知ってるんだぞ!
「おはよう
「……っぷ」
どうせ彼女だろうと思ってそう言ったのだが、返事の代わりに吹き出す声が聞こえてきて振り返る。
「はっ?
「ふふ…おはよっ!」
どういうつもりか、彼女が俺に抱き着いていたのだ。心の準備というか、想定外すぎて理解が追いつかない。
満面の笑みでとても魅力的だが流石にそれを魅力として捉えるには時間がかかった。
脳の処理を超えてきたな……
「あーっ!好透君に抱き着いていいのはウチだけだってのに!」
そう向こうから聞こえてきた声は今度こそ小春さんのものだった。
というか抱き着いていいのは栞と衣織ちゃんだけだよ?やめてね。
「なんでよりにもよって疾峰さんなの!?離れてよ!」
「っ…もうちょっとだけ!」
「はっ?はっ?」
二人して俺をスルーしながらそんなことを言っている。優親と三宅さんに視線で助けを求めるが困ってる俺を見てニヤニヤしている優親と、羨ましがっている三宅さんだ。あてにならねぇなコイツら見世物じゃねぇぞ。
「二人とも?」
そんな状況で現れた救世主ともいえる存在はやっぱり栞であった。マジ愛してる。
彼女はジリジリと二人に詰め寄って圧を掛けている。それを受けた二人は顔を引き攣らせタジタジだ。疾峰のソレはだいぶ新鮮だな。
「あぁはは、おはよぉ…」
「えへへ、つい…ごめんね長名さん?」
「んー?」
なんとか誤魔化そとする二人であるが栞から帰ってきたのは圧のある声だけであった。
俺は腕を広げて彼女を呼んだ。
「おいで栞」
「うん!」
その瞬間 彼女はキラキラとした笑顔になり飛び込んできた。めっちゃかわいい持ち帰ろうかな?
彼女を撫でていると二人は羨ましそうな表情をしている。疾峰に関しては本当になんで?
「なんかキャラ変すごくない?どしたの疾峰さん」
「いやなんか楽しそうだなって」
「?」
まるで何事も内容な反応をされ思わず疑問符を出してしまった。どゆこと?
楽しそうでしていい距離感でないと思うが…あぁクラスの男子連中の視線が痛い。
あっ
そんなこんなで朝のHRに入り、気付けば三時限目。体育である。
着替え終わってグラウンドにて待っていると、疾峰が話しかけてきた。
「朝はごめんね?天美くん面白いからつい」
「そですか…」
頬を朱に染めてそう言っているが、そんなふうじゃ色々と勘違いされてしまうぞ?俺が見境のない男ならどうするのか。
全く、警戒心の緩い子はマジで危ないから気をつけて欲しいな。ガチで心配、それ他所でやるなよ?
「ガードが緩すぎるぞ、疾峰さんは美人さんなんだからそんなんじゃ手ぇ出されるってマジ。心配になるからもっと警戒して」
「えっ、美人だなんて……もうっ!そういうとこだよ!」
「うぇっ!?」
より顔を赤くしてそう言ってくるが心当たりがない。そういうとこってどういうことだよ!
困惑している俺の後ろから栞が抱き着いてくる。
「好透またナンパしてる?人気あるの自覚した方がいいよ」
「えぇ……」
人気者にそんなこと言われてもなぁ、あまり説得力がないぞ。
それに俺はそこまで好かれていない……はずだったんだけど、よく考えると栞と衣織ちゃんだけじゃなくて小春も三宅も俺を好きって言ってくれたよな。
あれ?俺って……やめとこ、自画自賛キモいし。
とはいえなぜそこまで好かれるのかが分からない。まぁ小春は分かるけどさ、三宅は?
体育が始まる前だと言うのにうんうんと唸ってしまう、全力で体を動かして汗と共に流してしまおうか。
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