六十九話 デートの締めに

 あれから俺たち二人はいくつかのアトラクションに乗った。

 時刻は昼過ぎとなり、昼食を食べる為に園内の売店で何を食べようかと物色している。


「ホットドックありだなぁ…」


「いいねぇ、ポテトも添える?」


 デートなのだから本当はもう少しイカしたものにするべきなのかもしれないが、俺たちにそんなものは必要ない。

 なんなら栞からホットドックが良いとか言ってるし。ホントかわいいなコイツ。


「いいねぇー!そこに炭酸のジュースとか良くない?」


「最高だな」


 本当はレストランにでも入ってちょっとお高い料理でも食べるのがセオリーなのかもしれないが、むしろこれくらい食べやすい物の方が俺達にはしっくり来る。言っても俺らは学生だしな。

 しかも食べ歩きとかできるから最高だ。

 売店でホットドックとポテト、そして炭酸のジュースを買って適当なテーブルに座る。

 二人して熱々のポテトを摘み口に放り込む。


「んん〜♪やっぱこれだねぇ♪」


「だな、美味い」


 栞の良いリアクションを見ていると よりいっそう美味しく感じる。

 あっという間にポテトが消失し、ホットドックももう一口まで食べてしまった。

 全然美味しいのでまたしばらくしたら買おうかな?


「えっ、好透こうすけ早いね」


「いや美味しかったからつい…ってか栞ももう半分ないじゃん」


 口元にケチャップを付けながらホットドックをハムハムしている栞はとても可愛い。

 その可愛さに反して食べるスピードは早い。

 今半分とかだったのがもう食べきってる、喉つまらしちゃダメだよ?


「美味しかった!」


「だな、また後で食べたいくらいだ」


 そう言いながら彼女の口元についたケチャップをティッシュで拭う。


「ん…ありがと♪」


 笑顔の栞がやっぱりかわいい。

 なんか最近彼女にときめく事が多くなってきたなぁ…まぁ良い事か。

 まだ残暑が続き汗の滲む今日この頃、飲み物の消費速度も中々のもので食べ終わった今、もう少しで空になる。Lサイズだというのに…。


 飲み終わったカップを捨て、次のアトラクションに向かう。

 と言っても今の俺たちは絶叫系にどハマりしているためソレ系のアトラクションしか乗ってない。

 ちなみに…


「よし、じゃあアレ行くか」


「やだ!」


 俺が差したのはお化け屋敷だ、完全に嫌がってしまっている。

 彼女は頬を膨らませながら睨んでくるが圧が全くないのでただのご褒美である。


「あははっ、可愛すぎるだろ!」


「むぅー!好透のおバカさん!」


 栞が可愛すぎるあまり 腹を抱えて笑ってしまったのだが、彼女がかわいいことを言っている。おバカさんとか聞いたことないぞ。


 遊園地という楽しげな空間がそうさせるのだろう、すっかりはしゃいでいる俺は少し幼くなっているのかもしれない。

 そんな事も気にせず思いのままに遊んでいると、気付けば時間はもう夕方だ。

 ちなみにホットドックはもう一回食べました。栞もよく食べるね、 良い事だ。


 もうそろそろ帰ろうかということで、締めに観覧車に乗ることにした。

 回ってきたゴンドラに乗り込み、並んで座る。

 …いや、並んでというか彼女は俺の膝の上に座っている。


「おっ、いい眺めになってきた♪」


 イチャイチャしながら上昇していくと、観覧車の真ん中より上にきたところだった。

 だいぶ向こうまでの景色が見え、夕日によって照らされたソレは思いの外 幻想的に映る。


「こういうのも良いな」


「だね♪エンディングにバッチリ!」


 二人して外に見える綺麗な景色に見とれていると、栞が口を開く。


「…観覧車っていうと、定番だよね。……デートの」


 頬をほんのり赤く染めた彼女は上目遣いでこちらを見やる。

 それは 何かをねだるような眼差しであることも、その '' 何か '' がどういう物かも手に取るように分かる。


 だから そっ と、彼女の顎に手を添える。

 それを受けた栞はゆるく瞼を閉じた。


 夕日に照らされた観覧車の中で、俺たちはそっと口付けを交わした。

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