六十五話 ちょっとくらい遊んじゃおう
停学になり三日、俺はこの時間をめちゃくちゃ謳歌していた。
まずとにかく栞と一緒、それもほば密着状態である。これはやばい。
バイトと買い物以外家からもあまり出ず、
夜になれば盛ってばかりだしこのままではさすがに不健康だ…でも別に休日ってわけじゃないしなぁ…。
あくまで暴力沙汰の処分であるわけで、遊びに行くのも違う。
でもこれでは良くないし…うーん。
「…すごい考え込んでるけど、どうしたの?」
今の状態に悩んでいる俺の顔を栞が覗き込んで心配そうに言った。
「いや、あまりにも不摂生というか、堕落してるような気がして」
「確かに家に篭もりっきりだもんね」
彼女が納得したように言う。
ほぼ家に篭っていたんじゃ良くない、なにか変化が欲しい。
「どっか遊びに行く?」
「それも考えたんだけど、俺の場合はあくまで暴力沙汰の停学だからなぁ…本来は頭を冷やす期間だと思ってさ」
俺がそう言うと彼女はポカンと首を傾げた。
「でも、あの状況じゃ仕方なくない?私だってあの時
もちろんそれも思った、俺があの時した事は間違ってるなんて絶対に思わない。
栞は俺の大切な恋人だ、それが身も心も傷付けられるのを黙って見てることはできない。
やむを得ない状況だったのだ。
「それはそうなんだよな、あそこで黙って見てるだけの方がよっぽど異常だ」
つまりはそういうことだ、ちょっとくらい遊びに行っても
そう思って俺たちは遊びに行くことにした。
もちろんちゃんと勉強してからね?こら、逃げるな栞。
というわけで無難にゲーセンに来ました。俺も栞もゲームは好きだからね。
定番であるクレーンゲームには目もくれず、向かうは音楽に合わせて画面やボタンを押すゲーム…俗に言う音ゲーである。
二人で一緒にプレイ出来るものが多いので、あっちこっちの気に入ったものを適当に選び遊んだ。
ひとしきり楽しんだ俺たちはゲーセンを後にした…のだがすぐそこでちょっとしたトラブルが発生していたみたいだ。なんか騒がしい。
「悪いけどホントにカレ待ちなんだって、しつこいなぁ…」
「いいじゃん、せっかくだし遊ぼうぜ?絶対楽しいってマジで!」
どうやらナンパですな、また二対一か…流行ってんのその人数は…。
「あぁもうマジでうっさい!」
「おいおい、そんな言い方なくねぇ?俺ら別に嫌がらせしてるわけじゃないんだからさー」
いや嫌がってるのにしつこく誘ってる時点で嫌がらせだろう。とことん自分勝手だな…。
というか女性の方なんか聞き覚えあるんだよなぁ…。
そんなことを思いながらそちらに近付いていくと、その聞き覚えが正しいことが分かった。
「あっ、
「だな」
俺が気付くと同時に栞がその人の名前を呼んだ。
あの人はバイト先の先輩、
あの人は美人なのでやっぱりああいう阿呆も引き付けちゃうんだなぁ…難儀なものだ。
そんなことを言いながらその中に無理やり入り込む。
「はいはいもうやめとけよー」
「なんだてめ…ってお前!」
「えっ、
割って入ったところ男の方が俺を見てそんなこと言ってるけど…誰だこいつ?
「なんだよ、俺お前なんて知らねぇぞ」
「はぁ?てめぇ前に女奪ってっただろうが!」
奪った?悪いが俺は誰かと女の子を取り合った覚えなどない、人違いだ。
「よく分かんねぇけど…まぁいいや、この人俺の知り合いなんだよ、嫌がってるからやめてやってくれねぇと止めにゃならんくなるからあっちいってくれ」
「っざけんな!」
そう怒鳴って殴りかかってくるけどその拳はとても握りやすい、大した事ねー。
ちょっと力を込めたらすぐに手を引っこめる。まぁそりゃそうか。
「ックショウ…もう行こうぜ、面白くねぇ」
だせぇ捨て台詞を吐いて二人でどっか行った。
ちいせぇ背中だこと。
「ありがとう天美君、栞ちゃんとデートだったでしょ?二人ともごめんね」
「いえ全然、ここで無視した方が怒られますよ」
「好透は人助けしてるほうが様になってますから大丈夫です♪」
手を合わせてそう謝る彼女だがあれはしょうがない、気にしないで欲しいな。
「藍香?誰だソイツらは」
しばらく喋っているとやたらチャラチャラした人がやってきてそう言った。ちょっとやべぇかも。
何があっても良いように栞を俺の後ろに庇った。
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