六十一話 恋バナ

天美あまみ君と長名おさなさんっていつから付き合ってるの?」


 そんな疾峰はやみねの質問、やはり女の子は恋バナがお好きかな?


「実は夏休み前なんだよね、まぁその前からラブラブだったけど♪」


 もちろんそれは栞の言葉である、その表情はニヤケている。ちょっと恥ずかしいぞ…。

 それが意外だったらしく疾峰が少し驚くようなリアクションをした。


「えっ、意外だね。もっと前からだと思ってた」


「そう?まぁ私たちくらいになると別に付き合ってなくてもラブラブだからねぇ♪」


 まぁ登下校ごとに手を繋いでいたのは相当に仲が良くないとやらないだろうし…ラブラブなのは否定しないよ。

 ただその言い回しはちと恥ずいけど。


「そういえば二人はいっつも手を繋いでたんだよ?登下校の時ずっと」


「え、そうなの?そんなに仲良しさんなのちょっと羨ましいな…」


 小春こはるが呆れたように言ったソレに疾峰が少し頬を朱に染め驚きつつそう言った。

 思えば小学生よりずっと前からである、そう思うと不思議なものだ。


「ふふっいいでしょー♪ちょいちょいお泊まりなんかもしてるんだ♪」


「すごいね、本当にラブラブさん」


「もちろん…それ以上も…ふふっ♪」


「やめないか」


 羨ましそうにしている彼女に栞が調子に乗ってアカンことを言ったので思わずツッコむ。

 それを聞いた疾峰が口元を押さえ顔を真っ赤にしている。


「やっぱり好透こうすけは私の恋人って、ちゃんと皆に知ってもらわないといけないでしょ?」


 そう振り向きウインクした彼女はとても魅力的で思わず見惚れてしまった。

 最近 栞はどんどん魅力的になっているな…対する俺は、どうなのだろうか?

 少しだけそんな不安が過ぎるが、すぐにそれは杞憂だと分かる。


「そうしないと、最近どんどんかっこよくなっちゃう好透を取られちゃうからねー♪」


「そりゃどーも」


 俺の不安を感じとったかの如く彼女はそう言って笑った。ホッと胸を撫で下ろす気分だ。


「あはは、好透君照れてる?かわいいなぁ♪」


「ちょっと小春?好透は渡さないからね?」


 二人のそんな小競り合いも思えば見慣れたものだ。というか小春さんはいい加減 他の相手をみつけたらどうですか?



 そんな日の帰り、何故か疾峰が俺と一緒に帰りたいと言い出した。

 これはアレか?優親ゆうしんと親密になる為に俺からの協力を願ってるとか?

 いいぜ任せとけ、俺に何ができるか分からんがやってやるよ。


「疾峰さん今日は好透と一緒に帰りたいんだ?というか好透もよくOKしたね?」


「まぁ別に良いかと思ってな、友達だし」


 栞の素朴な疑問にそう返す。

 わざわざ邪険にする必要もないし俺としても一緒に帰るのはやぶさかでは無い。


「加えて言うと可愛い女の子と帰りたくない男なんていない」


「好透は正直しょーじきだねぇ、まぁだから好きなんだけど♪」


「かっかわいいなんて…」


 俺の言葉に栞は笑い、疾峰は照れると反応もそれぞれだ。俺としては眼福である。


「そういやこんなこと聞くのもあれだけど、今日一緒に帰るってのは一体?」


 一緒に帰るのはいいものの、それは彼女の本意ではないだろう。そう思って聞いてみたのだが…。


「えっと…特に理由はないんだけど、ただ楽しそうだなーって」


「あ そうなの?」


 頬をかきながらそう疾峰は言った。

 まぁそれならそれで良いか…俺の予想大ハズレだったけど。


「それに 長名さんの話も聞きたかったし…えへへ」


「つまり恋バナってか」


「うん!」


 たしかに栞と俺の関係は長いからなぁ…そこでしか聞かない話もあるだろう。

 ちょうど身近に俺たちにその話を聞こうと思ったのだろう、彼女は笑顔で答える。

 そこから美少女二人による恋バナが始まった。



「あれあれ?好透くんじゃん、こんなところで会うなんて奇遇だね」


「おお、良月いづきか。学校ではあんまり合わないのにな」


「言えてる」


 そう肩を揺らす彼が疾峰を見て目を見開いた。


「ちょっと、え?たしかあの子転校生だよね?まさか二股?すごいね!」


「おいやめろそれは誤解だやめてくれ」


「なんか俳句みたい」


 そんな下らないやり取り、というか別に俺は手を出した訳じゃねぇんだって。

 彼女いるアピだってしてるし疾峰だってわざわざ俺にゃ友達くらいにしか思っとらんだろう。

 彼女にも失礼な言い分である。まぁ冗談が殆どだろうけど。

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