五十六話 夏休み終わるってのにバイト
「あっ
声をかけてきたのは
彼女はもじもじとしながら立っている。
「端田さん?
剣呑な雰囲気を隠すことなく彼女を見つめる栞。
まるで眼力だけで端田を追い返そうとしているようにも見える。
「えっと、
そう言って彼女は頭を下げるが、正直いうと今更感が拭えない。
「別に私は良いよ、好透は許したんでしょ?一緒にご飯行ったくらいだしぃ?」
栞がニヤニヤと俺を
「えっと…それはその…」
「別にその事でも怒ってないよ。あの後は私と好透、たくさんイチャイチャしたし」
しどろもどろとする端田に対して自慢するようにそう言う栞。すげぇドヤ顔だな…かわいいけど。
「え…」
それを聞いた端田が顔を真っ赤にしている。
いや可愛いなおい…ってか想像すんな恥ずかしい。
「あー♪もしかして想像した?端田さん顔真っ赤♪」
なんか栞が小悪魔な感じになってる。こんなキャラだったっけ?
そんな彼女が俺の体に抱きついた。
「悪いけど好透は渡さないからね?」
「それは…うん」
どうして端田はちょっと残念そうにしてるんだよ、変な意図を感じるからやめてくれ。
端田と別れ改めて家に向かう、その道すがら。
「そういえば、文化祭あるねぇ」
「いや気が早いな」
確かに二学期のイベントといえばそうだけど、まだ何ヶ月も先だ。
しかももうちょい休みがある。
「文化祭って何やるんだろ、ラノベとかならメイド喫茶とか定番だよね」
「ベタベタすぎて手が洗いたくなるな」
ベタベタコッテコテの定番だが、それだけ活かしやすいとも言える。
とても良いことだと思うな俺は。
「メイド…今度メイド服とか買ってこよ、そして好透にご奉仕するんだ!」
「それなら晩飯は頼んだ」
「それは勘弁してぇ〜」
残念ながら栞ではメイドと言っても格好しかできない。どうせコイツのことだから下ネタだろ。
「エッチなご奉仕するからそれで良いでしょ?」
「なんて魅力的な提案だよコノヤロー」
俺が断らないと分かって言ってやがんな?
「それなら俺も執事服とか探してみるか?」
「ちょっと待ってそれヤバイク」
「黙れ」
なんでいちいち下ネタを挟むのか、咄嗟のことで口が悪くなってしまったではないか。
どう責任を取るというのかね?
「だって絶対私我慢できないよ?押し倒すよいいの?」
「ドンと来いよ」
不毛すぎるぞ、答えが分かりきってんだから。
ただここで一つ問題が。
「そもそも見つけてもそんなに金ねーだろ」
「そうだね」
俺らでも買えるくらい安いのもあるのだろうか?
その辺の事情は分からないので何とも言えない。
「せっかくならバイトする?」
「それ普通なら夏休み初めとかにする話だろ」
今更感がすごい。
とはいえそういう社会経験もしておいて損は無いし、お金はあればあるほど良いともいえる。アリだな、早速明日から探してみようか。
という訳で面接受かりました。
二人で喫茶店のバイトです定番ですね?ファミレスのが定番か。
どうやらここは人手不足みたいで、即採用だった。
不思議なタイミングだったので店長さんも困惑していたがそれはそれとして喜んでいた。
というか冷静に考えて栞は大丈夫なのか?
まぁ家事と仕事は似て非なるものだからあれだけど…まぁ何とかなるだろう。
ちなみに俺はキッチンに入ることになった。
家事をしてるからって安直じゃない?
栞はもちろんホール。頑張ってねー。
人生初めてのバイトで初日、結構しんどかったがやっていれば慣れるだろう。
「お疲れ様ー好透ぇ…」
「おつかれ」
初めてなのもあり疲れ気味の可愛い栞だ。
彼女は最初週五でとか言っていたが、店長も俺もさすがにそこまで無理しないようにと言った。
別にシフトを増やすも減らすも後で出来るからね、まずはゆっくり慣らしていこうという事で週三から始めようと思う。
店長は人が増えてくれるならそれでもいいと言っていた。それならいっか。
そして次のバイトの日。
「あれ?好透くんじゃん」
「あっ」
彼は
コイツもモテるんだっけか。
ちなみに彼は俺たちと同じ中学で普通に喋る。
「へぇ、そうなんだ。じゃあ長名さんとはもう?」
「じゃあってなんやねんじゃあって…まぁそうだけどな」
コイツもよく俺のアレを聞いていた一人だ。
思い出のアレみたいに言うな。
「そっかぁやっとかぁ…いやぁめでたいなぁ」
「わるいが付き合ったのは夏休み前だぞ、めでたがるなんて今更だ」
「それでもさぁ」
久しぶりに話をした事で少々盛り上がったが、これからはお仕事なのだ、彼は先輩なので色々と教えてもらった。
お陰で色々とやりやすかったし、楽しい時間になった。
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