五十五話 あっという間に登校日

 八月を迎え、夏休みを満喫している俺たち。

 あれからプール行ったり海に行ったり、普通に街中で遊んだり勉強したりと楽しんでいる。


 今日は俺の家にみんな集まっている。

 優親ゆうしん小春こはるはまだ宿題が終わっていないらしい。

 衣織いおりちゃんと舞幸まゆきちゃんはもう終わったってさ。

 俺たちはもう問題集以外の物も全て終わらせているので遊びに完全に集中出来る。


 …とはいえ別にあの二人なら頭良いし困ることは無いだろう。


「いよっし、おーわり!」


「ウチもー!」


「お疲れさん」


 ようやく問題集を終えた二人に飲み物を注ぎ足す。


「こーすけー、撫でてー」


「なんでだよ」


 優親がそう言って両手を上げるが、そんなことに従う義理はない。


「あっずるい、好透こうすけ君ウチも!」


「だからなんでだっての」


 優親の頭を撫でていると小春までせがんできたが、撫でる義理ない。そう言ってるでしょー。


「そうして好透は二人の頭を撫でたのでしたー、ってそれなら私にもやってね」


「もちろん」


 方や美少女、方や美少女みたいな男(男の娘)を撫でている俺を見てしおりが変なナレーションを入れつつ撫でるように催促してくる。かわいいね。


「そういえばご飯どうしよっか」


 栞を抱き締めながら彼女を撫でまくる俺に衣織ちゃんがそんなことを聞いてくる。


「せっかくならと思って食材あるし…あれなら作るぞ」


「えぇ、それは悪いよ」


 優親はそう言っているが、俺は別に外食でも家でも構わない。


「食べに行っても良いけど、あれなら出前にする?」


「それも良いな」


 小春がそう聞いてくるのでそう答える。というかそれが一番間違いないだろう。


「いやぁピザなんて贅沢だねぇ」


「でも割り勘だと安いな」


 俺たち男組が出すかと優親に話したら栞たちが''それはありえない''と言って怒ったので皆で出し合った。

 とはいえ一歳下の二人は出してないけど…というかどちらも妹だからな、兄と姉が出せば良いということになったみたいだ。


 昼食を平らげた俺たちは何をしようかと話していたのだが、今はゲームをしたり喋ったりなど割と皆して思い思いに動いている。

 ちょっとカオスな風景だがこういうのが一番気楽で楽しいものだ。日常の延長線って感じでよき。


 そのまま時間は過ぎて、夜になって解散した。

 楽しかったのでまた集まりたいね。


 そんな感じで夏休みが過ぎ、その日々のなかで端田と会ったり、いつぞやの師匠とか呼んでくる先輩と会ってしまったりだったが、総じて楽しい夏休みになったと言えるだろう。


 そうして登校日となり、久しぶりに学校へ通った。

 遊んでばかりだったが、終わってしまえば呆気ないものだなぁ…。

 皆の水着は何度も見て満腹だよ、最高でした。

 また見たいね。


 それはそれとして、久しぶりの学校でみんなだらけている。


「久しぶりだな、天美あまみ


「だな、久しぶり」


 夏休み中会うことが無かった高畠たかばたが話しかけてきた。おっひさー。


「えいっ♪この感じ久しぶりだね好透君♪」


「だね、なんか不思議だ。ということで離れてね小春さん」


「いーやだよー♪」


 登校日だというのに彼女の声は弾んでいる。

 あれ?そういえば…。


「おはよー好透、遅くなっちゃった」


「おはよう、珍しいな?」


 優親が遅れてやってきた、珍しいね。


「いやぁ…舞幸ちゃん共々完全にだらけちゃって、気付いたらこんな時間だよ」


「あるあるだな」


 だらけている舞幸ちゃんもちょっと想像しずらいので気になるな。


 今日はあくまで登校日なので半日程度しか学校にいなかった。

 今は靴を履き替え学校から出たところだ、もう少しで校門をくぐる。

 するの見たくもない久しぶりの顔を見つけた。さっさと帰れ。


「あっ…長名さん…」


 なぁんで話しかけてくんねん、回れ右だよ池田。


「はい、なんですか?」


 話しかけてきた池田に対して栞が抑揚のない声で返す。俺の腕を抱く力も強くなった。


「えっと…」


 有無を言わせぬ栞の圧に気圧される池田だが、これがモテると言うのだからよく分からん。


「用がないならもう行きますね、私たちこれからデートですから」


 そう言った栞は俺の手を引いて歩き出した。

 こんなんじゃ人は堕とせない。


「もうヤんなっちゃうね、他の女の子に声かければ良いのに」


「違いない」


 とはいえ夏休み前に見せられたアレは、どうやら彼に大きなダメージを与えたみたいだ。

 それなら話しかけんなってーの。

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