四十六話 先輩の脳を破壊するな

 しばらく経って、テストが返却された。

 ちなみに順位も張り出されてたよ、晒し者じゃん。


 俺は興味が無いので見に行く気はなかったのだが、しおりが見たいと言うので一緒に来たのだが…。


「なんでお前らがいるんだ」


「いやぁだって好透こうすけの順位、僕も気になるもん」


「ウチも!好透君は何位かな?」


 まさか優親ゆうしん小春こはるまでついて来るとは思わなかったが…まぁいいか。



 という訳で掲示板。


「あっ!好透のあったよ!」


 ふむふむ、栞は…見なかったことにしておこう。

 どうやらあまり振るわなかったようで順位は真ん中よりちょっと良いくらいだった。

 最近はあまりちゃんと勉強してなかったもんね。ヤってばっかで。


「おー、やっぱり好透 凄いねぇ…」


「うっそ!やっぱり好透君って頭良いよね…」


 三人して色々言っているが何が悲しくて自分の順位なぞ見にゃならんのだ…。

 おぉ!優親はいい順位だな、十三位か!

 小春さんもすげぇな、五位か…やっべぇ…。


「ほら好透、ちゃんと見てる?」


「あー、まぁ皆の見たしいいかなって」


「ほらほらここだよー好透、これこれ」


 なんとか有耶無耶うやむやにしようとしたのだが、優親が指を指してきた。これじゃスルーできんやん!


「お…おぉ…」


 まさかここまでとは…見なかったことにしておこう。


「好透君ってやっぱり勉強ガッツリやってるの?」


「いや、基本 予習復習するだけだから…一、二時間くらいじゃないか?授業さえちゃんとやっていればどうとでもなるし…」


「さすが一位が言うと説得力があるね」


「やかましい」


 こうして順位見ると、割と嬉しいもんだな。

 普段からちゃんとやっていてよかった、栞はこれからちゃんと勉強しような。



 そうしてなんやかんやも無く数日が経ち、無事に夏休みを迎えることが出来た。

 …がその前の終業式。


「なんでアンタがいるんですか、俺たち今から帰るんでほっといてもらえます?」


「ごめんなさい、あの時のことが忘れられなくて」


 目の前に現れたのはあの時俺を呼び出した先輩だ。


「私のカレになんの用ですか?また見せ付けられたいんですか?良ければ動画でも送りましょうか?」


「やめろバカ」


 剣呑な雰囲気が栞から発せられるが、言っていることがアレすぎてぶち壊しである。


「あぁ…なんてエッチな…エッチなのはいけないと思います!」


「言うに事欠いて何言ってんだアンタ」


 先輩が顔を真っ赤にしながら勢いよく言った。


「アレ見てから私はおかしくなっちゃったの!天美あまみくんが好きで、好きな人が他の女の子と…えっエッチなことしてるって、こう…なんか、凄いなって…」


「あぁつまり先輩は寝取られみたいなのか趣味なんですねぇ…」


「わざわざ言葉にすんな」


 栞がすんごい悪い顔をして変なこと言ってる。

 やめて、俺のそういう姿で興奮するとかマジでどう反応すればいいのか分からないからわざわざ教えてこないで!


「きっ今日もスるの…?」


「はい、もちろん。明日から夏休みなんで夜通しエッチしようと思います」


「わ''ー言うな言うな変態!スケベ!」


 思わず変な声が出た挙句 語彙力が壊れちまったじゃないか、やめてよね。もうヤダこの空気。


「ぅ…もし良かったら私も見ていいですか…?」


「ハァ?」


 この先輩アホなの?そんなこと許すわけ…。


「見るだけでしたら良いですよ。いっぱい見せてあげますから…あっ、でも触っちゃダメですよ?気持ちよくなりたいなら自分でやって下さいね」


「あっ、ありがとうございます!」


 もう何にも言えねぇや。

 完全に呆気にとられ、栞の言いたい放題させてしまった。これは俺が悪いですごめんなさい。



 そうして一晩、俺たちのソレをマジで見せ付けることになってしまった。恥ずかしいわ!

 あの時止められなかった手前 今更拒否することも出来ず流されてしまった。俺も大概 情けないわぁ。


「ふふっ…どうでした?」


「うぅ…羨ましいですし辛いです…脳がっ、脳が破壊され…っ!」


 やめて、そんなに顔を赤くしてそんなこと言わないで!


「ってか一つ思ったんだけどさ…」


「ん?どうしたの好透?」


 この状況に困惑した俺の言葉に二人がこちらを見る。


「いや…なにこれ?」


「見せ付け?」


「WSSですね」


 なぁにがWSSだ!

 先に好きだったのはどう考えても栞でしょーが!


 そんなツッコミをする気力もなく、俺はただただ呆然とするしかなかった。なんじゃこりゃ。


 寝取られならぬ 見せられ(MSR)ってか?やかましいわ!

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