四十四話 続!クソ先輩!
「テメェごときが
プチッ
「おいお前」
「あっ…あぁ?」
コイツさっきから黙って聞いていれば…。
そう頭によぎった俺から出た声に驚き、池田が後ずさる。
「さっきからピーピーうるせぇな、ってかお前みてぇなカスが
あんまりにも腹が立ったので、思い切り顔を近付ける。
「…突っかかる相手間違えたら………許さねぇぞ…」
「ひっ……」
腰が抜けたのか尻もちをつく池田。
しかし俺の顔は奴の顔に近付いたままだ。
「栞は俺を選んだ、それをお前がとやかく言うな…奇跡で結構、けどな?お前がアイツの苗字を呼び捨てで呼ぶなんて烏滸がましいだろ…」
相手の目をじっと睨み、淡々と言うように務める。しかしきっかけがあれば爆発しそうだ。
「あんまり俺たちの邪魔するんなら……どうなるか分からんぞ?」
もちろんこれはただブラフだ…ただし栞は本気でやろうとするだろうが。
「分かったらさっさと向こう行け」
「うっ…うわぁぁぁぁ!」
池田がよろけながら走っていく。ダッサ!
偉そうに来たと思えばアレである、あまりにも情けない。
「ってかアレでモテるってマジ?」
恋は盲目だと言うけどこれはあまりにも…と思いつつ教室に戻った。
「あの池田ってのはマジでなんなんだ?」
「いきなりどうしたのさ?池田って池田先輩のこと?…まぁモテるみたいだけどさ」
イライラが収まらないので
「そりゃあまた大変なことがあったね…」
「俺に突っかかってくるならともかく、栞のことを呼び捨てだなんてたまったもんじゃない。同い年ですらねぇ癖によ」
イライラを吐き出すようにして彼には悪いが、結構キているのだ。
これからテストだってのに嫌ンなってくる。
今日の分が終わり今から帰宅だ。
学校の玄関から出て彼女と歩いているとヤツが視界に入ったが、ヤツはそそくさと逃げていった。
なんだあれ。
それからはヤツが姿を現すことはないと思っていたのだが、テスト最終日にまたしても奴が姿を現したらしい。
…らしいというのは、栞から聞いた話だからだ。
「実はね、また池田先輩に告白されたの。当然断ったけどね」
「またか」
本当に懲りねぇなぁ…どうしてそこまで栞に固執するんだ?ヤツを好く女なんぞいくらでもいるだろうに…。
「それでね、また好透のことバカにするから今度こそ思い切り怒鳴ったよ、いい加減にして!ってね」
「なんて優しい女の子なんだ…」
わざわざ俺の事で怒ってくれるなんて栞は本当に優しい子なんだなぁ…
「当たり前だよ、誰でも自分の好きな人バカにされたらムカつくでしょ?」
「わかる」
そう言われると確かに、栞をバカにされたら平常心を保てる自信はない。
「いい加減懲りて欲しいんだけど、なぁんかまだ絡んで来そうなんだよなぁ…」
これ以上絡んで来られても鬱陶しいことこの上ないので普通にやめて欲しい。
しかしまたもや池田のバカ野郎が姿を現したのだ。いい加減にせーや。
「またアンタか、いい加減痛い目みるか?お?」
こちとらだいぶ頭にキているのでちょっと脅させてもらう。
「ちっ、違ぇよべつに喧嘩売りに来たんじゃねぇって」
「あのさ、俺がそれを信じるとでも思うか?今までの行い振り返れやアホ」
その言い分に納得するほどチョロくないって。
「俺のクラスのヤツでお前を呼んで欲しいって奴がいたんだよ!本当だ!」
「ほーぉ?複数人で囲ってタコ殴りってか?」
「違う違う!」
池田は焦ったように言っているが、そんなの信用ならねぇってのマジで、分かれや。
「俺のクラスの女子でお前が好きな奴がいて、告白したいって奴がいるんだよ!それで最近関わってる俺が呼ぶことになって…」
「俺彼女いるんで、もっと言うと自分で来させて下さいよ。そんなことに先輩を使うのはおかしいですってマジで。筋が通ってないです」
アッホらし!
あまりにも下らないので
それがもし本当なら、その人はここで楽をする様じゃ一生誰とも結ばれんて。
「悪いですけど、本人に自分の足で来るように言っといて欲しいですね。それじゃ」
悪いけど付き合ってられないので教室に戻らせてもらう。そもそもただトイレ来ただけやねん。
そして帰り、俺は本当にその先輩から呼び出された。なんでさっきそうしなかったの?
「ごめんね天美君、いきなり呼び出しちゃって」
「別に良いですよ」
良くねーよ!俺は栞と早く帰りたいんだっての!
言っちゃ悪いが彼女はちょっと暗い雰囲気をした人だ。可愛いけどね。
俺を呼び出した名前も分からん先輩はモジモジとしている。覚悟決めてんのかな?
「あの…好きです、付き合ってください!」
頭を下げて決死の覚悟で言ったであろうそれを、俺が聞く理由は無い。
申し訳ないが、断らせてもらう他ない。
「ごめんなさい」
俺も頭を下げて、断りの意を示す。
栞、そして衣織ちゃんという彼女がいる以上、他の子と付き合うという選択肢はない。
「…どうして?」
だが彼女はそれを気に入らないようで、食い下がってきた。
「彼女がいるんで。」
「もしかして、長名さんのこと?」
「はい」
俺の答えに、彼女は目を鋭くして答える。
「その、こういう事は言いたくないんだけど…長名さんはあまり貴方のことは好きじゃないと思うの」
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