三十話 完全な八つ当たり、まさに害悪

 優親ゆうしんは朝のHR前に帰ってきた。

 少し疲れている。やっぱり告白だったか。


「はぁ…折角せっかく 朝からいい気分だったのになぁ…」


「まぁ仕方ないだろ、人の心に歯止めなんて効かないんだからな」


 やはり告白は断ったようで、女子はしょんぼりとしていた。

 割と落ち着きのある可愛い子だが、それでも優親のお眼鏡にはかなわなかったらしい。


「僕には好透こうすけがいるのに、困っちゃうよねー」


 そういって抱き着いてくる優親。暑苦しいヤツだ。

 ちなみにしおりは既に席に戻っているが、俺たちの様子を見て少しむくれている。

 それに対する優親は勝ち誇ったような表情だ、煽るなバカ。


「離れんかいこの色情魔」


「やぁん好透のいけずぅ♪」


「貴様 男としてのプライドは無いのか」


 マジでなんで優親まで好感度 高いの?

 もしやそっちの人?




 時間が飛び休み時間、俺は優親に告白したであろう女子に呼び出されていた。

 ここは屋上に出る扉の手間だ。真後ろは階段である。


 彼女の表情はあまりいいものではない。


「どうして呼ばれたか分かるかな、天美あまみ君」


「いや、心当たりがないな」


 告白にしては朝に優親にしていたし、加えてかなり剣呑けんのんな雰囲気を身にまとっている。


「ならはっきり言うね、男子のくせに伴田ともだ君にベタベタしてて気持ち悪いの、やめてくれる?」


「それを俺に言うなよ」


 俺からくっ付いてんじゃねぇっての。


「それならもっと伴田君に強く言えば?なんだかんだ嬉しいんじゃないの?ホモなの?」


「何でそうなるんだ?」


 あまりにも勝手な言い分じゃないか。

 俺はあいつに離れろと言っている。


「最近 長名おさなさんにも笹山ささやまさんにもくっつかれて、鼻の下を伸ばして本当に気持ち悪い…あなたみたいな痴漢が学校に来て欲しくないんだけど」


「それだって俺に言われてもな」


 あいつらのせいにするつもりは無い、俺だって強く言えばいいだろうが絆されていることは否定しないさ。


 しかしそれをそこまで彼女に言われる筋合いだってない。


「あなたはどれだけ周りに嫌われているか分からないの?図々しいっていうか鈍いって言うかさ。本当に最低」


「好き放題言ってくれるな」


 結局 何がしたいんだ?


「悪口が言いたいだけなら時間の無駄だから俺は戻るぞ、じゃあな」


 俺はそう言って彼女に背を向ける。

 それが良くなかった。


「……っ…この!」


 突如、背中から強い衝撃を感じる


「な…」


 完全な油断。

 まさかそんなことするなんて夢にも思っていなかった。



 俺は後ろから突き飛ばされ、階段から落ちた。




 目が覚めたのは保健室。

 すぐそこには栞がいた。あっ、小春こはるも優親もいるわ。


「あれ、俺は…」


「好透!」


 俺が目覚めたと共に栞と小春が抱き着いてくる。


「好透…ごめん、僕のせいで…」


 優親の表情は物凄く暗い。


「お前が気にすることじゃない…あぁ、俺は端田はなだにやられたのか…」


 頭が痛い、思い切りぶつけたのだろうが記憶障害と見られるものもなさそうだ。


「そうじゃないんだ…その…」


「どした」


 その先は栞が答えた。

 しかしその内容は心底驚かされるものだった。


「端田さんが…好透に襲われたって言ってるみたいで」


「…は?」



 どうやら俺は彼女にハメられたらしい。

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