二十七話 正当防衛だ

 あのアホ共に絡まれ終えた俺はそのまま教室に逃げてきた。だって訳分からないんだもん。


好透こうすけ!?何があったのさ、傷だらけじゃないか!」


「なに、ちょっと遊んでただけだ。こんなもん傷の内に入らねぇよ」


 確かに顔面殴られたけどそれだけだ。

 二対一なのに速攻でやられる奴らの作れる怪我なんてたかが知れている。


「あいつらか…許さねぇ…」


「落ち着け優親ゆうしん


 眉間みけんしわを寄せギリリと歯を食いしばってめちゃくちゃ怒っている優親の肩に手を置いて落ち着かせる。


「そんなに怒ってたら可愛い顔が台無しだぞ。俺なら平気だし、気にするなって」


「好透…」


 優親が心配そうにしているが、マジで大丈夫なので落ち着いて欲しい。

 しかし怒ってくれるのは彼だけではない。


「好透!嘘、酷い怪我…なんでこんなこと…」


 優親の驚いた声を聞いたであろうしおりがいつの間にかこちらに来ていた。

 彼女は俺の頬に手を添えてそっと撫で、抱き着いてくる。

 栞の後ろには小春こはるもいた。


「許せない…好透君に手を出すなんて…」


 小春は小春でぎりぎりと握り拳を作っている、それこそ爪がくい込んで血が出そうだ。マジで落ち着いてくれ。


天美あまみ


「ん?」


 同じ教室でこんな騒ぎになっていたら確かに気になるだろう。高畠たかばたまでこっちに来ていた。


「誰にやられた」


「いやもう終わったって」


 高畠まで怒っている。爽やかなイメージがあるだけに新鮮な光景だが、あまり良いものではない。


「私知ってるよ」


「そうか、是非教えてくれ。後悔させてやる」


 ちょっとあなたたち!俺を置いて話を進めないで!


 まぁでも別にあいつらはどうでもいいんで教えるなら勝手にドウゾーって感じだ。


 俺は一矢報いたので取り敢えずいいかなと思ったけど、暴力沙汰なので担任に伝えると色々話をする事になった。


 結局俺が傷だらけだったことであまりにも一方的で、奴らの手は明らかに殴ったあとがある。

 証拠としては充分で、アイツらも罪を認めたことでそのまま帰宅。

 恐らく停学処分になるだろう。




 そんなこんなで学校から帰り、栞を家に送り届けた。

 その時衣織いおりちゃんもちょうど帰ってきて、俺の顔を見て心配してくれた。いい子やでホンマ。


「お兄ちゃん、辛いことあったら私がたくさんよしよししてあげるからね!」


「うんうん、困ったことがあるなら話も聞くし手伝うから、なんでも言ってね!」


「マジありがとう二人とも最高に好きだわ」


 優しさに感動して思わず二人とも抱き締めて本音をぶちまけてしまった。

 そして二人とも抱き締め返してくれる。


「私も大好きだよ、好透!」


「えへへ、お兄ちゃん大好き♪」


 まるで天使のような姉妹に囲まれた俺は幸せな気持ちで彼女らと別れた。




 そしてここは優親の家、今日はアイツと遊ぶ約束がある為やってきた。


「やぁ好透、いらっしゃい。さぁ上がって上がって」


「おう、お邪魔します」


 優親の家に上げてもらい、彼の部屋へ行く。

 その途中で例の義妹と顔を合わせたが、軽く会釈したくらいで特に何かあったわけでもなかった。



「色々と考えてたけど、取り敢えず普通に遊ぼうよ。最近好透ってば長名おさなさんと一緒にいることが多かったから久しぶりに遊びたくてね」


「いやアイツと一緒にいることが多くなったのは先週からだろ」


 それまではほどほどの距離感だった。…ホントだよ?


「あれ?あぁそうだったね。もう見せ付けられ過ぎてて忘れてたよ」


 優親は手馴れた手つきで適当に二人でもやれるようなゲームを取り出した。

 別に見せつけたのではなくお互いが正直になっていただけだ。…マジで。



 暫くあそんでいると誰かがノックしてきた。


「ん?ちょっと待ってね」


 そう言って立ち上がった優親が部屋の戸を開ける。


「あれ、舞幸まゆきちゃん?どしたの?」


 どうやら義妹がやってきたようで…?


「ごめんなさい優親お義兄さん、ちょっとその人と二人きりで話がしたくて」


「え、俺?」


 まさかの俺に用だった。


「え、好透は大丈夫?」


 ちょっと驚いた優親がこちらに振り向いて聞いてきた。


「あぁ、大丈夫だ」




 そうしてここは伴田家宅のリビングだ。


「すみません急に呼び出してしまって」


「大丈夫だけど、何かあったか?」


 心当たりがないのでちょっとビビってるんですよはい、一体 何の用なんだ…。ブルブル

 おかげでいつも通りに振る舞えない。


「えっと…お顔は大丈夫ですか?酷い怪我ですけど…」


「ん?あぁこれなら大したことじゃないよ。ちょっと転んだようなもん」


 そう言って誤魔化した。


「転んだにしては痛そうですけど…すみません、話を逸らしてしまいましたね」


 舞幸ちゃんは胸に手を当てながら深呼吸をして、キリッとした表情になった。


「私は二年前、あなたに助けていただきました」


「………ん?」


 そんなことあったっけ、二年前?うーん…。

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