二十四話 友人の義妹

「じゃーウチはこっちだから。またね、好透こうすけ君!」


「じゃーなー」


「ばいばい、小春こはる


「じゃあね、笹山ささやまさん」


 小春が一足早く別れる。

 皆で手を振り合い、そのまま見送り俺達も背を向けた。


 ちなみにあれから何も変なことはしてない。

 ただ栞が小春をおちょくっただけで終わった。そもそも優親ゆうしんがいる手前やめてほしいので助かったけどな。


「うぅ…不安だなぁ、大丈夫かなぁ」


「いやビビりすぎだろ」


 一方優親は今から帰宅するのが不安らしい。

 再婚相手が優親の家に越してくるのが今日で、もう既に引越し自体は終わっているらしい。しかし父親側から母親側へ引っ越すってあんまり聞いたことないな…しかも入籍するのも父親側というのは異例に思える。


 まぁそこら辺の事情なぞ俺は全く分からんので、そーなんだーめずらしーくらいの感想しか出てこんが。


「ねぇ好透、やっぱり今から来てもらっていい?」


「あまりにも急すぎる」


 残念だが、今日は栞の荷物を彼女の家に持ってかなければいけないし、もうちょっと彼女と一緒にいたいので無理である。


「うぅ…せめて家までは一緒に来てくれるかな?」


そう言いながら優親が子犬の如くしがみついてくる。可愛いツラしやがって甘えんな。


「そうは言ってもなぁ…」


「まぁまぁ、それくらいならいいじゃん。私なら大丈夫だから行ってあげよ?」


 はぁ…ちょっと面倒だがしおりがそう言うのならまぁいいのか。

 彼女の言葉で優親が嬉しそうにしている。


「ありがとう二人とも!好透がいるなら百人力だね」


「あくまでお前が帰るまでの付き添いだから勘違いするなよ」


「うん!」


 まるで花が咲き誇ったような可愛らしく笑う優親。こりゃモテるわ。


「えっ可愛い、嫉妬するなぁ…好透、浮気しちゃダメだよ?」


「俺をなんだと思ってんだ」


「僕はいつだってウェルカムだからね好透♪」


「話がややこしくなるからお前は黙ってろ」


 コイツら俺が万年発情期だとでも思ってんのか?



 数分ほど歩き優親の家にたどり着いた。


「はぁ…まだ心の準備出来てないんだよねぇ…。でも、なんかありがと。とりあえず頑張ってみるよ」


「まぁそんなに気負っても仕方ないだろ、なんかあったら話聞くから電話でもしてくれ」


「え、ひょっとして僕のこと狙ってる」


「二度とテメェの話なんぞ聞くか」


 コノヤロウ人が気を遣ったら変なこと言いやがってもう知らねぇよ。ポッ…じゃねぇんだよ。


「あははごめんごめん!長名おさなさん、好透を説得してくれてありがと、邪魔しちゃってごめんね」


「いいよ、好透の友達なんだもん。気にしないで」


 なんだかんだ喋っていると、優親の家のドアが開いた。


「あ、優親お義兄にいさん帰ってきたんですね。ところでそちらのお二人は…」


 彼の家から出てきたのは、大人しそうなツインテールの女の子だった。

 こんなところで三人で喋ってれば気にもなるか、申し訳ない。

 目が合ったので俺と栞は軽く頭を下げる。


「あ、舞幸まゆきちゃんただいま。えっとね、僕の友達だよ」


「そうなんですね……あれ?」


 優親の義妹…舞幸ちゃんがじっと俺の顔を見て、目を見開いた。


「え…と…俺の顔に何か付いてるか?」


 そこまで見つめられると怖いんだけど…。

 彼女は俺の後に栞を一瞥いちべつしてコホンと咳払いをした。


「…ごめんなさい、なんでもないです。失礼します」


 ペコっと頭を下げて彼女は引っ込んでしまった。


「んー?好透またなんかやった?」


「いや、ガチで心当たりがない…優親なんか変なこと言ってないだろうな」


「えぇと…僕も何がなんだか…」


 三人で不思議な気分になりながら、今日は解散した。

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