二十二話 諦めきれないって言われても
「その時からね…ずっと…っ…天美君の事が好きです」
意を決した
相当の覚悟を決めたのだろうというのは、彼女の表情から読み取れる。
「そっか…嬉しいよ。ありがとう」
「ううん、ごめんね…
好きになった人には恋人がいる、それを知りながら告白するというのは、かなり辛いはずだ。何せ答えは決まっているのだから。
「いや、謝るのはこっの方だ。その気持ちには応えられない、ごめん」
彼女の瞳を見つめてから、頭を下げる。
誰かから向けられる想いが、ここまで苦しくなるとは思いもしなかった。
「っ…」
彼女から聞こえは一瞬の声。
頭を下げているので、その表情は見えない。いや、見ることができない。
しかし、その表情は…きっと悲しいものだろう。
「頭を上げてよ、天美君」
「あぁ」
笹山に変に気を遣わせるのもあれかと思い、彼女に言われ頭をあげる。
すると、彼女がいきなり飛び込んできた。
「それでも、
学習能力に
またもや彼女からキスされてしまった…頬にだけど。しかも思いっきり抱き着かれているし。
「ちょ、笹山さん…」
「えへへ、ごめんね!でも大好きだよ♪」
「諦めるなんてムリムリ!なにさ、あんなに辛そうな顔しちゃって!優しすぎでしょ、好きでもない相手なら思っきし振っちゃってよね!」
「それは…ごめん」
持つべきではない同情心なのは分かっている。しかし、頭では分かっていても、感情が追いつかない。
「それに、叶わない恋なのは分かってるし?だけどちょっとくらいガッツかせてよ。ウチはこれから好透君って呼ぶから、好透君も
なんてこった、めちゃくちゃ可愛らしい笑顔でそんなことをお願いされてしまった。
しかし一線を超えては行けない!勘違いさせてしまうからな。
「あー、でも…うぅ…分かったよ、小春さん」
無理です勝てません、
おぉ好透よ、負けてしまうとは情けない。
「えー、呼び捨てで呼んでよ。小春ってさ!」
「さすがにそれは無理だよ。こ・は・る・さ・ん!」
彼女には悪いが、これ以上勘違いさせない為に強調して名前を呼んだ。
いくらなんでもやりすぎはいけません。
「むぅ、そこまで強調しなくても…んー、分かったよ!まぁ名前で呼んでくれただけでも儲けものかな♪」
「まぁそれくらいならな、っていうかそろそろ離れてくれない?」
いい加減抱き着かれるのはヤバい。柔らかいのですよ。
「やーだー!好透君だっておっぱい好きなくせにー」
「わざとかおのれ」
ちくしょう、嫌だと言えない自分が情けない。この煩悩の塊め。
こら!押し付けてくるな!
「でも、さすがに可哀想だから止めてあげるよ」
「助かった…」
しかしなんて笑顔だ、眩しすぎる。
いつもの彼女らしさだ、ようやく復活したって感じだな。
「せめて、好透君の友達でいさせてほしいな。それくらいならいいでしょ?」
「まぁ、それなら喜んで」
そう、彼女はあくまで友達であるべきなのだ。好意に押し潰されそうだけどな!
「あ、ちなみにね?」
「ん?」
いきなり(笹山)小春が手招きしてくる。
導かれるままに、彼女の元に顔を寄せる…ちょっと警戒するけど。
「実はね、ウチは好透君をね?」
「うん?」
何故か小春が勿体ぶっている。
その表情はどことなく赤い。
「好透君をぉ…ゴニョ…にした事があってー」
「なんちゅうーこと言ってくれてんだバカぁ!」
聞きたくなかったよそんな話!
「おかえりー、二人とも」
「ひぃあぁ…栞ぃ…」
最後の爆弾発言で完全にヘロヘロだよ、疲れ果ててしまったので栞に抱きつく。
「おーおー、よしよしぃ。かわいーなーもー♪」
栞は俺を嬉しそうに受け止めて頭を撫でてくる。柔!
正直なにがかわいーのか
「んでぇ?小春は何したの?」
栞がジトっとした目で小春を問い詰める。
「う…えー?べっつにー?ただぁちゃんと友達になったのとぉ、お互い名前呼びになっただけだしー?」
「それだけじゃねぇだろバカ」
小春はバツの悪そうに目を逸らしながら答える。なに白々しいことを、この変態め。
まぁやることやるのは仕方ないさ、人間だもの。だけどそれをわざわざ報告してほしくはなかった。
「小春ー?何をしたのか、後でじっっっくりと聞かせてもらうからねぇ?」
「あははー…まぁお手柔らかにー」
栞は思いっきり小春に圧を掛ける。しっかしマぁジで勘弁してほしー。
くたくたなので栞の胸の中で休みたいがこれから授業です…身ぃ入るかなぁ…。
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