十八話 とっても仲良し(物理)

 このくらいの年齢になると、やはり男女の体つきにはしっかりとした差が出てくる。

 しおりの胸はそう大きく見えないが、決して小さくはない。

 そしてそれは、栞が年頃の女の子であることをはっきりと証明していた。


「改めて見ると、好透こうすけってがっしりしてるね」


 彼女はというと、俺の腕やら胸をすりすりペタペタと不思議そうに触っている。なんなら頬ずりまでしている。恥ずかしい。


「そうか?普通だと思うけどな…。……しっかし栞は凄い綺麗だな…なんて言うか、すごい」


「喜んでくれたようでなによりです♪ほら入ろ?」


 栞に手を引かれるまま浴室に入る。



 あれからひたすらに互いを求めあった俺たちは、行為で汗だくになった身体を流す為に一緒に風呂に入ることにしたのだが…。


「さー背中洗うよぉ。座って」


「あぁ、頼んます…」


 俺は緊張しながら風呂の椅子に座った。

 シャワーで身体を軽く流して、栞はボディソープを両手で泡立てて、背中を…って!


「ちょ、手でやるの!?タオルあるよ!」


 俺は傍に掛けてあるボディタオルを指さした。しかし彼女は使う気がなさそう…。

 ヤバイ、軽く背中を触られただけなのにもう気持ちいい。これはなんというかヤバイ!(なお語彙力…)


「え、やだった?」


「そんなわけねぇだろ」


 反射的に本音をぶちまけてしまう。

 ちょっとその質問は反則ですよ栞さーん!


 楽しそうに両手でゴシゴシと背中を洗ってくれている栞が、なんと全身使って洗い始めてきた。アカンて。


「う…どこで覚えてきたの?こんなの…気持ちよすぎる…」


「いーでしょー♪えへへ♪」


 背中がとにかく柔らかい…全身を幸福で洗い流してるようだ…。何考えてんだオレー。


「ちちっ、ちょとまてぇ…」


 あまりの気持ちよさに、弱々しい声しか出てこない。


「んー?どしたのこぉすけぇ♪」


 栞は悪戯っぽい笑みを浮かべながらさり気なく前に手を伸ばしてきた、さすがに前は自分で洗えます。


「まってまって…まえ、前は自分でやるから…大丈夫だから…やめ…」


「いやでーす♪」


 聞く耳を持ちませんといった様子で前まで洗ってくれる栞さん。

 まぁそこまでしなくてもね、とっくになってる訳ですよ、元気にね。


「こーすけぇ…きもちぃ♪」


「うぐ…ちょ…それだめ…」


 さっき散々触った癖に、両手を使って俺のあちこちを弄り回す栞の表情は、まるで無邪気ないたずらっ子といった雰囲気だが、やっていることはそんなチャチなもんじゃない。


「はぁ…こーすけの凄ぉ♪…………はっ!」


 暫くしている、胴体をくまなく堪能たんのうしている栞がうっとりとしていた。


 しかしすぐに手を離し、腕を洗い始めた…ってだからさぁ…。


「あぁ…気持ちいいけどそれもだめぇ…」


「えへへー、照れてやんのぉこーすけー♪」


 照れるとかじゃありません困ってるんです!

 胸で挟むように腕を洗っている。まるで勝ち誇ったかのような表情で、とても楽しそうだ。


「最後にー…よーいしょ♪」


 栞はなにを思ったのか俺の膝の上に移動し抱きついてきた。


「あぁ…これはダメだって…」


「いいじゃん減るもんじゃないしー♪」


 そう言いながら彼女は思いっきりディープなキスをしてきた。

 さすがにこんな気持ちよくては耐えられたものでは無い。

 ボディソープがしっかり泡立っているようで思いの外よく滑る。それがまた気持ち良くさせてくる。


プッチーン


 これ以上されるままになるものかと、俺は心を鬼にして彼女を止めた。

 俺は立ち上がり、ニッコリと彼女の両肩に手を置いた。


「今度は俺の番だ、座れ」


「えぇ…私はちょーっと後でいっかなー?」


 そんな訳にはいかない、目が泳いでいる彼女を強引に椅子に座らせ、あっちこっち洗ってやった。


 栞には散々弄ばれたんだ、こっちだってやり返さなければ気が済まない。


 彼女には俺の気持ちを嫌という程味わわせてやった



 学生になってからは初めての二人でお風呂な訳ですが結構やばい、あっという間に''洗い''終わってしまった…。


 あれからまぁお互いに色々と発散したりさせたりして…俺たち付き合い始めてからというもの色々飛ばし過ぎかな?


 まぁ彼女もそれを求めてる訳だからそれでもいいのかもしれない。


「ふー…思ったより狭いね」


「まぁもう高校生だからな、それに一人用の湯船だし仕方ないだろ」


 一緒に風呂なんて、遅くても小学生低学年までだろう。

 俺たちは小学生になる前に二、三度入ったくらいだ。

 あの頃に比べたら小さくも感じるだろう。

 栞を抱えるようにして湯船にゆっくり浸かっている。彼女は俺に背を預け気持ちよさそうだ。


「きもちーねぇ…」


「だな…」


 ゆっくりとお湯に浸かり、身体を休める。


 学校では嫌な奴らもいるが、それよりも仲良くしてくれる人達がいる。

 それでも悪意をぶつけられるのは心が疲れるものだ。

 たとえ慣れたとしてもそれは変わらない。


 それに、笹山ささやまの事で悩みもしたんだ。

 だからこそしっかりと心身を休めよう。


「…んふふ、好透も男の子だねぇ♪」


「それは言わんといて…」


 先程のことを思い出しているのだろう、顔を赤くしてニヤニヤとしながらからかってくるが、栞も大概である。


「…それに栞だって人の事言えんだろーよ」


「…だって気持ちよかったから♪」


 そう言ってはにかむ栞はとても扇情せんじょうてきに見える。

 ダメだこの子、さっきので振り切れたのか全然止まらないわ。

 元々こんなキャラでは無かったのだが、最近だいぶあおるような感じになってない?

 …というより好意を全面に押し出すようになったと言うべきか。


 からかってるつもりなのにこっちがからかわれてしまう。



 危うく手を出しそうになるが、十分湯船に浸かったので風呂から上がる。風呂だとのぼせちゃうよ。


「好透、拭いてー」


 そう言って両手を広げる栞をバスタオルで包んで拭いてやる。

 こら、頭拭いてるからって抱きついてくるんじゃない。


「ほら、体拭くから離れなさい」


「ん」



 こちらが拭き終わったら栞にも拭いてもらい、服を着て浴室を後にする。


 風呂から出た俺たちは少し遅めの晩御飯を食べた。そんなこんなでもう土曜の夜だ。

 明日一泊したら、栞は帰ってしまう。

 それが少し寂しく感じた。俺も大概だなぁ…。


「どーしたの?」


「いや、こうしてたいだけ」


 思うままに栞の後ろから抱きつくと、彼女は嬉しそうに俺の手を撫でた。


 二人で遊ぶ前に、ゆったりとお互いの温度を感じながら静かな時間を過ごした。

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