第4話 暗号の発見
鈴木誠は、議会での緊急会議が終わった後、自宅に戻った。夜の闇が静かに光陽市を包み込む中、彼の心は高田の遺志を継ぐ決意で燃えていた。書斎に入ると、机の上には高田から託された遺書と音声データが置かれていた。
鈴木は深いため息をつき、椅子に腰掛けた。机のランプの明かりが遺書を照らし出し、その文字が彼の目に焼き付いた。高田の手書きの文字が、彼の心の内を鮮明に伝えてくるように感じた。
「これを全て明らかにしなければならない…」鈴木は独り言をつぶやいた。
その時、書斎のドアが静かに開き、娘の恵が入ってきた。彼女は法律を学び、弁護士として働いている。父親の困難を察して、助けになりたいという思いで訪れたのだ。
「お父さん、どう?何か進展はあった?」恵は優しい声で尋ねた。
鈴木は苦笑いを浮かべた。「まだ始まったばかりだよ、恵。これからが本当の戦いだ。」
恵は父の隣に座り、遺書を見つめた。「高田さんの遺書には、何が書かれているの?」
鈴木は遺書を広げ、内容を娘に説明し始めた。「斎藤知事のパワハラ、公職選挙法違反、県内企業からの贈答品の受け取り、そして阪神・オリックスの優勝パレードでの不正行為だ。」
恵は真剣な表情で聞いていた。「それで、この音声データは?」
鈴木はデスクの引き出しから音声データを取り出した。「これが高田が残した証拠だ。だが、まだ聞いていないんだ。」
恵は頷き、ノートパソコンを取り出した。「じゃあ、一緒に聞いてみましょう。」
鈴木はUSBドライブをパソコンに差し込み、音声データを再生した。スピーカーから高田の声が流れ出し、彼の訴えが鮮明に聞こえてきた。高田は詳細に斎藤知事の不正行為を語り、彼の手元にはさらなる証拠があることを示唆していた。
「これが全てではない…高田はもっと何かを隠していたんだ。」鈴木は考え込んだ。
恵が父の手を取り、静かに言った。「お父さん、もしかしたら暗号があるのかもしれない。高田さんは何かメッセージを残したんじゃない?」
鈴木は高田の遺書を再び見直した。そこには普通の文面に見えるが、特定の文字や記号が目立つように配置されていた。
「暗号…そうかもしれない。」鈴木は急に立ち上がり、書斎の本棚から暗号解読の本を取り出した。「これを使って解読してみよう。」
恵は父の熱意に応え、一緒に暗号の解読に取り掛かった。二人は深夜までかかって、遺書に隠されたメッセージを解読し続けた。やがて、特定のパターンが浮かび上がり、彼らはその意味を理解し始めた。
「ここだ…『光陽市立図書館の地下室に、全ての証拠がある』と書かれている。」鈴木は興奮して声を上げた。
恵もまた、父の発見に驚いた。「図書館の地下室?そこに行けば、斎藤知事の不正の全貌が明らかになるのね。」
鈴木は深く頷いた。「明日、すぐに図書館に行こう。これが真実を掴むための鍵だ。」
二人は疲れ果てていたが、その目には決意の光が宿っていた。これから訪れる困難に立ち向かうため、親子は共に力を合わせて真実を追求する決意を新たにした。
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