第2話 告発の手紙

鈴木誠は、自宅を後にして高田健二の家へと向かった。朝の光陽市はまだ静かで、通りを歩く人々も少なかった。彼の心は重く、友人の自殺という衝撃的なニュースが頭の中をぐるぐると回っていた。タクシーの窓から見える景色も、普段の活気を失っているように感じられた。


高田家の玄関に到着すると、鈴木は深呼吸をしてインターホンを押した。しばらくして、ドアが開き、高田の妻・由美子が現れた。彼女の顔には疲労の色が濃く、目は腫れて赤くなっていた。


「由美子さん、突然お伺いして申し訳ありません。鈴木です。」


「誠さん…来てくださって、ありがとうございます。」由美子は涙をこらえながら、鈴木を家に招き入れた。


居間に通されると、高田の息子、一郎が座っていた。彼もまた、父親の死を受け入れるのに苦しんでいる様子だった。鈴木は深々と頭を下げ、二人の前に座った。


「高田さんが…どうしてこんなことに…」鈴木は言葉を選びながら、静かに話し始めた。


由美子は震える手で涙を拭きながら、高田の遺書を取り出した。「これが、健二が残したものです。彼は…斎藤知事の不正を告発しようとしていました。」


鈴木は遺書を受け取り、慎重に開いた。高田の筆跡がしっかりと記されており、そこには斎藤知事の不正行為について詳細に書かれていた。読み進めるうちに、鈴木の心には怒りと悲しみが沸き上がった。


「斎藤知事が…こんなことを…」鈴木は拳を握りしめた。「健二は、このことを公にするために命を懸けたんだ。」


一郎が口を開いた。「父は、これを鈴木さんに託すつもりだったんです。だから僕たちは、これをどうすればいいのか…」


鈴木は深く頷いた。「わかりました。私がこの遺書と証拠を基に、斎藤知事の不正を暴きます。健二の意志を無駄にしないためにも、真実を明らかにします。」


由美子は涙を流しながら、もう一つの封筒を差し出した。「そして、これが健二の最後の音声データです。きっと何か重要なことが含まれているはずです。」


鈴木はその封筒を慎重に受け取り、中身を確認した。「これも調査の一環として、必ず使わせていただきます。どうか、健二の魂が安らかであることを祈りましょう。」


一郎が鈴木に向かって深々と頭を下げた。「鈴木さん、どうかお願いします。父の名誉を守ってください。」


「もちろんです。」鈴木は力強く答えた。「私はこの真実を明らかにし、健二の意志を貫きます。」


鈴木は高田家を後にし、心の中で友人への誓いを新たにした。斎藤知事の不正を暴き、友の名誉を守るための戦いが始まった。外に出ると、太陽が昇り始め、光陽市の街並みが朝の光に包まれていた。鈴木の心には、決意と共に新たな希望が灯っていた。

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