第34話《おまけ》いい子にしてたからかな

 やっぱり、今日も谷口さんは帰ってこない。

 仕事が忙しいと言っていたから仕方ない。


「寒い――」

 

 私はここ数日、暖房も付けずソファーの上で彼女の帰りを待っている。部屋の明かりもほとんど付けていないので、体の体温も心の体温もどんどん下がっていく気がした。

 

 

 ちゃんと一週間待ち続ければ、クリスマスくらいは早く帰ってきてくれる気がした。いや、今日が金曜日だから早く帰ってくると思った。


 ただ、それは私の勝手な期待だったようだ。


 

 私は握っていたメッセージカードとプレゼントをテーブルに置いて部屋に戻った。布団に入っても手足先の体温が戻ってくることはない。




 小さい頃もこの日はお母さんが帰ってくるのを待っていた。お母さんは「サンタさんが来るから大人しく待ってるんだよ」と言ってたからその言葉を信じて、大人しくいい子で待っているつもりだった。


 しかし、サンタさんが来てくれることはなく、それは私が悪い子だったからなのだろうと自分を責めた。

 


 サンタさんが来なくてもいいから、お母さんには帰ってきて欲しかったが、お母さんはその日は違う人と過ごしていたのだと大きくなってからわかった。

 それでも、ちゃんと家にお母さんが帰ってきてくれるからサンタさんからのプレゼントもクリスマスも要らないと思っている。




 

「お母さん……」


 目を開けると眩しい光が差し込んでくる。


 いつもよりベットが狭く感じて横を見ると、少し大きい袋が置かれていて私は飛び起きてしまう。


 それを無意識にぎゅっと抱きしめていた。


「一週間、いい子にしてたからかな……」


 サンタさんが来てくれた。

 

 私の目からはポロポロと涙が零れている。それをゴシゴシと拭いて、一週間ずっと待っていた人の元に向かった。

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