第3話「遠距離恋愛が辛いんです、どうすればいいですか?(女性)」

 「彼が大阪、私は東京、遠距離恋愛で悩んでいます」


 「遠恋かあ、問題は距離じゃないよね、時間とおカネだ」


 「そうなんです、毎日でも大阪に行きたいくらいです」


 「わかるよ、大阪なら新幹線も飛行機もあるから時間的には解消できても、旅費がなあ。

 交通費が掛かるよなー」


 「往復で3、4万円はかかっちゃうんですよねー」


 「仕事は何をしてるの?」


 「彼は食品メーカーの営業で、私は携帯屋さんで働いています」


 「付き合ってどのくらい?」


 「2年になります」


 「きっかけは?」


 「私のお店に彼が来て、ナンパされました」


 「それでやっちゃったわけだ」


 「そういう言い方はやめて下さい」


 「ごめんごめん、それでまぐわったと」


 「その言い方もちょっと・・・」


 「それで、月に何回やってるの? じゃなかった、会ってるの?」


 「月に1回です」


 「なるほど、後は毎日動画で見せっこしているわけだ」


 「毎日なんてしてませんよ」


 「たまにはするんでしょ?」


 「それは時々はしますけど・・・」


 「結婚したいの?」


 「はい」


 「彼の実家は?」


 「岩手です」


 「あなたは?」


 「私は山形の米沢です」


 「彼は長男?」


 「いえ、次男です」


 「あなたは?」


 「両親は私が幼稚園の時に離婚して、私は母に育てられました」


 「お母さんのこと好き?」


 「はい、苦労して私を育ててくれたので」


 「彼はお母さんと同居してくれるって言ってるの?」


 「話したことはありませんけど」


 「将来のこと話さないの? 結婚しようとか? 何処に住んで、子供は何人とかさ」


 「はい、まだ・・・」


 「じゃあ、彼にこう言うんだ「私のお母さんと同居してくれる?」って」


 「それで?」


 「それで断られるようなら遠恋は終わりにした方がいい。

 


      遠くの恋人より 近くの他人



 実りのない恋も悪くはないが、結婚となると話は別だ。

 現実的に考えないといけない。

 高校生ではないんだから、恋に恋しちゃダメだ、特に遠距離の場合はな」


 「どうしてそんなこと言うんですか?

 私たち、愛し合っているんです!」


 「恋愛の失敗はそこにある。

 大切なのはお互いが好きかどうかじゃない、それは一時的な熱病なんだよ。

 時間の経過とともに熱は冷めるものだ。

 結婚は恋愛ゲームじゃない、合うか合わないかなんだよ」


 「相性ってやつですか?」


 「むしろ洋服や靴、帽子みたいなものだな。

 着心地、履き心地、被り心地がいいかどうか。

 好みや性格が同じというよりも、カラダの相性はもちろん、将来の生活のビジョンが同じかどうかだ。

 つまり、どれだけ彼があなたを大切にしてくれて、セックスが気持ちいいかだ。

 結婚なんてそんなものだ、勢いでするものではない。

 人生は晴れの日ばかりじゃない、嵐の時もあるからな。

 だが、逆にそれがゆるぎないものであれば、遠距離恋愛は悪いことじゃない。

 郷ひろみの唄じゃないけど、「会えない時間が愛を育てる」ってな」


 「実は悩んでいたんです、高校の同級生の男子から、田舎に帰って来ないかって言われてて」


 「その子のこと、好きなの?」


 「ちょっと憧れてました」


 「両方付き合ってみたら?」


 「それって浮気じゃないですか! そんなのダメですよ!」


 「一度きりの人生だ、それは浮気じゃない、お試しだ」


 「お試し?」


 「恋にお試しは必要だと、俺は思うけどな。

 自分の人生だぞ」


 「納得はしていませんが、よく考えてみます」


 「おやすみなさい、ひとりエッチもほどほどにね」


 「そんなことしませんよ!」


 「では次の方」




 

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