第12話 『ギュッ』とやって『スルッ』として『ババッ』とやって『ギュバン』!

「魔法は一朝一夕とはいかないものです。このクラスは『レベル1』の生徒が大半を占めてるわけですが、ウィリア君——君は検査で『レベル3』だとありましたので、魔法を出せる可能性が高いのです」


「…………」


「アイリスさんの後だと、気落ちしてしまうかもしれませんが、気にしてはいけませんよ」



 オイ。説得力がないんだよ。フェル先生や。あんなの見せびらかした後に『気にすんな』は無理があるって。


 処刑か? これは公開処刑なのか!? 完全、針のむしろだろうが!!



「誰あれ? 一般科の? お貴族様の次に披露とか何様なのかしら?」

「うわぁ〜可哀想〜〜ふふふ……」

「あんなすごい魔法の後だとなぁ〜〜俺じゃなくてよかった」



 ほ〜〜ら、生徒の反応も予想通り最悪! 本当にありがとう〜ございま〜す!


 こんな注目浴びる予定じゃなかったんだが……僕の目立たないジミーちゃん化計画が一瞬で瓦解してしまったよ。

 これというのも授業前の検査で『レベル3』と出たのがいけないんだ。

 あまりレベルが高すぎると碌なもんじゃないな。

 


「ではウィリア君——前に出てください」


「…………はい」



 しかし、こうなってしまうと「嫌です!」なんて言えないし。不承不承と前に出るさ。だって、それしか選択肢がないんだもん。


 さて、どうしたものか。



「いいですか。魔法とはイメージです。身体の内に意識を集中させてみてください。ぽわぁ〜〜と、何か温かいモノを感じませんか?」



 ここは……『頑張りますが結局出せませんでした』がベストか? 変に能力があるとみられるのは僕にとってやりづらい部分があるし……あくまでジミーちゃんがモットーだからね。



「それを感じ取ったら、それをギュ〜っとしてですね」



 それに『影』は一般常識としては残念な属性らしいしな。発動したら悪目立ちしそうだ。



「ギュ〜っとしたら、スルッと腕を通して、ババってやってギュバァ〜〜ンです。それで魔法が発動するはずです」



 てか、オイ。さっきから何なんだよこの教師。『ギュ〜』とか『ババッ』て——擬音で語られても意味わからんわ。

 フェル先生……アナタ、メガネかけて知的でミステリアスな雰囲気なクセに、教え方は意外と感覚論なんですね? ギャップがキショいよ? なんで教師なんてしてるんだか。



「え……えっと……」


「ギュッとやって、スルッとして、ババッとやってギュバン——です」



 よくわから〜ん! だが、取り敢えず発動させますか。


 まぁ、『頑張りますが結局出せませんでした』がベストだと思われるところだが、今この時間を無駄にするのも、な〜〜んか違う気がする。


 正直面白くはない——ここは、ちょっとした練習でもしてみますか。



「では——行きます」


「ウィリア君頑張ってください。ギュッとやってギィバーン!」



 でだ——僕はさっきから傍観に徹して、魔法について語っていたわけだが……結局のところ、じゃ〜僕自信は魔法が発動できるか——と言われれば……


 正直に言うよ?


 発動できません。


 散々、ナメクジ君を中傷していたが、僕も彼と同類なんだよね。


 だって……魔法使えないんだもん。


 レベル雑魚すぎて。


 

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