第10話 え? 解説長いって? まぁまぁ、そう言わずに付き合ってくれよ

「残念ながら魔力の性質は『影』——です」

「……残念?」

「が、悲観することはありません。ウィリア君はギルド職員志望だと聞き及んでいます。冒険科でもサポートに徹するそうですね。なら『影』は寧ろあなたには最適な性質だと言える。アレは、援護、サポートに極振りした魔力ですから」

「…………そうですか」



 この時、不可解だったのは……彼女の口にした『レベル3』との数値と、『残念ながら魔力の性質は影』との発言だ。少し、言い返したい気も巡ったが、いちいち説明、解説するのは面倒だし、なんで知ってるのか聞き返されるとさらに面倒なので会話をブチ切って彼女の元を後にした。


 手を翳した水晶だが……アレは魔結晶という石を加工してできた水晶だ。魔結晶とは、魔力を読み取る性質があり、触れた人物から流れ込む魔力量と性質を紐解いて、ザックリとしたレベルと魔質を検知することができる。らしい。

 ちなみに魔質とは、魔力の個性のようなものだ。人間誰しも魔力には性質が異なって属性が宿っている。例えば『炎』。例えば『水』。例えば『風』。例えば『光』。と大まかに分別がつくのだ。

 

 そして、僕の属性は『影』だが……ぶっちゃけいうと一番地味な性質だと言える。だが、この時フェル先生が『残念』と言ったのは「地味だから」という理由からでは、おそらくない。というのは『影』の魔法は消費魔力が激しいのだ。

 この世の人間は【神器】を無しに魔法を行使している。これだと魔力効率は約半分かそれ以下の発揮しかしてくれない。


 つまりどういう事かというと……


 簡単に言えば、世の中の人間は消費魔力2倍以上で魔法を行使している。


 【神器】とは、自分自身の写し身の様な存在だ。顕現する【神器】は魔力の貯蔵庫であり、そして魔力の性質を色濃く受け、持ち主に似る。

 僕の神器が『影』に影響を受けているのはこのためなのだ。


 それを踏まえて……


 『影』の魔法は消費魔力が激しい——つまり、世の中の人間のほとんどは、そもそもまともに魔法が発動できない。もしくは低級の魔法しか使えないのである(僕は神器があるから普通に使えるようになるがな)。だから、フェル先生は低級魔法(見た目もいかにもなザコ魔法だし)しか発動できない魔法を『残念』だと表現し、『悲観』するなと慰めたのだろう。


 馬鹿にしてる様だがな……『影』魔法は、ラストダンジョンのボス【星輝龍】に打ってつけの魔法なんだぞ?!

 低レベルだと、影を移動したり、敵の目を晦ますことしかできないが、最上級までレベリングすれば『時空ごと切断』することだって可能なんだ。すごいだろう!

 全部、冒険譚と神器から僕の脳に流れ込んだ知識参照の情報である。


 まぁ……僕はそこまで求めちゃいないけどね。


 精々、スライムと戯れる程度のお遊び魔法だけで十分だ。スライム如きを倒すために、いちいち時空ごと切断する“阿呆あほぅ”がどこに居るというのだ。そんなオーバーキルはスライムは求めちゃいないんだよ。



 それで、もう一つの不可解な点だが……僕が『レベル3』であった事実だ。



 これについてだが……



 なんでだろう?



 神器に映し出された。数値は確かに『レベル1』だった。そこには変わりないはずだ。それが、今水晶が記した数値は『レベル3』。

 僕はあの夜以来、スライムは倒してないし、そもそもの遺伝や出生時に恵まれた魔力を所持していたとは思えない。田舎出身、しみったれ代表のクソガキだよ僕は……『レベル1』であるのが偽らざる事実であるはずだ。


 あと、思い当たるとすれば【神器】の有無か……



「…………」



 僕は、自分の影を黙って見つめて、1つの可能性に思い至る。



「あの水晶……僕の神器の魔力に反応した?」



 僕にはこれぐらいしか思いつかないな。

 神器は魔力の貯蔵庫だと言った。

 そして自分自身の写し身の様な存在とも言った。

 いわばもう1人の自分であり、これは表裏一体なんだ。

 そして、レベルの概念を引っ張り出してしまえば……僕の本当のレベルは、僕自身と神器のレベルを足した……



『レベル18』



 これが僕の真のレベルだ。



 だって……って、個人の魔力量を数値化したものだよ? 神器は体内にあると表現していいかわからないが、確かにあれも僕の力なんだ。



 と、まぁ……話がだいぶ脱線して『レベル』について熱く語ってしまった。



 ご清聴ありがとう!



 ……って、僕は誰に言ってるんだ? まぁ……いいか……





 で、話を戻すが——


 虎の威を借るアルフレッド君だが……彼の放った水の槍はと僕は言った。


 彼の放ったアレは単に『レベル5』相当の魔力を体外に放出したのお遊戯である。


 どういう事かと言うと……



 例えば、個人が手に1つの魔力という名のボールを持っていたとする。このボールを的に向かって真っ直ぐ投げつけたのなら、これはまだ魔法とは呼べない。先ほどのアルフレッド君の披露した親の威光ビームがこれだ。


 ——あ!? ……いや……褒めて伸ばす褒めて伸ばす……


 えっと……なんとか、かき集めた最後っ屁?? 


 ………うん…………がんばれ!!


 でだ——魔法とは、魔力のボールを投げる瞬間、手にスナップを加えたり独特な投げ方をした時に発動する。要は、ボールに特殊加工を施すと言ったところだ。すると、ボールは回転し軌道が曲がって的へと着弾したり、回転が加わり威力が増したりする。これが魔法なのだよ。 

 アルフレッド君が本当の魔法が使えるようになるのは、おそらく『レベル10』ぐらいになってからだろう。ご大層に「ウォーターランス!」なんて技名唱えているが、あんなの僕が水の入ったコップを持って的に向かって「ウォータースプラッシュ!!」と叫んでぶっかけてるのと同じだからね? まぁ、寝ずに必殺技名でも考えたのかな?

 その……努力だけは賞賛してあげよう。よくがんばりました!!





「では次——アイリスさん……実演してもらえますか?」


「——はい……」



 と、そうこうしているうちに魔法披露は次の生徒の番となる。



 そこで、一歩前に出たのは……



 背は僕と同じぐらいの160㎝——腰ほどまで伸びた鮮やかな赤長髪が特徴の女生徒だった。


 


 

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