第3話 何かがおかしい 世の中の冒険者は……

「君。まだ小さいのに、お祈りとは——殊勝な心がけだ。偉いね」



 とりあえず、僕の脳裏に貼り付いた疑念はおいておこう。まずは、この“敬虔な信徒代表おじぃ”の相手をしなくては……


 言い訳設定は無難な感じでいいかな?



「あ……はい。今日、田舎から出てきて。僕、学園に通う予定なんです。そこで女神様に良い学園生活が送れますようにと——お祈りに来た次第です」

「なるほど……それは素晴らしい心がけだ。きっとは君のその願いを叶えてくださることでしょう」

「……そう、ですかね——?」



 んな分けないだろ——この“おじぃ”……祈り過ぎて考えるのを放棄したのか? 女神様が、こんなしみったれたクソガキの生活を保障してくれるわけ無いだろうが。

 祈るだけで生活が保障されるなら、365日欠かさずここに祈りに来てやるよ——まったく……!!


 と、彼の信望を蔑ろにするような思考をしてしまったが、僕にとってくだらないこと(神への祈り)でも、このおじぃにとっては希望なのかもしれないから、とやかく言わないけど……ちょっと心の中で悪態祭りだった事を反省。


 あ……ちなみに僕は、達観しているのではない。現実主義者なだけだ。


 

「ところで神父様——1つご質問いいでしょうか?」

「ん? 何かね。私に分かることなら答えよう」

「あのですね。冒険者様はお祈りには来ないのかなぁ~と」

「何、冒険者?」



 と……僕はせっかくだからと、先ほどから気になっていた事をおじぃに聞く。僕の記憶が正しければ、冒険者は『神器を開放』するために教会を訪れる。本来なら教会とは冒険者で溢れかえっている筈なのだ。

 しかし、この場は閑散とした雰囲気しか存在せず。聖職者以外はジジ、ババしか居ない。


 これはどういう事だ?



「君。冒険者なんてね。教会なんかにこんよ」

「……ッえ?」

「たまに、冒険の無事を願って祈りにくる子はおるが……彼らが夢中なのは街のど真ん中に聳える塔だ。それはもう祈る時間もないほどに——実に嘆かわしい話だよ」



 本当——どういう事だ!?



 神器を開放しないなんて、何考えているんだ冒険者!?



「え!? じゃあ、は? 冒険者はどうやってダンジョンを攻略を……!?」

「……ん? じんぎ? 何だいそれは……?」

「——ッ!?」



 まさか——



 知られてないのか——!?



「どうしたんだい君——顔色がすぐれないようだが……」

「……え? あぁ……ちょっと……僕が昔、母から読み聞かせてもらった冒険譚には、女神様が祝福した『神器』って武器が出てくるので……本当かな? って思ったんです。でも、神父様の反応では……なかったようですね。ははは……それで、ちょっと気落ちしちゃって……」

「そうかい。それは可哀想な事をしてしまったかな?」

「いえ。僕が勝手に思い込んでいた事なので……なんか……すいません」



 何かがおかしい——


 

 とりあえず、おじぃは誤魔化しておいたが、僕の疑問は何も解決していない。


 だって……


 僕の知ってる冒険譚に出てくる『冒険者』は実在して……


 本に登場する『丘の上の教会』や『城と一体化する巨塔』があって……


 『』だって……僕の胸の奥にある暖かい奔流が存在を物語ってる。


 これほどの類似性を感じているのに……この世の中の『冒険者』は一体何を——?



 何か変だ。




 それに……



「では——僕はここで失礼します。学園の門がしまってしまうので……」

「そうかい。では、そんな君にの祝福があらん事を……」

「……あ、ありがとうございます。それでは……」



 なんか……



 まだ僕は、謎のを感じている。それが何なのか思い出せないが……そろそろ本格的に学園を目指さなくては閉門までに間に合わなくなる。



 仕方がない。後で考えよう。

 


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