第1章 突然知る驚愕事実 僕の胸には野望が芽生えるも 邪魔をするのはアグレッシブ令嬢
第1話 御伽話な筈の物語
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この世界には——
『天空の迷宮』
というモノが存在した。
人々は『冒険者』となって……
武具を担ぎ——
仲間と結託し——
魔法を操り——
果敢にも——
大空に 無数に広がるダンジョンを目指し 大冒険へと繰り出した。
そして……
その頂きに存在する——
【光の迷宮アルフヘイム】
を攻略せし者は……
“勇敢なる者”——【勇者】と呼ばれ……
光の精霊が 祝福し どのような願いも叶えてくれるとされている。
数多の冒険者は……
光に憧れ 大空を目指した。
——The End——
【光の冒険譚】 著者 アテナ・オリーブ
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実に、ありきたりだ。
これは僕が昔、母から読み聞かせられた御伽話の本——その内容を一部抜粋したものになる。
遥か空の彼方には、火山が噴火したり、宙に水が浮いていたり、大きな熱帯雨林が広がっていたり、極寒の氷の洞窟があったりと——無数のダンジョンが広がっているらしい……
と、言っても……これは絵本の内容だ。実際、そんな事実はあるはずがない。
小さい頃は、母から聞かされた武勇に満ちたこの冒険譚を好み、同じ内容にも関わらず、何度だって母にせがんで読んでもらった。
実際、それはド田舎ぐらしの僕の好奇を大いに刺激した。しみったれたクソガキと遊ぶこと以外、娯楽はそれぐらいしかなかったのだよ……僕には……だから、仕方のないことさ。
ただ……15になった今だって——その冒険譚は好きではある。
だが、僕ももう大人になったのだ。夢と現実の区別ぐらいつけれる。年齢が一桁でなくなった時点で人はもう大人だろう? 違う? 危機感の違いで認識は変わるのかな? まぁ、この話題はどうでもいいか。
続きを語ろうか。
これから僕は都会の学校に通う。名前は【ウィリア】みんなからは“ウィル”という相性で呼ばれていた。
しみったれた田舎を離れ——ウィルこと、僕は……しみったれたシティーヒューマンになるのだ。
そして……
普通に勉学に励み
普通に成長して
普通に大人になり
普通に働いて
普通にメシを食い 風呂に入り
普通に結婚し
普通に暮らし
普通に年老いて
普通に死んでいく……
世の中、なんでも普通が1番。
冒険なんて、そこらの阿呆に任せておけばいいんだ。
第一……冒険者なんてフィクションなんだよ……
と——
この時までは、思っていた。
「あぁ……あれは冒険者ギルドですね」
「——ッえ? 冒険者ギルド??」
「はい……って、え? 冒険者を知らない?」
「いや……知ってますけど……。僕はてっきり絵本の中の存在だと思ってました」
「…………ップ……ははは……そんなわけないじゃないですか。冒険者は実際、しっかりと存在しますよ?」
「——へぇ〜〜?」
「よっぽどの田舎から出てきたんですか?」
「まぁ……そんなものです」
待合馬車を降り……ふと、道ゆく女性に道を聞いた。そして、ついでとばかりに近くにあった一際大きな建物について伺う。すると、これである。
冒険者——それが、絵本の中だけの存在ではなく実際に実在していた事実をこの時初めて知った。
確かに……街中を鎧やローブをまとった人物が歩いているな……と思っていたが……てっきり衛兵かと思っていたがそうじゃなかった。
「学園はそのぉ〜……この先でいいんですよね?」
「——ッ!? あ、あぁ……そうです。この大きなストリートを真っ直ぐ進んでいただければ着きますよ。この時間でしたら、学生は下校時間だと思うので、自ずとわかると思います」
「……そうですか。道案内、感謝します」
「いえ、これぐらいは。いい学園生活が送れるといいですね?」
「はい。ありがとうございました」
まぁ、冒険者が実在してたことには驚いた。母から読み聞かせてもらった冒険譚も、あながち事実に基づいたモノだったのだろう。
だが……今、大切なのは学園の方だ。僕はこの【大都市シルフ】に学園生活を送るためやってきていた。なんでも、この国の国王が15才からの3年間——教育の義務を与えた。しかも、学費がタダで学校に通うことができるようになったのだ。
僕は、それを好機と見て貯めたお小遣いでここまできている。寮に入れば泊まるところの心配はないし、最初の3ヶ月間は寮費は無料——その間に、働けるところを探し、学業に準じながらお金を貯め。卒業したら、どこか住み込みで働ける所を探すのが僕の目的なのだ。
「にしても……大きな街だな。僕の故郷のド田舎と大違い——ふふふ……ここから僕の都会ライフが始まるんだ!」
だって、あんなしみったれたド田舎嫌なんだもん。いくら普通を求めても、少しでも良い暮らしをしたいのは当たり前でしょう。
どうしても僕は都会で暮らしてみたかったんだ。
今歩いてる道も大きくて……人は一杯……
遠くの方の丘には教会……
そしてストリートを正面に見ればでっかい王城——!!
すっごくシビれる!!
僕の憧れ!!
でもさ……
「…………丘に教会……そして王城と……」
なんか変なんだ。
僕はこの街に初めて来た。
だけど……
すっごい……既視感?
なんか……見たことがある? いや、違う——何故か『知っている』気がするんだ。
丘の上の教会もそうなんだけど……特に……
「……塔??」
城と一体化する天高く伸びる塔——その大きさはあまりにも大きすぎて、その頂上が見えない。摩訶不思議な光景。
だけど……
なんでだろ……なんか、知ってる……気がする。
「あのぉ〜〜すいません」
「——ん!? なんだろうか?」
とりあえず、近場にいた男の人に声をかけてみる。
「あの……僕、田舎から今日初めてこの街に来たんですけど……あの城のところにあるドデカい塔って何ですか?」
こういう疑問は、適当に質問した方が早い。現地人に聞くのが1番。
「あれかい? あれはラストダンジョンだよ」
「…………は?」
「だから、ラストダンジョン! 聞いたことない? 光の迷宮アルフヘイムだよ」
「——ッ!?」
ここで、ようやく……僕は思い出したんだ。
そうだ——僕が母から読み聞かせてもらった御伽話【光の冒険譚】にそれがあったんだ! 丘の上の教会。そして、王城と一体化する塔——確か、そんな描写があった。
だから、僕は既視感を感じて……だけど……
だとしたら……
あれは……
「ちょっと待ってください? あれがアルフヘイム? 頂上につくと光の精霊が祝福してくれる??」
「あれ……なんだ、知ってるじゃないか君?」
「うそ……だろ……?」
僕の記憶が正しければ……
あれは……
チュートリアルダンジョン——
であるはずなのだ。
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