第3話 魔法学校へ
立っていたのは、ほかでもない僕だった。倒れている少年は忌々しそうにこちらを見つめていたが、何かを言ってくることもなく、ただひたすらにその目で僕をにらみつけているだけだった。そして優勝者が決まり、晴れて僕は賞金を手に入れることができた。
僕が試合の疲れをいやすために待機室で休憩をとっている最中、ふと横を見るとこの村の長である村長が僕に向かってくるのが視認できた。
「優勝おめでとう。よくもまぁ、風魔法だけであんな強者たちを打ち破ったもんだ。君にはほんとに驚かされたよ。」
「いえいえ、たまたま相手の攻撃が僕の使う攻撃手段と、あいての攻撃手段の相性が良かっただけです。」
「だとしても、だ。誰しも使える風魔法だけで優勝したのには変わりない。もっと自信を持ちなさい。」
「そういってもらえると、少し照れますね。」
「ははは、とまぁ、ここらで雑談は終わりにしよう。」
村長の目つきに真剣みが混じる。
「1か月後、北の森に午前の6時に来なさい。君を最高峰の魔法学園へと案内しよう。」
僕はその言葉に無言で首肯をした。
「それでは私はこれでお暇させてもらうよ。」
そういって、村長は去っていった。
一か月後、か。おそらくだが、最高峰の魔法学園となれば、村の魔法使いよりも段違いに強いだろう。つまり僕がこのまま魔法学園に行ったとしても入学試験があった場合落ちてしまう可能性が高い。また、もしなかったとしても底辺の生徒として学校生活を送らなければならない。それなら風魔法のバリエーションを考えおいたほうがいいのかもしれないな。そう思考しながら、家に帰るのだった。
1ッか月後が過ぎ、僕は北の森に足を踏み入れていた。
「待たせたな。」
しばらく待っていると、村長がそういいながら、杖を突きつつこちらに歩み寄ってきた。
「それでは君を魔法学園へと案内しよう。」
そうして、村長が何にもないところへと手を向け、魔法を詠唱し始めた。なにを詠唱しているのかと耳を澄ませていたが、小声過ぎて聞き取れなかった。何が起こるのだろうかとしばらく思考していると、
「ほら、ここへ入りなさい。」
そういわれ、振り返ると、さっきまで何もなかったところに扉ができていた。僕があっけにとられていると、
「どうしたのだ?行きたくないのか?」
「い、いえ。少し驚いただけです。」
「そうか、ならば早めに入ってくれないか。これを維持するのにも、案外かなりの魔力を消費するからな。」
そうせかされてしまったからには入るしかないか。あと、そうだ、僕はふと思った疑問を村長に投げかけた。
「ここには、もう戻ってこれないんですか?」
「早く入れと言っておるのだが、まあ良いか。そうだな、いちいちこの作業をするのもお互い面倒だろう。じゃから君にはあっちの学校にある寮で生活してもらうことになる。ただ卒業すればこっちには戻ってこれる。」
そうか、じゃあしばらくのお別れか。じゃあ、ありがとう。さよなら。
そういって、僕はその扉を開け、魔法学校へと歩を進めた。
僕は呆気にとられつつ、およそ野球場の3倍ほどの広さを持つ学園を見渡していた。設備も整っている。流石だ。そう感想に浸っていると村長が後ろから僕の肩に手を置いた。
「感動するのも無理はない。だが今は入学することが先決だ。中へ入って校長と面談をするぞ。」
そうして、僕は村長についていき、やがて校長室前までやってきていた。すると村長は僕に耳打ちをしてきた。
「あいつは案外変わり者だからな。突拍子もない質問をしてくる。気を付けるんだぞ。」
それだけ言い、村長はその場を去っていった。緊張する。いったどんな人なんだろうか。不安感にかられながら僕は校長室へと入るのだった。
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