第28話

 もう無理かもしれない。

 聖は、がっくりと肩を落として思った。


 次の日である。

 聖は悪友に相談した。


「お姉ちゃんが怒って、僕を嫌悪する。どうしたらいいの?」

「一度剥がれたものは、もう元通りには貼れないのだ。それくらい、二人の結びつきは脆かったんだ」

 悪友はニヤニヤしながら、白い歯を見せて笑った。

「復讐しようとは思わないのか?」

「え? どうして復讐なんて」

 聖はびっくりして聞いた。

「お前の姉はあんまりだ。恨まれたって仕方ないさ」

「恨むことなんてないさ」


「殺してやれ」


 その言葉を聞くと、聖の中で何かがカチッとはめ込まれ、甘美な泥酔が胸に訪れた。


「まあ、冗談だ」

 悪友は言ったが、聖は夢うつつだった。


 殺す!

 お姉ちゃんを!

 お姉ちゃんの死に顔をみる!


 今思えば、恨みの気持ちがあったのかもしれない。それが萌していたのかもしれない。好きな裏に嫌いが隠れてでもいたように。

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