第16話

 恵理香は中学生になり、聖は小学二年生になった。

 私立の制服姿の恵理香は、髪をおさげにして、頬は薔薇色で、妙に色っぽく、美しかった。

 彼女は、すぐに中学校のアイドルになった。隣のクラスから人が見に来た。

 異性に興味を持ち始めた恵理香は、男子生徒から慕われるのが嬉しかった。

 彼女は、男たちに囲まれながら帰宅する。彼らはボディガードとのことだった。


 聖は、姉が大きな男たちに取り囲まれて帰宅するのを窓から、じっと眺めると、いつも不快な気分になった。家にそんな人たちを連れてくる姉が理解できなかった。


「お姉ちゃんは僕んだ」


 嫉妬に駆られ、聖は、ある日、家に帰ってきた姉の腰にしがみついた。


 姉は鼻からため息を吐くと、

「アンタもいい歳よ。お姉ちゃんに抱きつくのもやめないと。アンタも、ほら、男なんだから。レディーに触る時は慎みを持ちなさい」

 姉は聖の腕を腰から引きはがそうとした。


「いやだあ!」


 姉に触れられる権利がなくなるなんてゾッとする。


「ママ! 聖ちゃんをどうにかして!」


 離れたがらない聖に困って、恵理香は声を上げた。しかし、その顔は親し気に笑っている。


「聖ちゃん、お姉ちゃんが困っているでしょう」


 聖は母親の手で姉から引きはがされた。

 二階へ走って行く制服姿の姉の後ろ姿をみて、聖は胸が締め付けられた。

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