第31話 女の子が髪型を変えるのは
次の日の朝。
小梅は鏡台の前へ行き、目が腫れてないか確認した。
じっと鏡に映る自分の目を見たが、腫れてはおらず、ホッと胸を撫で下ろした。
ふと、長い髪が目に入った。
「髪…いつも下ろしてるけど…」小梅は髪を指でくるっと巻き付けたりした。
すると「小梅、どうした?」と流星が不思議そうに、顔を覗かせた。
「流星兄ちゃん」いい所にと小梅は目を輝かせ、流星に近寄り「髪…いつもと違う感じにしたくて」と言った。
流星は一瞬、目を丸くしたがすぐ優しく微笑み「いいんじゃない?どんなのにするんだ?」と小梅の髪に触れた。
小梅は「うーん」と髪を解かしつつ、考えた。
すると、頭の中で尚也を思い浮かべ、頬を赤らめた。
彼はいったい、どんな髪型が好きなのだろうか。
その様子に、流星は苦笑し「三つ編みハーフアップは?」と提案した。
確かに。三つ編みハーフアップは大人っぽく、クールな尚也も嫌いにはならないだろう。
小梅は頷いた。
「結ってやるよ。小学生の頃みたいに」流星は髪ゴムと櫛を持ち、小梅の髪に触れた。
そして、器用に編み込みをしていった。
こうしていると、小さい頃を思い出す。
よく、こうして流星に髪を結ってもらい、友達に『流星おにいちゃんがしてくれたの〜』と自慢したものだ。
ふと、流星が「小さい頃さ、俺が髪結ってあげたら、小梅喜んでたよな」と懐かしむように笑った。
「私も、同じ事思い出してた」小梅はふふっと笑った。
流星も釣られるように笑った後「そういえば、これ小梅に、ブレスレット」と箱から、ブレスレットを出した。
梅の花がついている、ピンクと赤色のブレスレットだった。
◇◇◇◇
朝、いつも通りに学校に着くと「なになに、小梅ちゃん。今日は髪結ってるね」と朱里がいたずらっぽく笑った。
「尚也のため?」恵麻がいきなり、耳元で囁くので、小梅はビクッと驚いた。
そんな、小梅を見守っていた、海斗とかなたは思わず笑っていた。
「いいんじゃない?ハーフアップが好きな男は沢山いるって言うしね」かなたはクスッと微笑み、方目を閉じた。
流石。初めて会った時から思ってはいたが、相当な色男だ。
早速、学年でも人気が高くなりつつある。
「そ、そういえば、結愛ちゃんはまだ来てないの?」小梅はいてもたってもいられなくなり、話題をサラリと変えた。
かなたはスマホをちらっと見て「多分、寝坊だと思うよ。結愛は朝弱いから」と苦笑した。
確かに、結愛は遅刻が多い。
小梅も釣られるように苦笑した。
すると、「おはよう」と心待ちにしていた、尚也の声が背後から聞こえ、心臓を高らかに鳴らした。
「きたきた。あいつ、ちゃんと反応するか?」海斗は面白そうに笑った。
「小梅、おは…よ?」尚也は小梅を見ると、目を丸くした。
小梅は頬を赤らめ、目を逸らしつつ「おはよ…」と返した。
「今日小梅は、三つ編みハーフアップじゃん」後ろから翔が尚也の肩に手を置いた。
そして、尚也にいたずらっぽく微笑んだ。
「そ、そうだね…」尚也は顔を背けた。
2人に沈黙が続き、朱里はため息を吐いた。「あ〜もう。2人っきりにしてあげる。まだ、誰も来ないと思うから」と言うと、他の4人を追い出した。
◇◇◇◇
教室で2人っきりの空間ができたが、気まずい空気が流れた。
尚也は何も言おうとしない。小梅も何も言えなくなっていた。
目もまともに合わせられない。
そう思っていると、尚也が口を開いた。
「小梅、えっと…三つ編みハーフアップ…」「ど…どうかな…?」小梅は心臓が高らかに鳴るのを感じた。
「似合ってる。可愛い…」尚也のその言葉が聞こえた途端、小梅の心臓はバクンっと音を立てた。
◇◇◇◇
影から、2人の様子を見つめていた、朱里達はクスッと笑った。
「そう言えば、なんで如月は髪型変えたんだ?」海斗はふと疑問に思った。
すると、かなたが口を開いた。
「恋する女は髪型を変える。この前、曲作る時に歌詞に入れた」詩的な表現に、朱里は思わず苦笑した。
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