第29話 2学期の君の微笑み
8月24日。
今日は新学期だ。
小梅は1ヶ月振りの学校に浸れながら、2年E組の教室の前に来ると「小梅ちゃん〜2学期の意気込みを〜」と朱莉がスマホのカメラを向けた。
何も変わっていない風景に、小梅はふふっと笑いつつ「体育祭、修学旅行、文化祭があるから頑張って行くのと、結愛ちゃんの彼氏がこクラスに来るので楽しくなりそうだね‥」と答えつつ、遠くの方を見つめた。
小梅の目線の先には、尚也が小梅には見せたことが無い無邪気な笑みで、海斗と話していた。
何度も見ている姿に、小梅は胸が痛くなる。
尚也は本当に私といて、楽しいのかと。
すると、急に黙り込んでしまった小梅の目線先を見た、朱莉は思わず笑みが溢れた。
「心配になるよね〜。私には見せてくれないのに〜って」朱莉の言葉は図星だった。
小梅は何も言えなくなり、尚也と海斗を見つめた。
ふと、背後に人の気配が感じると共に、甘い香水がふわりと香った。「そんなに嫉妬するなら、本人に言ってみれば?」耳元で囁くように言われ、小梅は思わず頬を赤らめた。
「優大先生って恋愛豊富なんですね〜」朱莉が面白そうに言った。
優大は頬を赤らめたままの小梅の頭を撫でつつ「君達よりは大人だからね」とイタズラっぽく答えた。
「え〜」朱莉はクスクス笑った。
すると、「優大先生…」といつの間にか3人の前にいた尚也が優大を睨んでいた。後ろには楽しげに笑っている、海斗もいる。
尚也は不審な笑みを浮かべている優大を睨んでいた。
メガネ越しじゃないからか、いつもより感情が伝わって来る。
「小梅をからかわないでください」尚也は静かだが威圧感がある声で呟いた。
小梅は目を丸くして、尚也を見つめた。
すると「うわ‼︎なにこの威圧感」と登校してきた翔が、空気を払う仕草をした。
「あ、そう言えば俺は転校生のところに行かなくちゃ」優大は一瞬、尚也に不信な笑みを浮かべると、その場を後にした。
朱莉は「我慢できない」と言い、声を上げて笑った。続けて、海斗も声を上げて笑った。
尚也は不満そうに首に手を当てた。
「尚也、流石だね」朱莉はイタズラっぽく尚也に笑った。尚也は釣られるように「全く」と朱莉に笑みを浮かべていた。
その姿を見ると、小梅の胸は更に痛んだ。
◇◇◇◇
放課後になり、いつもの8人メンバーに結愛の彼が加わった。
「改めて、自己紹介するよ。俺は
その姿に女性陣は『きゃ〜』と黄色い歓声を上げた。
かなたは、黒髪にセンスの良いピアス、ネックレスなどの装飾品。チャラそうな所が、音楽をしている男子のイメージだ。
みんながいつものように、盛り上がっている中、小梅と尚也だけいつもと違っていた。
いつもは甘い物を食べ合う2人だが、今日は小梅が黙り込んでいた。
「小梅、どうした?」尚也はずっと不満そうに、尚也の方を見ようとしない小梅に話しかけた。
何度も話しかけてくる尚也に、小梅は「尚也くんってあんなに笑うんだね…」と思わず呟いてしまった。
自分でも驚きつつも、更に言葉が溢れた。
「今日だって、たかっちと朱莉ちゃんには笑うのに…」話しているうちに、小梅は恥ずかしさから、頬が真っ赤になった。
自分が嫉妬しているのに気づいたのだ。
小梅は恐る恐る、尚也を見つめると尚也は肩を振るわせていた。
「ご…めん…我慢…できない」震わせた声で言ったかと思うと「ふ…ははっ」と無邪気な笑い声が聞こえた。
小梅は目を丸くし、尚也を見つめた。尚也は小梅の視線に気付き無邪気な笑みのまま、小梅の髪を撫でるように触れた。
「小梅って、嫉妬するんだね」尚也は楽しげに頬杖をつき、小梅の髪に触れていた。
一部始終を見ていた、他七人は目を丸くさせた。
「尚也が俺たち以外に、こんなに心開いたの久しぶりだな。」海斗は2人を微笑ましそうに見つめた。
「そうなの?」小梅は目を丸くした。尚也はクスクス笑いながら「小梅の嫉妬が意外過ぎて」と言った。
すると「確かに、小梅の嫉妬を流星に送ろうかな」といつの間にいた、優大がスマホを見せた。
それは、先程のやり取りの動画だった。
小梅は慌てて「待って、兄には」と必死に止めた。
その姿にみんなドッと笑った。
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