第28話 お盆の圧力
次の日。小梅は台所に行くと、お菓子を食べている、流星を見つけた。
「あ、流星兄ちゃん。お菓子食べてる。私も欲しい〜」「これ、あと1個なんだけど?」流星は呆れたように、小梅を見つめた。
小梅は「流星兄ちゃんだけズルい。欲しいよ」と諦めなかった。
流星は観念し、半分にして、かじっていない方を小梅に渡した。
「やった〜。ありがとう」小梅は嬉しそうにお菓子を頬ばった。
その姿に流星は思わず、優しい笑みを零した。
◇◇◇◇
「ふふっ」その姿を見ていた、貴美子は思わず笑ってしまった。
「いつまでも、仲良い兄妹なんだから」
◇◇◇◇
1週間後。
今年もお盆の集まりが始まった。
小梅と流星はただ、笑顔で挨拶をして、話し相手になった。
「小梅ちゃん、もう彼氏の1人や2人いてないんか?」「陸上なんか辞めたから、モテるんじゃないん?」親戚の言葉に小梅は苦笑した。
「いませんよ。陸上辞めたからって、モテるわけじゃないですし〜」小梅はすぐ、その場を離れ違う人と話した。
◇◇◇◇
その間、流星も小梅と同じように話し相手になっていた。
「流星くん、もう23だろ?そろそろ、結婚も考えないと」「長男で、ちゃんとした妻に男の子産んでもらわないと」「今回は、流星くんが生まれてくれたけど、女は役に立たないからね〜」「特に、小梅ちゃんなんかは、女なら女で勉学に励むべきなのに、陸上なんかやったと思ったら、底辺校に入学なんてね〜」「どこまでも恥ずかしい子だよね」
親戚の心無い言葉に、流星はイライラしてきた。
どれだけ、自分に小梅がいなければ今頃どんなになっていたか。
だが、ここで言うわけにもいかない。
小梅には幸い聞こえていないから、話題を変えるしか無かった。
◇◇◇◇
そして、忙しかったお盆もいつの間にか終わった。
小梅と流星は一段落着いた。
「疲れた〜。相変わらず、何年やっても慣れない」流星は天を仰いだ。
小梅もため息が漏れた。
流星は苦笑すると「最近、結婚めっちゃチラつかせてくるよな」と呟いた。
同じ事を思っていたと小梅も苦笑した。
「まぁ、私も流星兄ちゃんの結婚は楽しみだけど、無理することはないからね。結婚だけが幸せじゃないし」小梅の言葉に流星は可笑しそうに、肩を震わせた。
小梅が不思議そうに、流星を見ると「ごめん。ごめん」と笑いを堪えつつ「覚えてないの?」と聞いた。
小梅は首を傾げた。
「全く。小梅さ、小さい頃にお兄ちゃん結婚しないで〜って言ったんだよ。それがさ、今は結婚楽しみとか…本当に笑える」流星はあははっと笑い小梅の頭を撫でた。
小梅は「そんなの、昔の話でしょ?流星兄ちゃんには、なにかと負担かけたし、せめて結婚とかでも幸せになって欲しいと思って」と照れ隠しに、目を逸らした。
流星は「ありがとう」と小梅の頭をわしゃわしゃ撫でると、少し考えた。
小梅がいるから、恋愛を適当にしていた自分が本気で恋に落ちる女が現れるのだろうかと。
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