第26話 変わりゆく
尚也は小梅の頭に手を置くと、自分の胸に額を当てる感じで抱き寄せた。
「尚也くん…?」小梅は混乱していると、真心が優しく微笑んだ。
「小梅ちゃんが、なにか秘密があるのはみんな察してたよ。でも、小梅ちゃんがどうであれ、私達は変わらないし、小梅ちゃんを大切に思ってる。だから、小梅ちゃんも少しは、リラックスしてよ」真心の言葉に、小梅は涙ぐんだ。
一体どれだけ優しい人に恵まれたのかと。
「全く、尚也が説明する流れでしょ?何も言わないんだから」朱里はあははっと笑った。
「別に、小梅の身体震えてたから、1人はこういう役必要と思って」尚也は小梅の頭をぽんぽんと撫でてから、そっと離れた。
「とりあえず、明日仕切り直して遊びに行こうか?」悠真の提案にみんな目を輝かせた。
「絶対行こ!!めっちゃ美味しいお店知ってるから」恵麻がそう言い「私も彼氏連れてこようかな」と結愛が言った。
「じゃあ、朝9時駅で集合な。」悠真がそう言い、みんなは『はーい』と言った。
◇◇◇◇
「た…ただいま」帰ってきた小梅を見るなり流星は目を丸くした。
「なんだよ、その怪我」流星は小梅に詰め寄った。
小梅は目を泳がせ「ちょっと…色々あって」と答えた。
「こっちに来い。」流星は強制に小梅を連れて、部屋に行った。
◇◇◇◇
「全く…遊んで来いとは言ったが、喧嘩しこい、とは言っていない」流星は小梅の怪我を手当しつつ呟いた。
小梅は苦笑し「ごめんなさい」とあやまった。
流星は小梅の手当てを終えると、ぎゅっと小梅の手を握った。
「ごめん。花火大会の事、混乱させたよな。あれは…なんと言うか…とりあえず大丈夫だ」流星は小梅の頭を撫でた。
小梅はなにか引っかかったが、とりあえず頷いた。
「あ、そういえば…明日遊びに行ってもいい?」小梅は目を輝かせた。
流星は表情を暗くし「行かない。」と言った。
小梅は驚きつつ「なんで?」と聞いた。
流星がこんな事言うのは初めてだ。
流星は「また、怪我するからダメだ。明日は俺は予定無いし、家にいよう」と少し微笑み頭を撫でた。
小梅は納得出来ずに「喧嘩じゃないから…お願い」と言ったが「ダメだ」と返された。
小梅は流星を少し睨んだ。
なぜこんなにも過保護なのかと。
初めて流星の過保護に嫌気を差した。
流星は小梅の頭を撫でると部屋を出ていった。
◇◇◇◇
小梅は膝を抱え途方に暮れていると「なにか困り事?」と声が聞こえ、顔を上げた。
「貴美子さん…」小梅は少し考え「相談に乗ってくれますか?」と聞いた。
「いいよ。流星くんの事でしょ?」貴美子は察しが鋭かった。
小梅はぽつりぽつりと話した。
流星の過保護さに嫌気が更に増したと。
貴美子は何も言わず優しく頷いた。
そして、話終わると口を開いた。
「流星くんはね、もちろん小梅ちゃんも。この家に生まれてから、色々と苦労が重なる事があったでしょ?
特に流星くんなんかは、長男だって喜ばれると共にどれだけの辛さがあるか。そんな時に生まれたのが小梅ちゃんだったの。流星くんからしたら、唯一信じられる家族で、心の奥底から愛をくれる家族だって、小梅ちゃんくらいの頃に言ってたわ」貴美子の話を聞き、小梅は目を伏せた。
流星の愛はわかるが、最近は重すぎる。
貴美子は小梅の思いを察したのか「私が、流星くんと話してあげるからね。明日行ってきてもいいよ」と許可してくれ、小梅は目を輝かせた。
「ありがとうございます。貴美子さん、お母さんみたいですよね」小梅の言葉に貴美子は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに優しく微笑み「ありがとう」と言った。
まだ困難があるような気がするが、きっと大丈夫だろう。
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