第25話 青春の喧嘩

小梅が公園に着くと、いつもの8人は他学校を睨んでいた。

「お前ら、あんま舐めんなよ?」海斗は襟元のボタンを外した。

「喧嘩を買うなって行ったのに…」小梅はため息を吐いた。

すると「小梅、怖くない?」と尚也がコソッと聞いた。

小梅は苦笑すると「怖いわけないでしょ。友達が買っちゃった喧嘩は、なんとかしなきゃね」喧嘩は慣れてるしと心の中でつけ足した。

そして、他学校を見つめた。

派手髪にピアス。後ろにバイクもあり、特攻隊を着ている辺り、ヤンキーグループだと分かる。

一筋縄では行かないだろう。

小梅が息を飲むと「いくぞ〜!!」と声がかかり、攻撃が開始された。

殴る蹴ると言った、暴力。

小梅は暴力に避けつつ、流星に教えてもらった、合気道を使いなんとか得ていた。

だが、相手は人も喧嘩の数も多い。

壁に3人追い込まれ、逃げられなくなった。

そして、1人が小梅の腕を強く掴んだ。

折れはしないが、痣ができるくらいの強さに、小梅は軽く唸った。

その間に、頬を思いっきり殴られた。

痛みに視界が揺らんだ。

「ほら、これだけか…よ!!」突き飛ばされ、小梅は身体中の響く痛みに、すぐには起き上がれなかった。

「小梅!!」「如月!!」なんとか、悠真が小梅を攻撃した3人を引き付け、尚也は小梅の元に駆け寄った。

「大丈夫?」「だ…大丈夫」小梅は殴られたさい、口を切った血を拭った。

「小梅、立てる?無理するなら撤退しよう」尚也は小梅の肩を抱くように支え、小梅を立ち上がらせた。

「お前ら、冷たい事言うようだけど、ままごとやってんじゃねぇよ。」海斗は隙を作り、小梅と尚也に伝えた。

その言葉に、尚也は唇を噛んだ。

どうすればいいのかわからなくなっているのだろう。

「尚也くん…私が終わらす…」小梅はそっと支えていた、尚也の腕を名残欲しさもありながら解いた。

そして、響くように声を少し上げた。

「知ってる?ここら辺は家…如月家の物だから。」小梅の声に、他学校達は息を飲んだ。


ーー流星兄ちゃん…名誉傷つけるかも…ごめん


小梅は流星に心中で謝ると「如月家の事なんで出すか知ってる?私が如月家の…」小梅はわざと最後の言葉を濁した。

もう、わかるだろう。

他学校は軽く舌打ちをすると「撤退するぞ」と言い、バイクに乗り込み、その場を後にした。


◇◇◇◇


小梅は安心と疲れから、視界が揺らんだ。

「危ない…」尚也が急いで小梅を支えた。

「小梅ちゃん、あれどういうこと?確かに、小梅ちゃんの苗字は如月だけど…」「まさか、小梅ちゃん本当に…」女子達の言葉に小梅は申し訳なさそうに目を伏せた。

その表情を見て、みんなは察し何も聞かなかった。

「とりあえず、如月のおかげで助かった。ありがとう」海斗は明るく小梅に微笑んだ。

「大丈夫。ごめん、喧嘩中緩すぎたね」小梅が身体中の痛みに耐えていると、尚也は小梅の頭に手を置くと、自分の胸に額を当てる感じで抱き寄せた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る