第24話 夜を照らす花火
流星と小梅は石段に座って空を見上げた。
祭りのざわつきから、少し離れた所に来たからか、更に静かな暗闇に感じた。
「小梅、暗闇怖い?」流星は優しく囁くように言い、小梅の手を握った。
小梅は「小さい頃の話じゃん。今は大丈夫だよ」と微笑んだ。
流星は少し笑った。
怖いのは自分の方かと。
すると、ドン!!と大きな音が聞こえた。
「あ、花火〜!!」小梅は目を輝かせて、花火を見上げた。
暗闇を明るく照らす花火。
これを何に例えるのか。
ふと、隣に座る小梅を見つめた。
小梅の横顔は花火によって、輝いていた。
その姿がそっと、小さい頃と重なる。
こんなにも、変わらないものなのか。
「流星兄ちゃん、花火綺麗だね」小梅は流星の視線に気づき、明るく微笑んだ。
流星は優しく微笑み返し「そうだな」と返した。
暗闇を照らす花火は、消えてもまた光る。
暗闇を一生懸命照らすように。
「小梅だったら、この花火をどうやって例える?」流星はコソッと小梅に聞いた。
小梅は少し考え「落ち込んでいる時に助けてくれる大切な人」と答えた。そして、更に話を続けた。「花火は暗闇を精一杯、明るい色で照らすように、落ち込んだ暗い気持ちを明るい笑顔、言葉で照らしてくれるの」と言うと、小梅は流星に微笑んだ。
流星は小梅の頭を撫でた。
やはり、小梅は大人になっているのだろうか。
花火を見上げる小梅の横顔を見ると、まだ、幼い頃と重ねてしまう。
自分だけを頼り、笑ってくれる小梅。
唯一の救いだった小梅。
小梅が言う、花火の例え。
『落ち込んでいる時に助けてくれる人』『暗い気持ちを明るい笑顔、言葉で照らしてくれるの』
その言葉はずっと一緒にいる小梅に当てはまる事だ。
自分の暗い気持ちを小梅の明るい笑顔、言葉でどれだけ助けられたか。
「小梅は知らないだろうな」流星がポツリと呟いた言葉は誰にも聞かれることはなく、花火の音で消し去った。
それでいい。
流星は小梅をぎゅーっと抱きしめた。
「流星兄ちゃん?」小梅は不思議そうに流星の肩越しに流星を呼んだ。
まだ、許されるならこうしていたい。
小梅の優しさを温もりを1番に感じたい。
「流星兄ちゃん、どうしたの?」何もわかっていない、小梅はただ流星を肩越しに呼んだ。
◇◇◇◇
花火大会から数日が断ち、小梅はぼんやりとしていた。
数日の前の花火大会での流星の様子がやはりおかしい。
特に、花火が打ち上がっている間。
強く抱きしめられ、離さなかった。
その腕が震えてるようだった。
あんな、流星を見た事がない。
なにかしてしまったのだろうか。
小梅が頭を悩ませていると、スマホにメッセージが入った。
悠真から、"来てくれ、公園にいる"とメッセージが浮かんでいた。
小梅は"了解"と送ると、部屋にいる流星に声をかけた。
「流星兄ちゃん、遊んでくる」「行ってらっしゃい。これから忙しくなるから、精一杯遊んでこい」と返され、小梅は頷くと家を後にした。
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