第19話 体調の回復

数日が経ち、小梅は病室の窓の前へ立っていた。

夏が始まり、青空が海のように輝いていた。


ーー早く退院したい


小梅は強くそう思った。

次こそは、みんなで食事して騒いぎたい。

そして、今までの分を取り返すように甘い物が食べたいと思った。

色んな楽しみを考えていると、ドアがノックされた。

「はい」小梅が返事すると、ドアが開いた。

病室に来たのは、優大だった。「小梅、久しぶり」優大は病室に入るなり、笑みを零した。

「久しぶりですね。優大先生」小梅はふふっと微笑んだ。

優大は少し目を丸くしたが、すぐいつものように笑みを落とした。

「小梅、明るくなってるね。その笑顔、流星そっくり」優大は小梅の頬に触れた。

「ゆ…優大先生、近いですよ」小梅は距離を取ろうとした。

優大は目を細め微笑みを作った。

教師の目とは思えないその目に小梅は混乱に陥った。

だが、「さて、優大先生。生徒に手を出してどうするんです?」といつの間にか、流星が優大の肩に手を置いた。

「流星、久しぶり。連絡全然返してくれないから心配だったよ」優大は流星に目線を向けた。

流星は少し笑い「心配ついでに、親友の妹に手を出そうとするバカがいるか」と返し、小梅の頭を撫でた。

「それは、親友の妹だからね?」優大は意味深に微笑んだ。

「全く。教師になっても変わんないな。」優大は笑顔で答えていたが、怒りが顔に滲み出ていた。

そ2人のやり取りに思わず小梅はふふっと笑いが零れた。

流星と優大は不思議そうに小梅を見つめた。

小梅は口に手を当てふふっと笑いつつ「流星兄ちゃんと優大先生、本当に仲良いんですね」と言った。

「小学校からずっと仲良いから」流星は明るく笑った。「でも、流星は小梅の写真見せてくれなかったんだよね。俺だけじゃなくて、他の奴らにも」「優大みたいな奴らに狙われるかもしれないだろ」2人の言葉に小梅は驚いた。「私、友達にはすぐに流星兄ちゃんの写真見せたのに」「兄妹の温度差がすごいね」優大はクスッと笑った。

そして、しばらく3人で談笑をした。

2人の学生時代の思い出を聞き、小梅は新鮮な気持ちになっていた。


◇◇◇◇


「小梅ちゃん、体育祭のクラスTシャツのデザインね、胸元にひまわり。後ろにハートの中にクラス全員の名前にしようと思ってるの」朱里がクラスTシャツのデザイン画を見せた。

「いいね。体育祭の明るさって感じ」小梅は楽しそうにデザイン画を見つめた。

その横画を見つめていた、朱里は「小梅ちゃん、明るくなったね」と声にしていた。

小梅は目を丸くしたが、すぐに笑顔を落とし「みんなのおかげ」と言った。

朱里は嬉しそうに笑い「そっか。」と答えた。

「そう言えば、みんなもう喧嘩してないよね?」小梅の問に朱里は苦笑した。

「前とは違う学校だけど、1回喧嘩したよ。もちろんこっち側が完全勝利」朱里は胸を張った。

小梅はふふっと笑い「相変わらず懲りないね。」と言った。

「小梅ちゃんは、喧嘩とか慣れてなさそうだよね」朱里の言葉に小梅は苦笑した。

「まぁね…」小梅はそう答えると、少し考えを巡らせた。

確かにはしていない。

でも、見慣れている。

高校生の喧嘩よりは、激しいが。

小梅は苦笑するしか無かった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る