第12話 1週間経って
朝登校すると、朱里がまたドアの前で待っていた。「1週間経ったけど〜どうですか?」朱里は小梅にスマホを向けた。
「やっぱり皆喋ってる?」「結構喋ってるよ」「え〜。えっと、なんかE組カップル多いなって思うし、退学ギリギリな人が多いクラスなのにまだバックれてないね。そろそろバックれない?」小梅が話していると朱里は爆笑した。「小梅ちゃん〜後ろにたかっちいるの気づかなかった?」朱里に指摘され、振り向くとたかっちが真顔でいて、小梅は「びっくりした」と笑った。
「やっと気づいた〜。てか、如月も退学ギリギリなんだよな」「そうだよ。」「朱里も退学めっちゃ危なかった。」海斗は朱里の肩に腕を置いた。朱里は「たかっちの方がテストの点数悪かったでしょ?」と言い返した。「いや、俺の方が頭はいい」「絶対私の方が頭がいいって」朱里と海斗が仲良く言い合いをしている「朝から、イチャつかないでよ。2人共」と隣からダルそうな声が聞こえた。
小梅は声の主を見ると、目を丸くした。
黒髪ストレートに黒縁メガネ。
制服を少し着崩した格好をしている。
間違いなく、優也に教えてもらった尚也だ。
始めて近くで見たが、黒縁メガネから覗く黒い瞳が綺麗だと感じた。
「おはよう。尚也〜今日は朝からメガネなんだ」「まぁね。正直、授業中だけで良いけど、何故か朝からかけてきちゃった」尚也はフッと笑った。
小梅は呆然と尚也を見つめていた。
すると「なに?」と尚也に目線を向けられた。
「そっか。尚也と小梅ちゃん流石に話した事無かったよね。なんか、空気感が同じだね2人」朱里は面白そうに笑った。
「ああ。もしかして、優也が話してた如月小梅?なんか、似てるって言われた」「そうだよ。私も楠木君に言われたんだよね」優也の名前を聞き、胸が痛くなるのを感じつつ、笑顔を作って返した。
「そっか。」尚也はそれ以上何も言わずに教室に入った。
ーー私に…似てる?
「確かに、小梅ちゃんに似たり寄ったりだね〜」後ろから、真心が笑いながら言った。
海斗は「空気感も似てるけど、案外マイペースな所も似てるよな」と笑った。
「そうそう。それに、人見知りな所。私が小梅ちゃんと始めて話した時もあんな感じだったよ。小梅ちゃんはギャップがあって仲良くなったけど」真心は懐かしむように小梅を見ながら話した。
小梅は気恥ずかしく笑いつつ「尚也くんとも仲良くなりたいな…」とボソッと呟いた。
「いいじゃん!!絶対仲良くなれるよ。早速今日、バックれて何人かで遊びに行こ」朱里の提案に「それいいじゃん」と海斗が乗り気になり、声をかけるべく教室に入っていった。
「あの、でも真心ちゃんが…」真面目な子だし、乗り気できないよねと小梅は真心の方を見つめた。
「正直、小梅ちゃんの言う通りかもしれないけど、それ以前に私こう言うのやってみたかったの〜。青春なんて1度きりだし、私も行く」と目を輝かせていた。
見た目が真面目でクールな感じだが、夢いっぱいな考えを持っている真心のギャップに引き寄せられたんだと、小梅は自覚した。
◇◇◇◇
しばらくし、バッティングセンターに移動し、女子の何人かはソファーで話していた。「えっと、如月小梅ちゃん。私は
「よろしくね。小梅ちゃん。私は
「小梅ちゃん、早速だけど尚也に水渡したあげて」朱里はニコリと笑いペットボトルの水を小梅に持たせ、尚也の方を見た。
小梅は少し頷き「えっと、な…尚也くん?」と尚也をぎこちなく呼んだ。
尚也は「ん?」と振り向いた。
小梅は目を丸くした。
尚也はメガネを取っていたのだが、メガネが無くなったからか、目がいつもより輝いて見えた。
「なにか用?」素っ気なく聞かれ、小梅は慌てて「これ、尚也くん喉乾いたかなっと思って」と水を渡した。
「ありがとう。」尚也は水を受け取ると、海斗の方へ行った。
海斗に話しかける時には無邪気な笑みを浮かべており、小梅は気分が沈んだ。
「相変わらず人見知りなんだね。小梅ちゃんは結構人見知り無くなってきたのに」真心はふふっと笑った。
「小梅ちゃん、落ち込まないで。」朱里はぼーっとしている小梅の頭を撫でた。
「なんだか、今更だけど真心ちゃんに申し訳なくなったよ。」小梅は俯きつつ呟いた。
「全然。でも、尚也も小梅ちゃんと同じく不器用なだけだから、仲良くなれるよ」と真心は優しく言ってくれた。
小梅は少し頷いた。
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