第7話 夏休み
「夏休み、やる事ないね〜」小梅と流星はソファーに並んで座り、アイスを食べていた。
「まぁな。お盆までは暇だよな」流星は少し間を空けると「小梅」と呼んだ。
小梅は「なに?」と流星に目線を向けると、流星の真剣な目に何か嫌な感覚がした。
「小梅。ごめん!!俺、明日に実家に戻る。」流星にそう告げられ小梅は目を伏せた。
「そうだよね。短い期間でいるつもりだったもんね。それに、お盆の前は当主になった流星兄ちゃんがいないとダメだよね」小梅の聞き分けの良さに流星は罪悪感でいっぱいになった。
「小梅。明日からお盆まで実家に帰らないか?俺が当主になった今、実家は小梅が思っている所じゃない。」流星の提案に小梅は首を振った。
「ごめん。まだ、怖いから。でも、お盆の2日前には実家に帰るよ。私も如月家の娘だし、色々としないといけないから」小梅は少し微笑んだ。
流星は小梅の頭を撫で「小梅、大人になってきたな」と笑った。
小梅は少し頷いた。
「今日の夜ご飯は何が食べたい?」「肉じゃが。流星兄ちゃんが作る肉じゃが好きなの」小梅の言葉に流星は嬉しそうに笑った。
「わかった。買い出し、今から行く?」「うん!!流星兄ちゃん、プリン買って」「わかった。」
◇◇◇◇
翌朝。
「じゃあな。小梅」流星は小梅の頭を撫でた。
小梅は笑顔を作りたかったが、少し目を伏せてしまった。
流星は人の懐に入るのが上手い。
一人暮らしの生活だったはずが、流星がいるのが当たり前に思ってしまったのだ。
「小梅、実家なんてすぐだろ?そんな悲しい顔するなよ。すぐ会えるから」流星の言葉に小梅は少し笑ってしまった。
「フラグ立ててるの?」小梅の冗談に流星も笑った。
「俺が死ぬみたいな言い方するなよ。実家は前より安全にしたから、心配せずに帰ってこい」流星は小梅の頭に手を乗せた。
「流星兄ちゃん。ありがとう、色々と。」小梅は笑顔を見せた。
流星は嬉しそうに笑い「小梅。高校生活楽しめよ。でも、喧嘩はするなよ」と伝えた。
小梅は可笑しそうに「流星兄ちゃんには言われたくないよ〜」と返した。
流星は「全く」と自分の額に手を当てた。
「学校には友達もいるし...それに...」小梅は優也を思い出し、頬を赤らめた。
流星は複雑な表情をしたが、ため息を吐き「とりあえず、ちゃんと食べて、ちゃんと寝ろよ。」と小梅に言い聞かすように言った。
小梅は「わかった。」と頷いた。
流星は優しく微笑み小梅の頭を撫でた。小梅はくすぐったく笑った。 「じゃあな」「うん!!また実家でね」小梅の言葉を最後に流星は家を後にした。
◇◇◇◇
流星が実家に帰って数日後。
小梅は赤い着物を着て、キャリーケースを転がし、実家の前に立っていた。
アパートで暮らしていたからか、豪邸の実家を見ると小梅は圧倒された。
そして、インターホンを押した。
すると、立派な門が開き玄関まで、黒スーツを着た男達が並んでいた。
「ご帰宅嬉しく思います!!」黒スーツの若い男達は一斉に頭を下げた。
小梅は少し笑い「ありがとう。忙しいのに、ここまでしなくても大丈夫だよ」と言った。
「いえ、小梅お嬢がご帰宅されるのが嬉しいので」「さぁ、お荷物お持ちしますよ」「小梅お嬢がお元気そうでなによりです」と男達は小梅に世話を焼いた。
見た目は怖いと言われる男達だが、優しい人ばかりだ。
小梅は玄関に入ると「お帰りなさいませ。小梅お嬢様」とお手伝いさんの女の人達が正座をし、頭を下げた。
「皆さん。忙しいのに、ありがとう」「いえ、小梅お嬢様とお久しぶりにお会い出来るとなると嬉しく思いまして」お手伝いさん達は嬉しそうに笑った。
「ありがとう。あ、お土産後で渡すね」「ありがとうございます。」お手伝いさんは嬉しそうにしながら、仕事の持ち場へ戻って行った。
「小梅。早かったな」奥から流星が笑いながら来た。
流星は着流しの姿だ。
「色々と忙しくなりそうだし、早めに来たの。」小梅はふふっと笑い、自分の部屋に向かった。
◇◇◇◇
「流星兄ちゃん、お客様にお出しするお菓子来たから、一応確認だって」「わかったすぐ行く」と色々とバタバタした1日を過ごし、夜になっていた。
「やっぱり、お盆前は疲れる〜」縁側で一段落ついた小梅は背伸びをした。
流星は少し笑い「そうだな。」と返した。
「ねぇ、流星兄ちゃん」小梅の声が震えだし、流星は驚きつつ小梅を見つめた。
「やっぱり...父親...来るの?」小梅は涙目で流星を見上げた。
「来ないよ。もう引退したし、落ち着きたいって」流星は安心させるように優しく微笑んだ。
小梅は胸を撫で下ろし「良かった...」と呟いた。
流星は何も言わず小梅の頭を撫でた。
小梅は膝を抱え、空を見上げた。
既に日が落ち、暗くなった空をぼーっと見上げた。
流星は小梅の横顔を見て悲しく笑った。
すると「夕餉が出来ました」と声がかかった。
「小梅。行こっか?お腹空いたな」流星は小梅の手首を優しく引き寄せるように掴んだ。
「うん」小梅は少し微笑み流星の後をついて行った。
二人は少し小さい頃を思い出した。
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