第5話 不思議な帰り

時間の流れは早く、7月に入り、気づけば夏休みまで日にちがあまりなかった。

「小梅、一緒に帰ろう」放課後、優也は小梅に声をかけた。「今日は部活ないの?」「今日は、off。久しぶりに小梅と帰れるじゃん」優也は明るい笑みを浮かべた。「そうなんだ。じゃあ一緒に帰ろ」小梅は荷物を持った。

「あ、小梅ちゃん〜じゃあね」教室を出ようとすると、真心が小梅に手を振った。

「じゃあね。真心ちゃん。また明日」小梅も手を振り返し、教室を後にした。


◇◇◇◇


バスに乗り、席に座ると「小梅、ここ最近明るくなったよな。何かあったの?」と優也は興味津々に聞いた。小梅は少し笑い「特には…」と否定したが、少し考えた。

こんなに明るくいられるのは、兄がいてくれているおかげだろう。

小梅がクスッと笑い、優也は面白くなさそうに小梅を見つめた。

そして「そう言えば、小梅って甘い物が好きだったよな?」と話題を変えた。

小梅は「甘い物?好きだよ。」と答えた。「スイーツが美味しい店出来たらしいから、今週の休みに一緒に行かない?」優也はスマホでホームページを見せながら言った。

小梅は目を輝かせ「行きたい。」と頷いたが、「楠木君って甘い物苦手じゃなかった?」と心配そうな目を見せた。

「小梅と一緒に行きたいから」と優也は小梅の頭に手を乗せた。

小梅は少し頬を赤らめ「あ、ありがとう」と呟いた。


ーードキドキする…


小梅は少し俯いた。


◇◇◇◇


降りる駅に着き、小梅と優也はバスを降りた。

「家まで送って行こうか?」と優也は提案したが、小梅は「大丈夫。ここでいいから」と立派な豪邸前で足を止めた。

小梅が寄る所なのかと優也は目を丸くしたが「そっか、じゃあな。また明日」と手を振った。「じゃあね。」小梅は少し手を振り返した。


◇◇◇◇


小梅と別れ、少し経つと「優也」と声をかけられ振り向いた。

声をかけてきた相手は、優也の友達の月島 尚也つきじま なおやだ。

黒髪に黒縁メガネをかけており、知的でクールだ。

サッカー部に所属しており、優也ほどでは無いものの上出来だ。

そして、クールな見た目から考えられないほどの甘党だ。

「尚也か…」「なに、残念そうな顔してんの」尚也は不服そうに優也を見つめ「これでも、彼女といたから話しかけるの遠慮してたんだけど?」と付け加えた。

「彼女じゃねーよ。一応友達」「一応ってなんだよ。全く」尚也はクスッと笑った。


◇◇◇◇


小梅はいつものように千歳と遊んでいたが上の空だった。「小梅、どうしたんじゃ」千歳は小梅を見上げた。

小梅は我に返り「なんでもないよ」と誤魔化すように笑った。

千歳は納得しきれなかったが、無理に聞くこともしなかった。

すると、スマホにメッセージの通知音が鳴った。

小梅はスマホを見ると、流星から

"早く帰ってこい。遅くなると危ない"

とメッセージが来ていた。

小梅は少し笑い「ごめんね。千歳帰るね」と千歳の頭を撫でた。

千歳はコクンと頷き小梅は部屋を後にした。


◇◇◇◇


「ただいま。流星兄ちゃん」小梅は家に入り、鍵をした。

「おかえり。小梅」流星はリビングから出てき、優しい笑みを浮かべた。

小梅はぼーっとしており、流星は小梅の額に手を当てた。「なに?流星兄ちゃん」小梅は我に帰った。

「いや、ぼーっとしてるから、熱でもあるのかと思って」流星は小梅の額から手を離した。

「大丈夫だよ。夏休みがもうすぐだから、気が抜けてるだけ」小梅は少し笑い、靴を脱いだ。

「ならいいんだが。とりあえずご飯食べよう」流星は小梅の頭を撫でた。

小梅は戸惑いながら、撫でられた頭を触った。

「小梅、なにかあった?」流星は心配そうに小梅を見つめた。

小梅は、ぼーっと「撫でられる感覚が違う」と呟いた。

流星は首を傾げた。「何が違う?小梅の頭は何回も撫でているだろ?」と不思議そうに言った。

「ドキドキしない…」小梅はぼんやりと言った。

流星は戸惑いを隠せず「一体何があったんだ?」と小梅の肩に手を乗せた。

小梅は我に返り「なんでもない。それより、お腹空いた」と微笑んだ。

流星は納得しきれなかったが「そうだな。早く食べよう」と優しく微笑んだ。





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