第4話 新しい友達

殴られる呻き声。怒鳴る声。

目の前に繰り広げられる暴力の風景。

自分は冷たく見つめることしか出来ないのだろうか。


◇◇◇◇


「うっ…」小梅は少し呻き声を上げ、目を覚ました。

「また、あの夢…」小梅は自分の額に手を当てた。

少しし、小梅は支度をしようと我に返ると、ある違和感に気づいた。

朝食の香りが漂っている。

小梅は急いでドアを開けた。

リビングに入ると「おはよう。小梅」と流星が優しく小梅に微笑んだ。

小梅は驚きその場に立ち尽くした。

「なにしてんだ?早く準備しろ」流星は少し笑い朝食を机に並べた。

「流星兄ちゃん、昨日は帰らなかったの?」小梅の質問に流星は「あんなに泣いた妹をほっとけないだろ?」と当たり前のように言った。「後、しばらくはここにいてもいいか?もちろん生活費は負担する」と付け足され、小梅は目を丸くした。

「如月家は大丈夫なの?」「昼間に行くさ。昼間は小梅も学校だろ?」「そうだけど…」小梅は目を伏せた。少し考えると、流星がいてくれるのは落ち着くこともあるだろう。

小梅は「じゃあ、しばらくの間。」と答えた。

「良かった。小梅、朝ごはん出来てるから食べよう」流星の言葉に小梅は椅子に座った。

そして、朝食を見ると目を輝かせた。

メニューは、オムレツにサラダ。クロワッサン2つにコンスープだった。

「流星兄ちゃん、すごい」「そうだろ?」流星は得意気に笑った。 そして「小梅、あまり食事取っていないだろう?」と言われ、ドキッとした。

「やっぱりか。言っているだろ?何があっても食事を取って、睡眠はしっかりしろって」流星は小梅の頭を撫でた。「わかった。」小梅は少し頷いた。

そして「いただきます」と手を合わせ、オムレツを口に運んだ。

「美味しい。流星兄ちゃんやっぱり料理上手」小梅は頬に手を当てた。

「ありがとう。サラダも食べろよ?」「わかってるよ」小梅はスープを少し飲み、サラダにドレッシングをかけ口に運んだ。


◇◇◇◇


「今日、なんか嬉しそうだね」学校で趣味に浸っていると、隣の席から優也が声をかけてきた。

「そう?」小梅はふふっと笑った。「てか、小梅の趣味が小説書くことってなんか納得したわ」優也は小梅が書き終わったルーズリーフを見つめた。

「珍しい趣味になるよね。今まで小説書く仲間とかもできた事ないかも」小梅は少し休憩でいちごオレを飲んだ。


◇◇◇◇


昼休みになり、小梅は売店か食堂に行こうかと席を立った。すると「ねぇ、如月…さん?」と声をかけられ、小梅は振り向いた。

声をかけてきた女の子は同じクラスの早乙女 真心さおとめ まこだ。

底辺校にはほとんど居ない、成績優秀タイプだ。

そして、ハーフアップにメガネをかけている彼女はとても美人だ。

この高校は、制服はネクタイかリボンかで選べ、真心はネクタイの制服だ。

そんな真心が小梅に話しかけるのは意外だった。「ど…どうしたの?」小梅は素っ気なく答えてしまった。

実は、小梅は人見知りなところがあり、悪気は無く無愛想になる事も多々あった。

「如月さん、もしかして小説書いてるの?実は私も書いてて」真心の言葉に小梅を耳を疑った。

同じ趣味の子が目の前にいるのにどれだけ感動するのか。

小梅が黙ってしまっていると「ごめん。迷惑だったよね。」と真心はその場を離れようとすると「小梅、もうちょっと器用に生きなよ」と優也が小梅の肩に腕を乗せた。そして、真心の方を見て「小梅。こんなんだけど、内心めっちゃ喜んでんの。」といたずらっぽく言った。

小梅は少し頬を赤らめ「楠木君、言い過ぎ」と俯いた。

真心は目を輝かせ「如月さん。一緒にご飯食べよう」と小梅の手を取った。

小梅は頷きたかったが、毎日優也と昼食を取っていたので、優也の方を見上げた。「行ってきなよ。俺サッカー部の友達と食べるし」と言ってくれ、小梅は「一緒に食べよう」と頷いた。


◇◇◇◇


「小梅ちゃんは、どんな作品書いてるの?私は非日常というか、ほとんど戦闘系かな。」少し経つと警戒心が無くなり、お互いをちゃん付けするまでに発展した。

「私は、恋愛系かな。和風の戦闘系なら書いてるけど、恋愛が中心になってるかも」「恋愛系〜いいよね。今度読み合いしよ」「いいよ。」小梅と真心は屋上のベンチで盛り上がった。

「小梅ちゃん、楠木さんにベッタリだよね。付き合ってる?って噂になってたけど、どうなの?」真心はずっと気になってたと興味津々な目を見せた。

小梅は少し笑い「付き合ってないよ。楠木君に恋愛感情は抱いたことないかな」と否定した。「そうなんだ。楠木さんって1年してサッカー部のエースだから、やっぱり人気が出てるの」「そうなんだ。ここの高校モテるのはサッカー部だよね」「そうだよね。それでね、小梅ちゃんなら大丈夫だけど気をつけてね。ファンの女の子は怖いから」「私みたいな子はいじめられないよね。入学初日からこの格好だし」小梅はふふっと笑った。

「そう言えば、小梅ちゃん見た目は派手って感じだけど、お上品さがあるよね。」「お上品さ?」「うん。派手な見た目の子達って大きな声で笑ったりとか大きな声を出したりするけど、小梅ちゃんは落ち着いてるって言うか。なんだかすごい」真心が圧倒されるように言い、小梅はふふっと笑い「なにそれ」と言った。「なんだか、そんな風に思った。でも、私小梅ちゃんの事好き。小梅ちゃんは優しいよね」真心は小梅の手を握った。

小梅は少し笑い「優しい…ね…」と少し呟いた。「どうしたの?」真心は不思議そうに小梅を見つめた。「なんでもない。人を素直に褒められる真心ちゃんこそ優しいよ」と小梅は微笑み真心の手を握り返した。

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