第2話 一月が流れて

高校生活も一月も経てばほとんど慣れるものだった。

底辺校なこともあり、授業なんかほとんど聞いていない人がほとんど。小梅もその中の1人だ。

だが、優也と行動しつつも楽しい高校生活だ。

小梅は教室のベランダに出て、パックのいちごオレを飲みながら空を見上げた。

やはり、中学とは違い昼休みは長く、食堂もあり自動販売機もあり、スマホやお菓子が解禁され、楽しかった。

そんなことを思いつつ、いちごオレを喉に流し込んだ。

すると「なにしてんの?」と優也が声をかけた。

「高校生活慣れたと思って」小梅は優也に目線を移した。

「そうだよな。俺もサッカー楽しいし。小梅はあれから趣味はどう?」「楽しいよ。一人暮らしだから進められるし」小梅は少し微笑み教室へと入っていった。


◇◇◇◇


「今日も一日終わった…」小梅は背伸びをし門まで向かっていた。

『こっち、パス!!』『もっと走れ〜』色んな部活の声が聞こえ、グラウンドに目を向けた。

楽しそうに部活をしている景色を見つめるとため息が漏れた。

「陸上部…続けたかったな…」小梅の呟きは部活の掛け声に消された。


◇◇◇◇


小梅はバスに乗ると空いてる席に座った。

小梅はバスで30分かけて、登下校をしているのだ。

バイトが無い日は、決まって寄る場所があった。

30分位し、バスを下りると少し歩いた。

そして、立ち止まった目の前には大きな和風の豪邸が建っていた。

小梅はインターホンを押すと、中から着物姿の女の人が出てきた。

この家のお手伝いさんだ。

お手伝いさんは小梅を見るなり「千歳様ならこちらへ」と微笑んだ。

「ありがとうございます。」小梅は笑みを返し中に入った。

長い廊下を進み、襖の前で立ち止まった。

「千歳様。小梅様がお見栄になりましたよ」「小梅…入ってきて」中から水のように透き通った可憐な声が聞こえた。

「では、ごゆっくり」お手伝いさんは素早くその場を後にした。

小梅は襖を開け、中に入るとそっと閉じた。

部屋にはお手玉や折り紙やおはじきが転がっていた。

「小梅。やっと来てくれた。」着物姿の千歳は小梅を見るなり嬉しそうに笑った。

千歳は小梅の従兄弟にあたるのだ。

だが、千歳の性別はわからない。

人離れしたような雪のような白い肌に綺麗に整っている顔立ちだ。

女とも言えるが男とも言えるのだ。

年齢は10だ。

病弱であまり外には出ないのだ。

そんな千歳の遊び相手は小梅だった。

小梅は本家の娘なので、千歳の遊び相手と言うには少し違うのかもしれないが。

「その格好。高校の制服じゃ?よう似合っとる。」千歳は興味津々に小梅の制服に触れた。

「そうだよ。1か月前高校に入学したの。だから、会いに来れなかった」「そうか。もう小梅も16じゃな。」「そうだね。」小梅は優しく千歳に微笑んだ。

「小梅、また占ってよいか?また、新しい占い方見つけたんじゃ」「いいよ。千歳はすごいね」小梅は少し笑った。

ちなみに千歳の占いは本当の力だ。

昔なにかがきっかけで手に入れたと話していたが、何を話していたかは覚えていない。

千歳は占うが占いはただのサポートでどうするかは全部占った相手によると言っていた。

そんな占いを小梅は少しばかり興味はあった。


◇◇◇◇


「少し遅くなった〜」千歳と遊び、帰る頃には、7時になっていた。

小梅は急いで買い物を終え、アパートに帰ろうとすると、階段付近である人が目に入り、足を止めた。

その人は小梅に気づくと小梅のそばに駆け寄った。

「小梅!!」気づいたら、強い力で身体が包まれていた。

小梅は「流星りゅうせい兄ちゃん…」と震えた声で呟いた。

「どこ行ってたんだよ?心配したんだぞ?」流星は小梅の肩に手を置いた。小梅は何も言えず俯いた。

流星はため息を吐き「とりあえず、無事でよかった。」と優しく微笑み小梅の頭を撫でた。

小梅は流星を見上げた。

サラサラな黒髪。スラッとした目尻。

綺麗に通った鼻筋。

優しそうな雰囲気が滲み出ていて、お兄さんという感じだ。

実際小梅の実の兄で今年23になる。

あまり構っくれなかった親の代わりに流星は小梅によく構っていた。

「流星兄ちゃん…なにしに来た…の?」小梅は警戒するように流星を見つめた。

小梅はやっと実家を出たのだ。

もし、連れ帰されるようだったらまた逃げないといけない。

そんな小梅に流星は苦笑し「別に、連れて帰ろうなんか思ってないよ。ただ、小梅が元気にしてるか気になった」と安心させるようにもう一度頭を撫でた。

小梅は少し笑い「そっか。」と呟いた。

流星から嘘は感じられなく、小梅は少し安心した。

「ご飯食べていく?」「じゃあ、食べようかな。手伝うよ」流星は小梅が持っていた買い物袋を持った。

「ありがとう。」小梅はふふっと笑い流星とアパートへ入っていった。

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