第5話 近隣住民への聞き込みと新たな手がかり
手がかりが少なく捜査が行き詰まりを見せる中、氷川光一警部と彼のチームは、現場近くの住民への聞き込みを行うことに決めた。建設中の坂城隆士の自宅周辺にはいくつかの民家が点在しており、その一軒一軒を訪ね歩くことにした。
午後の遅い時間、氷川たちは現場から数ブロック離れた住宅地に到着した。氷川は中原淳一警部、田宮晶子、そして芝岡雄三を各々の役割に分担させた。
「中原、君は南側の家々を、田宮は北側の家々を回って住民に話を聞いてくれ。芝岡はここにいて現場の様子を再度確認し、何か見逃しているものがないかを調べてくれ。」氷川は冷静に指示を出した。
中原と田宮はそれぞれの方向に散らばり、氷川も別の家を訪ねることにした。彼は最初に目をつけた家のドアをノックした。ドアを開けたのは、中年の女性だった。
「こんにちは、警察の氷川です。少しお話を伺ってもよろしいでしょうか?」
女性は少し驚いた表情を浮かべたが、すぐに落ち着きを取り戻し、「どうぞ、中に入ってください。」と招き入れた。
リビングに案内された氷川は、女性に質問を始めた。「先日、建設中の坂城隆士さんの家の近くで銃撃事件が発生しました。その夜、何か不審なことを見かけませんでしたか?」
女性は深く考えるように眉をひそめた。「あの夜は、とても静かだったのですが、深夜に何かが起こったようでした。寝ていたところ、何発もの銃声が聞こえてきたんです。とても驚いて、すぐに窓から外を見ましたが、何も見えませんでした。」
氷川は興味深げに女性の言葉に耳を傾けた。「銃声が聞こえた時間帯は覚えていますか?」
「確か、夜中の2時過ぎだったと思います。」女性はそう答えた。
氷川はさらに質問を重ねた。「その前に何か異変を感じたり、不審な人物を見かけたりしませんでしたか?」
女性は再び記憶を探るように考え込んだ。「そういえば、夜遅くに庭でタバコを吸っていた時、隣の家の前で誰かが口論している声が聞こえました。声は大きくて、まるで争っているかのようでした。でも、暗くてよく見えなかったんです。」
氷川はその情報にピンときた。「その声は男性のものでしたか?」
女性はうなずいた。「ええ、二人の男の声でした。そのうちの一人が『お前らには関係ない!』と怒鳴っていました。」
氷川は女性の話を聞き終えると、お礼を言って次の家に向かった。その後、各チームメンバーも戻ってきて、聞き込み結果を共有した。すると、田宮が新たな手がかりを得たことを報告した。
「氷川さん、私が訪ねた家の女性も、深夜に銃声を聞いたと証言しています。そして、その前に誰かが大声で言い争う声も聞こえたと言っていました。」
氷川はその情報に興奮を抑えられなかった。「よし、これで一致する証言が得られた。これを元にさらに調査を進めよう。」
その晩、氷川たちは警察署に戻り、集めた証言を元に再度捜査会議を開いた。芝岡が血液鑑定の結果を報告した。
「氷川さん、信川康介の所持していた財布に付着していた血液が、10年前に殺害された坂城勇次のものと一致しました。」
会議室が一瞬静まり返った後、氷川は決意を新たにした。「これで坂城勇次と信川康介の繋がりが明確になった。信川の殺害は偶然ではなく、計画的なものである可能性が高い。次のステップとして、さらに詳細な調査を行い、犯人を特定するための手がかりを見つける。」
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