第4話 暴力団関係者への聞き込みと須川修也への接触

氷川光一警部は、中原淳一警部、田宮晶子、そして芝岡雄三と共に、都内の暴力団事務所に向かっていた。彼らの目的は、信川康介に関与していたとされる暴力団の幹部、脇永英二とその秘書である九垣庄司に聞き込みを行うことだった。車内で氷川は、過去の事件について再確認しながら中原に指示を出した。


「中原、まず脇永と九垣に接触し、信川康介に関する情報を引き出す。彼らが何も知らないと言ったとしても、必ず何か手がかりを見つけるんだ。」


中原は真剣な表情で頷き、「了解です、氷川さん。脇永と九垣には直接接触するのが一番ですね。」と答えた。


事務所に到着すると、厳重な警備の中、氷川たちは脇永英二と九垣庄司の取り調べ室に案内された。脇永は冷静な表情で、九垣は少し苛立った様子で彼らを迎えた。


氷川が口を開いた。「脇永さん、九垣さん、信川康介について話を伺いたい。彼が最近殺害された件について、何かご存知ですか?」


脇永は目を細め、無表情で答えた。「知らないね。信川が死んだことについても初めて聞いた。私たちは関係ない。」


九垣もすぐに続けた。「我々はその件には一切関与していない。信川がやったことも我々とは無関係だ。しかも信川はもうここを抜けたあの事件以来な」


氷川は二人の態度に苛立ちながらも冷静さを保った。「信川康介が使用した拳銃は、10年前の坂城勇次銃撃事件で使われたものと同じです。これは偶然ではありません。あなた方がその銃について何も知らないと言うのは信じがたい。」


脇永は肩をすくめ、「本当に何も知らない。信川が何をやっていたかなんて、我々には関係ないんだ。」と繰り返した。


九垣も同調するように、「氷川さん、我々を疑うのは結構だが、証拠がないと何も進展しないだろう。」と挑発的に言った。


氷川は諦めず、「これからも聞き込みを続ける。いずれ何か出てくるだろう。必要なら再度訪れる。」


次に向かったのは、衆議院議員の須川修也の事務所だった。須川は信川康介の同期であり、坂城勇次のライバルでもあった。須川の事務所は政界の中心に位置し、警察の訪問に多少の緊張感が漂っていた。


事務所に到着した氷川たちは、須川の秘書に案内され、彼のオフィスに通された。須川修也は書類に目を通しながら氷川たちを迎え入れた。


「何かご用ですか?」須川はにこやかに尋ねた。


氷川は直球で切り出した。「須川さん、信川康介についてお聞きしたい。彼が最近殺害されたことについて、何かご存知ですか?」


須川の顔が一瞬硬直したが、すぐに落ち着きを取り戻した。「信川康介が死んだのですか?それは驚きました。しかし、私は彼とは何の関係もありません。彼が何をしていたかなど、知る由もありません。」


中原が鋭い目つきで質問を重ねた。「10年前、信川が坂城勇次を殺害した事件に関してはどうですか?あなたと坂城勇次はライバルでしたが、信川との関係は?」


須川は深呼吸して答えた。「確かに坂城勇次とはライバル関係でした。しかし、それは政治の世界での話です。信川康介があの事件を起こしたことに関しては、私は全く関与していません。」


田宮が慎重に尋ねた。「信川が使用した拳銃は、坂城勇次銃撃事件で使われたものと同じです。このことについて、何か心当たりはありませんか?」


須川は眉をひそめ、「それは驚きましたが、私には関係のないことです。信川がその拳銃をどこで手に入れたのか、私には分かりません。」と答えた。


氷川は最後に、「須川さん、もし何か思い出すことがあれば、すぐに連絡してください。我々はこの事件の真相を突き止めるために全力を尽くしています。」


須川は黙って頷いた。


事務所を出た氷川たちは、新たな手がかりを得ることなく、次のステップを模索し始めた。信川康介の殺害事件にはまだ多くの謎が残されていたが、氷川は決して諦めることなく真実を追求する覚悟を新たにした。

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