第2話 銃殺体の発見と現場検証
氷川光一警部はデスクの書類に目を通していた。突然、電話が鳴り響いた。中原淳一警部が受話器を取り上げ、顔をしかめた。
「氷川さん、緊急です。建設現場で男の銃殺体が見つかりました。」
氷川はすぐに立ち上がり、手早く部下たちに指示を出した。「全員、準備だ。現場に急行する。」
建設現場に到着すると、ブルーシートが一面に敷かれ、その下からは銃殺された男の遺体が見つかった。氷川は芝岡雄三鑑識に現場検証を任せ、中原と田宮晶子と共に周囲を見渡した。
「芝岡、遺体の状況はどうだ?」氷川が声をかけると、芝岡はブルーシートの下から顔を出し、メモ帳を確認しながら答えた。
「銃で6発撃たれています。死因は即死。年齢は30代前半。身元を確認中ですが、現場で気になるものを見つけました。」
芝岡は手袋をはめた手で、遺体が握りしめていた財布を取り出した。それは奇妙なもので、中身は空っぽで、真ん中に大きな穴が開いていた。
「この財布、どうしてこんな状態なんだろう?」芝岡が訝しげに言う。
氷川はその財布を見つめ、眉をひそめた。「ただの財布ではないな。何かを象徴しているのかもしれない。調べてみよう。」
その時、現場の第一発見者である坂城隆士が近づいてきた。彼は若く、緊張した様子だった。氷川は彼に向かって優しく声をかけた。「坂城隆士さん、少しお話を伺ってもよろしいですか?」
坂城は小さく頷き、氷川たちに続いて歩き始めた。
「坂城さん、この現場で何が起こったのか、詳しく教えてください。」氷川が尋ねると、坂城は少し落ち着きを取り戻し、話し始めた。
「今朝早く、現場を見回りに来たんです。建設中の自宅なので、毎日確認しています。すると、ブルーシートの下から何か不自然なものが見えました。恐る恐るシートをめくると、遺体があったんです。すぐに警察に通報しました。」
「何か不審な人物や出来事に気づいたことは?」中原が尋ねた。
坂城は首を振った。「特にありません。ただ、この辺りは最近騒がしくて、夜になると不審な動きがあるようです。でも、具体的なことは分かりません。」
田宮がメモを取りながら質問を続けた。「被害者について、何か心当たりは?」
「いいえ、全く。遺体を見たのも初めてです。」
氷川は坂城の様子をじっと見つめながら、彼の言葉に偽りがないかを探った。しかし、坂城の表情は真剣で、恐怖と困惑が入り混じっているようだった。
「わかりました、坂城さん。引き続き、何か思い出したことがあれば、すぐに教えてください。」氷川はそう言って坂城に名刺を手渡した。
坂城は深く頭を下げた。「はい、何かあればすぐに連絡します。」
現場検証が進む中、氷川は再び不思議な財布に目を向けた。中原が近づいてきて声をかける。「この財布、本当に気になりますね。単なる偶然とは思えません。」
「そうだ。何か重大な手がかりが隠されているはずだ。」氷川は財布を注意深く観察しながら答えた。「この穴が、事件の鍵を握っているのかもしれない。」
芝岡が現場検証を終え、報告にやってきた。「氷川さん、この現場には他に目立った証拠はありません。しかし、この財布だけは特異なもので、調べる価値がありそうです。」
「了解した。今夜は捜査会議を開いて、全員で情報を共有しよう。」氷川はそう言って、現場を後にした。これからの捜査が、長い夜を迎えることを予感させた。
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