氷川警部の大捜査シリーズ 短編 「穴が空いた財布と疑惑の暴力団」

氷川警部mk

第1話 坂城勇次銃撃事件

坂城勇次は演説台に立ち、観衆に向かって情熱的に訴えていた。「今のままの政治の仕方ではだめです。」「私はみなさんとともに明るい未来を築いていきます」彼の力強い声が広場に響き渡り、聴衆からは拍手と歓声が沸き起こっていた。次期首相候補とまで言われた坂城の演説は、政治的な未来を感じさせるものだった。


その時、群衆の中から若い青年が前に進み出てきた。彼の目には憎しみの炎が宿っていた。


「坂城勇次、覚悟しろ!」青年は叫び、銃を取り出して坂城に向けた。


銃声が鳴り響き、坂城の胸に数発の弾丸が命中した。彼は驚愕の表情を浮かべながら胸を押さえ、ゆっくりと倒れ込んだ。観衆は恐怖に駆られて逃げ惑い、広場は一瞬で混乱の渦に巻き込まれた。


警護の警察官たちは迅速に反応し、青年を取り押さえたが、坂城の体は血に染まり、講演台の上に倒れ込んでいた。すぐに救急車が到着し、坂城は病院へと搬送されたが、その命は救えなかった。


10年後、氷川光一警部は部下の中原淳一警部、田宮晶子女刑事、そして鑑識の芝岡雄三と共に、刑事課の会議室でテレビを見ていた。画面には「坂城勇次銃撃事件から10年」というテロップが映し出され、ニュースキャスターが事件の詳細を振り返っていた。


「もうあれから10年か...」氷川は深い溜息をつきながら呟いた。


「最近も暴力団による事件が増えてますよね。坂城議員が殺された後も、彼らの活動は衰えを知らない。」中原が眉をひそめながら答えた。


田宮が資料をめくりながら付け加える。「昨晩も暴力団の抗争があったばかりです。被害者は一般市民も含まれていて、もう見過ごせません。」


氷川は静かに頷いた。「我々が何とかしなければならない。過去の事件も、現在の状況も、全て繋がっている。今度こそ、決着をつける時が来た。」


その時、中原がふとした表情で話題を変えた。「そういえば、駅前に新しいケーキショップがオープンしたそうですよ。そこのショートケーキが評判らしいです。」


氷川は一瞬驚いた表情を見せた後、微笑んだ。「事件解決の後に、みんなで行ってみるか。」


会話が一段落し、再びテレビ画面に目を向けると、事件のその後が報じられていた。氷川たちはその報道に耳を傾けながら、今後の捜査に向けて気を引き締めた。

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