第3話 女友達は離さない

(帰りたかったが、もう一度椅子に座らされてしまう)


「あっ、その鍵は持って帰っても良いよ。まだまだスペアはあるし」


(スカートのポケットからジャラジャラと鍵を取り出す)


「これがあなたの家の鍵、それでこれが裏口の鍵、あとこの学校に来るまでに使ってる自転車の鍵。もしも無くしたら私に言ってね、持ってるから」


「で、そろそろ信じてくれた? 私があなたの事が大大大大好きなヤンデレだって事」


(首を縦に振るざるを得ない)


「……良かった。それで、これからなんだけど……」


(正面に彼女が立つ)


{1回目は確認、数秒経って2回目は不安、更に数秒経って3回目は怒り}


「わ、私と、つ、付き合って、くれます……よね? ね? ね?」


(しかし、何も言わない)


「も、もしかして……、好きな人がいる? いいえ、そんな筈ない。ずっと見ていたけど、そんな動きはなかった。私が見ていないところで? そんな時は1秒たりともないはず。じゃあ、一体何ですぐ『はい、お願いします』と返事をしてくれないの??? ねぇ、何で???」


(まだ何も言わない)


{どんどん不安になり、焦り、怒るように}


「ほ、本当に好きな人でもいるの? それとも何か理由があるの? 教えて! 教えて! 教えて! あなたに好きな人がいるなら、その人よりも可愛くなるし、何でも言うこと聞くよ! 何か理由があるなら言って! 気に触る事があるなら治すから! ねぇ! ねぇ! ねぇ! ねぇねぇねぇ!!!」


{最後の方、涙声で}


「ねぇ!? どうして何も言ってくれないの!? 好きじゃなかったの!? ヤンデレ!! あなたが好きだったからヤンデレについて調べた!! ヤンデレについて調べたら、いつの間にか自分もヤンデレみたいになってた!! 私は嬉しかった! だって、あなたの好きなタイプになれたと思ったから!! ヤンデレになれば、あなたも私の事が好きになってくれると思ってたから!! ねぇ、私の何がいけないの!? お願いだから、何か喋ってよ!!」


(ようやく口を開く)


「………怖い? 私が!? どうして!? あなたの大好きなヤンデレだよ!? ヤンデレ好きじゃなかったの!? ずっとヤンデレが出てくる本読んでたじゃない!! なのに、どうして!? 私の何がダメなの? 私のどこがダメなの? ねぇ!! 教えてよ!!」


(ずっと好きだったと伝える)


{不意を突かれたように}


「………え? ずっと好きだった……? じゃ、じゃあ、どうして私の事怖いって!?」


「……今の私は怖い。じゃ、じゃあ、いつも通り、普通にすれば、大丈夫だよね? これからも変わらず、放課後この教室に来てくれるよね? ここで一緒に色んな事を語るよね? 大丈夫だよね? 急に辞めるとか、変わったりしないよね? 大丈夫だよね? ね?」


{不安そうに}


「ず、ずっと私の事が好きだったって事は、つ、付き合ってくれるって事だよね? ね?」


(首をぎこちなく縦に振る)


{何事も無かったかのように}


「良かった〜!! 断られたらどうしようかと思ってたよ〜!! 時間も時間だしそろそろ帰ろうか」


(荷物を持ち、教室から出ようとすると)


「早いって、待ってよ!」


(隣に並んでくる)


「はい、手」


(手を差し出してくる)


「手、握って帰りたい。じゃないとヤダ」


(冷や汗でびしょびしょの手を出すと、すぐに手を恋人繋ぎされる)

 

「ふふ、ずっとこうやってして帰ってみたかったんだ!」


(握っている手を少し緩めようとするが、凄まじい力で全く緩まない)


「ん? どうしたの? 私達付き合ってるんだから、これくらい普通だよね? ね?」


{今日一番可愛く}


「絶対に離れないからね!!」

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