第6話 神殺し...

ギギギィという重苦しい音と共に扉が開く。

「不穏な空気というか、重苦しい空気というか、とりあえず長居したくはないと思う程度には禍々しい空気だな。」

結局どんな空気だよ。

扉の先にあった階段を駆け下りていく、アローンたちが降りていくのに合わせて壁の燭台に青い炎が灯っていく。

階段を降りた先には、二本の剣でできた十字架に干からびた「ナニカ」が発光している杭で磔にされいた。

それを目にした瞬間、この邪気の源はコレに違いないと確信した。

「こいつ...これで死んでねぇんだろ?いやぁ...気持ち悪ッ!!」

てっきり会合すれば即戦闘になると思い込み、魔法の準備をしていたがどうやらそういうタイプのやつじゃあないらしい。

ならば、準備だ。普段の戦闘ではまず使うことがない超火力特化型スキル及び魔法。

超火力の代償はタメが必要なこと。たかがタメ数秒でも戦闘中では致命的な隙を晒す。あとは封印の解除方法さえ分かればいいのだが。

「ダメ元で聞くんだが、コレの封印の解除方法ってわかるか?」

「巷で聞いたことあるのは術者が解除魔法唱えればいいって話や、け、ど、神を封印したとなれば神やろうし、神やなかったとしたら術者はとっくのとうにお亡くなりや。」

「そうだな。まあ、絵本とか、伝説通りなら、王道パターンはこの剣を引き抜くとかじゃないか?」

どうしたものか、と悩んでいると

『君〜、あるいは君たち〜、こいつの封印解除方法探してるんじゃあな~い〜?』

「「「は?」」」

なんだこの声。

『簡単だよ~、その剣から引きずり降ろしてごらん?ソイツは直に動き出すよ~。』

ふにゃふにゃした喋り方は置いておいて、剣を引き抜けば封印解除。

「オエン、トューン、これからお前たちに魔法をかける。そして封印解除と同時に大技を叩き込む。初撃でやりきれるとは思っていないが大きなダメージは与えられるはずだ。」

「ラジャー!」「了解。」

「マルチディーサイド、トツカノヤイバ・参、魔力向上、攻力・護力・疾力強化。」

限界突破、不絶光速、動力変更、完全装甲、ハイセンス、アドレナリンラッシュ、それぞれが、必要な自己強化をすませる。

「ほいじゃ、」

「大技一発」

「「行きますか。」」

右にオエン、左にトューン、各々の武器を構え、目の前のナニカに対峙する。

「「我らが正義の名の下に、眼前に立ちふさがりし万物を、裁く!!」」

白銀に輝き出す武器、準備はいいぞとこちらに視線を送る2人。

それを見て頷き、

「光速。」

ナニカへと突進し、十字架の剣を砕く。

ドサッという音と共に、地面に倒れるナニカ。

刹那、ナニカに黒い霧のようなものが集まり、干からびた体に潤いが戻ってくる。

「今だ!!」

「「ジャッジメント!!」」

大槌と大斧によってサンドイッチにされるナニカ、ギチギチと音を立てながら徐々に大斧によってその体は切られていく。

そして、ガコンッ!!と大斧と大槌が衝突する音と共に両断された。

上下に分断され転がるナニカ。

「やったか?なんて言わないぜ。こいつは絶対生きてる。畳み掛けるぞ!!」

勢いそのままに、魔法、打撃、斬撃を浴びせる。

されるがままに蹂躙されるナニカ。

粉微塵になったと思われたナニカ、何もない所から声が聞こてくる。

『寝起きから暴行、なんて無礼な奴らだ!こっちは神様だぞ、何様だ?』

突然の神のものと思われる声にびくっとする三人。

「喋った...。しかも、ヒト語だ。」

『ああ、こっちのほうが聞き馴染みあるか。』

『あー、あー。』声を整えるナニカ。

『やぁ~君たち~、私の封印を解いてくれたのはぁ~君たちかなぁ~?』

この、ふにゃふにゃした喋り方、さっきまで聞こえてたアレか...?!

『自分で音声ガイド作ってたんだよねぇ~、いつか私を起こしに誰かが来るだろうねぇ~とか思ったからさぁ~。』

「悪かったな起こすんじゃなくて、叩き起こしちまったようで。」

オエンが挑発気味に言う。

『本当にぃそうだよぉ~。熱烈な私の信者がぁ~起こしに来てくれたと思ったのにぃ~。』

「残念なことに俺たちが来ちまったという訳か。」

『そうだねぇ。そ、れ、に、私が何の神かを知らないからぁ~、あんな無礼なことができたんだろうねぇ~。』

「封印されてたんだからどうせ悪人、いや邪神の類だろ?なら正義の名の下にお前を排除するまでだ。そこには礼儀もクソもない。」

『そうか。』

次の瞬間、全身を赤い衣類で包んだ男とも女ともとれる人間の形をしたナニカが顕現した。フードのようなものをかぶっていてその顔はよく見えない。

「お前の言葉をそっくり借りよう、我が悪意の下に消えてもらう。」

 消えたッ?!

「遅い。」

次の瞬間アローンの顔面をナニカの腕が貫通する。

「アローン!!」

オエンが声を荒げるが、また次の瞬間、今度はアローンの大鎌がナニカの首を刈り取る。

「古典的な方法だが神も引っかかるもんなんだな。」

デコイを出し自身は透明化、気配遮断等、隠密スキルと隠密魔法の重ねがけにより無と化していたためか神すらも認識が遅れた。

「カタチは人と同じだが、首を切ったごときで死ぬ訳ないd...」

さらに、バッサリとトューンの大斧によってその頭部は分断されるが、

「神が喋ってるだろう。遮るなよ。」

やはり易々と再生してくる。

「止めるぞ。」

「りょ。」

オエンの指示の下トューンが動き始める。

「神様よ~殺れるもんなら殺ってみろ~。」

まさかのスキルではなく、ガチの挑発だ。

「神に挑発とは...先刻の発言といい、愉快な頭してんな。」

まんまと引っかかり突っ込んでいく神。

衝突した瞬間、神の動きが完全に停止する。

よく見てみると、オエンとトューンの時限の刃は白く輝いていた。

衝突の瞬間、トューンは超光速で近づき、オエンが刃を刺すタイミングに完全に合わせて刺した。

速すぎて確認できなかったが、今、魔眼で見た様子だと核のようなものがあるな。俺達人間が魔法を使うための核に似ている。

「心臓部、核のようなものがある。そこを攻撃する。」

レイジで赤く輝く大剣を心臓部に投げつける。意図を理解したのかそれを大槌で打ち込んでいくオエン。裏からはトューンが攻撃している。

「貫け。セイクリッドネイルスピア。」

魔法で顕現させた聖なる槍をさらに心臓に投げつける。あらゆる方向から攻撃されている核だが全く効いていないように見える。

ディーサイドも、トツカノヤイバも効果時間は切れてない。なのになぜ?時が止まっているからか?

「「動き出すぞ!!」」

オエンとトューンがそう言った瞬間ナニカは動き出す、が、核はバラバラに砕けた。

「じ...時限魔法なんてい...つから存在していた...?」

流石の神も時限関連の力が地上にあるとは思っていなかったようだ。

それに時限魔法ではなく、時のエッセンスだ。

さらに、オエンの短剣はアローンたち全員を刺し、トューンの短剣はナニカを刺していた。

自分たちは加速、相手は減速、これでより戦いやすくなる。

—あの挑発野郎に殴りかかった後だ、急に核にダメージを入れられた。体の中を循環させて喰らわないようにしていたのに、だ。それに思考がまとまらない、世界が遅い。いつ時限魔法を使った?クロノスの野郎は人間如きにその力の断片を与えたのか?なんなんだ?このニンゲンども。そもそもこの肉体にダメージが入るのがおかしいだろ?わからない、わからない、わからない。

ああ、うざい。面倒くさい。せっかく起きたと思ったらこれか。苛々するな。

「もういい。お遊びは終わりだ。眠気覚ましのいい運動になった。」

そう言うと、肉体はドロドロと崩壊し、砕けた核は再生される。

何かが来ると警戒し距離を取る三人。一応魔法でつついてみるがびくともしない。

そして核はそのまま膨張し、中からは黒いモヤに包まれたナニカが出てきた。モヤの中は悪魔のような見てくれをしていた。

『ヒトの姿はおしまい。ここからは正真正銘、「悪意の神」としてお前たちの相手をしてやろう。』

姿が変わったとて、やることは同じ。

三人が攻撃に戻ろうとした時だった。

『意志のあるものは誰しもが大なり小なり悪意を持つもの。』

悪意の神がしゃべり始める。

『神でさえも。そして、それを操れる我は誰しもを暴力兵器へ変貌させることができる。増幅させ、悪意の方向を決める。』

ゲラゲラ笑いながら話す神。

『神の癖して争い始めるんだよ。自分こそが至高の神だと。神でさえ操れる俺が、お前たちの悪意を少しでも弄ってみろ?お互いに殺しあうぞ。』

ギャハハと気持ち悪いぐらいに笑う神。そして笑いが収まると

『さあ、悪意よ増幅しろ。』




説明(知っててもry)

悪意の神

神々の悪意を増幅させて遊んでいたところ粛清されそうになった。が、殺そうした神々をことごとく同士討ちさせ逃げ続けていた。相反する神、善意の神が激闘の末封印に成功。この時に善意の神が勝っていなければ世界は崩壊していただろう。

え?こんなんにアローンたち勝てるの?





『さあ、悪意よ増幅しろ。』

そうした発した瞬間、不可触の腕がアローンたちの胸へと迫る。

伸びた腕は彼らの心の中にある、『悪意』を探しているようだ。

少しずつ増幅する黒く醜い感情。

何かを壊したい殺したい無くしたい消したい。

アローンの赤黒い眼光は黒一色へと変色し、オエンたちの青白い眼光は...

何も変わっていなかった。

「そこの元破壊者と、俺達審問官はココのできが違うんだよ!!」

そう言って胸をバンバンと叩くオエン。

うんうんと頷くトューン。

「俺たちが!!ココん中に!!どれだけの正義を抱えて生きてんのか、お前は知らないだろ!!」

「理不尽に奪わせたくない、奪わせない、そうして冒険者として生きてきた。醜い同業者、敵国からきた裏切者をたくさん見てきた。冒険者になってなお、そういうやつらはどうしようもできなかった。」

「そう言う日々を過ごしていると俺達に声がかかった。審問官にならないか?って。」

「奪われそうになった時、奪われたときにすがられる冒険者が、どうして依頼主を裏切れようか。そんなことはあってはならない。」

「そうやって、悪意を持って人と関わるものを消したきたのが俺達。」

「俺たちが悪意を持って生きてどうする?」

「0に何をかけたって0。悪意が0の俺達にそんなちんけな術が効くと思うな。」

淡々と語る2人。

「それに、お前もだ。アローン。」

「心入れ替えたんじゃねぇのか!!冒険者として生きていくんじゃねぇのか?正義の味方するんじゃねぇのか?」

「こんなところで悪意に溺れるような器なのか。」

『ああ、盛り上がってるところ悪いが、この程度の術が効かなかったぐらいで我に勝てん。残念だが、効く効かないなど正直どうでもいい。』

—何も聞こえない。何も見えない。ただただ感じるあの時と同じ破壊衝動。

かろうじて抑え込むがオエンたちに攻撃しないようにするだけで精一杯。

溺れるのか?身を任せるのか?抗わないのか?ダメだよな。甘えだ。反抗しろ。自分で決めたことに責任を持て。こんなところで溺れるな、沈むな。落ち着け、落ち着け、落ち着け!!

「あいつ、動かないな。」

「そうやな。あいつなりに抗ってんねやろ。」

「ここは俺達で耐え忍ぶしかない、兄者。」

「俺が護る。お前が攻めろ。」

「らじゃ。」

「シールド!!」「かーらのープロテクション!!」

生成したシールドを両手で持ち、目の前には護力によって生成された防護壁が。完全防御態勢をとるアローン。

光のように飛び出すトューン。

『しょうもない。その程度でどうにかできるとでも。』

まさか、この程度で終わるわけがない。

透明化、分身。

自身は透明化し、分身を10体生成。

分身で誤魔化している間に奇襲といったところか?

『透明化したとして、殺意なるもんが隠れていなければ意味はない。』

無に向けて、悪意のエネルギーで作った魔弾を撃ち込む。

「そうくるよな。」

形態が変わって核の場所が嫌でも分かるほどの強い力を感じる。どこに刺せばいいか分かる。力を開放したからこそ、今回は核にダメージが入ると分かる。

分身体の一つが急に動きを変え、神の核に向けて刃を突き立てようとする。

透明化させた分身に殺意を載せるなど、基本中の基本。

完全に俺たちのこと舐めてるな。

完全なる死角、ノーガード。ダメージが入らない訳もなく、背中から突き立てられて短剣によって核に傷が入る。

分身、透明、気配遮断、殺意の分散

この四つを駆使し神を翻弄するトューン。決定打にこそなりえないが、主火力であるアローンの復活までの時間稼ぎには十分。

悪意の神なだけあって苛々としているのがオーラとして出てきている。

ちまちま攻撃されるとイラッとくるんだろうな。

わかりやすい貯めの動作、推測...範囲攻撃。

「俺の後ろだ!!」

颯爽とトューンはオエンの後ろの隠れる。

地面がぐらぐらと揺れ高エネルギー体が神を中心に発生する。

「レジスト-マジック。」「鉄壁。」「聖なる障壁。」「そして、気合。」

エネルギー体が収束した次の瞬間、悪意に満ちたエネルギー体が神を中心に、球状に広がる。

「重い!!重い!!重すぎる...。ウォォォォ!!耐えろ!!俺ぇぇぇぇぇ!!」

じりじりと踏ん張っている足がすべり始め、衝撃を受けている盾も砕けそうになっている。

「クソッ!!割れる!!セカンダリーシールド!!」

もう一枚のシールドを生成し重ねるが、セカンダリーは強度が低い。

「チクショー、紙装甲じゃねぇか...。」

ッ!!

「トューン、レイジ短剣をシールドに...」

片手でなんとかして盾を持ち、短剣を取り出す。

「せーのっ。」

カンッという音とともに盾の時が止まった。いや、崩壊が止まった。依然としてオエンが構えていないと押される。それに、物質ではなく、護力によって生成されたものだ、停止時間はあまり期待できない。

「長いし重い、もってもあと20数秒だぞ?!いつまで続くんだ?」

オエンの顔はいつになく真剣かつ焦っている。

「おいアローン、兄者が頑張ってんだ。早く帰ってこい。」

べしべしとアローンの肩をたたくトューン。

「いい加減帰ってこい!!死ぬぞ!!」

普段はしずかなのに声を荒げる。緊急事態なのだ。

それでも、虚ろな瞳で立ち尽くしているアローン。

「マリオネットでも使えれば、操作して結界でも障壁でも張れるんだが...。」

—目の前、真っ赤?光ってる?人?オエン、盾、トューン、肩叩く。

戦闘中?俺は?何をしてる。

「もう持たない。死ぬ。アニメ完結まで見てないのに!」

「死ぬ前の言葉がアニメふざけてるだろ。」

軽口を叩くものの、その顔は苦悶の表情が。

「ああ、クソ!!」

止めたはずの盾は崩壊を再開し、オエンの腕は限界を迎え、光が三人を包むところだった。

「マギア-アンチ。」

目の前からエネルギー体は消滅した。

「すまない。少し精神攻撃を喰らったようだ。」

周りを見渡してみると自分たちの足元を除いて地面が削られていた。

『凌いだか。なかなかやるな。どうやらニンゲンを見くびっていたみたいだ。』

そういうと亜空間から謎の得物を取り出し、アローンたちに切りかかる。

高速よりも数段速い。超光速でやっとついていけるレベル。霊妙なる治癒を使い回復させたが、オエンには少しクールタイムが必要。

動力変換してなおこれなのだかトューンはよけるだけで精一杯だろう。

マナで治癒魔法を常時発動させて疑似的な無敵状態を作る。

回復するなら護力は不要。魔力、攻力、疾力の三点特化。

攻撃スキルの多用、攻撃魔法の多用。

手数で押し込む。

悪意にならセイクリッド系が効くはず。

無詠唱でセイクリッド系の魔法を乱発しながら、ディーサイド、トツカノヤイバを乗っけた刃で切る、切る、切る。

神の武器なだけあって、打ち合っても全く壊れる気配はない。なんならこちらの方が壊れてきている。

急に大鎌の柄を外したかと思うとそこに大剣を刺した。

先端は大鎌の刃が付き、柄以外の部分は大剣の刃。それに加えてアローンによる両手持ち。威力は申し分ない。

おまけにレイジだ、ドラゴンと吸血鬼のエッセンスが混ざり合い、アローンの眼光のように赤黒く輝き始める。

神の返り血だ、斬撃性能の上昇は著しいに決まっている。

天罰スカージ。」

天より現れた剣が振り下ろされるかのように、強力な斬撃が神を襲う。

轟音と衝撃で地面がカタカタと揺れる。

『さすがに...これは重いな。そもそもスカージなんてどこで覚えた。』

斬首ギロチン

なんだ、急に視界が?あれは我の体?

首が吹っ飛んでるのか?どうすればニンゲン如きがそこまでの力を出せる?

「俺たちが介入できる隙はなさそうだな。動力変換を習得しないとどうしようもない。それより大丈夫か兄者。」

「砕けそうだった。危なかった。まだまだ鍛錬が必要だなと思った。結局元破壊者に頼っちまった。」

「そんなん言ったらディーサイドとかの時点でアウトやった。気にするな。」

「せか。」

「「あ、首が吹き飛んでる。」」

「胴体や、核は!!」

どっちから生える?頭から?核があるなら普通そっちから。神は規格外、想定外、常識外。

俺からの距離を計算するに、近いのは胴体、となると頭から生えるのか。

だとすれば、生えた瞬間に核が移動するのか。

『答えは両方だ。』

神は分裂した。頭から再生と胴体から再生。核の反応が二体の間を行ったり来たりしている。

『見るからにあの二人、実力不足。』

『本当に雑魚すぎるね☆ついて来れてないもん。』

『となれば、二対一で確実にお前を殺せる。』

人格が渋滞してるな。二体に分かれたからか。

といってもさっきの状態を基準に7割ほどの実力に下がっている。さすがに制約なしでの分裂は神でもできないか。

それでも厳しいのは事実。

あいつら二人はマギアを知ってる、次元界を知っている。動力変更さえできればついてこれる。

「感じろ!次元界を、マギアを。お前たちに動力変換を無理矢理刷り込んだ。一度使えば体が順応する。失敗すれば死ぬ。だが、限界突破・改を使っていればできるはずだ。」

「こうなりゃもう、一か八かだ。かますぞ。」

「らじゃ。」

動力変換...、ニンゲンの愚かな挑戦で、つい最近まで誰も使っていなかっただろうに、こいつら本当にニンゲンなのか?

1人は対価と代償臭い、二人はクロノスと絶対につながっている。


説明(知らなry)

何か不明点あれば教えてくれるとここに説明、書きます。

矛盾あれば指摘してくれるとありがたいです。直すor無理やり成立させます。





説明(知らなry)

 前回の動力変換刷り込みというのは、アローンさんの魔法ですね。自分の使えるスキルを他人も使えるようにするための魔法です。一般的な武技から、限界突破のようなものまで、付与する側がスキルについて十分理解していればできます。

ただ、使える人はほとんどいない。ずるいんだよ、アローンさんは!!


 分裂に力を使った代償か攻撃を仕掛けてこない神。動力変換を起動するには十分な猶予がある。

「つっても動力変換ってどうやるんだよ?!」

「まあ、待て少ししたら分かる。」

瞬間オエンとトューンの頭に流れてくる動力変換の概要。

「なるほど。これは限られた人間にしか使えないな。」

「前提条件が限界突破・改だもんな。」

 

 今さら不安などない。神に挑むのだから今さらどうってことはない。それに頼れる弟もいる。

 

 今さら恐怖などない。兄について行くと決めたから。それに、頼れる仲間がもう一人いる。


「「限界突破・改オーバーリミット・セカンド」」

さらにみなぎる力。

「「さあ、行くぞ!!」」

気合を込めて詠唱を始める。

「「我が世界と異なる世界、我が力と異なる力、我が動力と異なる動力、我とは異なる生物...次元界生物、自然界を超越せし彼の者の力を我に...。『動力変換・マギア』。」」

青白いオーラを発する2人、それを眺めキュクロプスとの戦いを思い出すアローン。

「「....ッ!!」」

激痛と共に生まれ変わる身体。その先にあるのは人間の域を逸脱する力。

「よしっ!行けるぞ!」

「俺も。」

新たな力を手にし思わず笑みがこぼれる2人。

都合のいいことに相手も丁度よく準備が整ったらしい。

「俺は一人でも片方の相手はできる。おまけにさっきの七割ほどの力しか感じない。」

「つーことは俺達天才兄弟は二人で一体の相手をすればいいってことやな。」

テレパシー発動。

『核が二体間を行ったり来たりしてる。お前たちが時を止めてくれれば、おそらくだが核の動きは止まると思う。そこを俺が畳み掛ける。』

『オーケーオーケー。あくまで、お前が主軸な。』

『あのバカそうなほうを俺が、賢そうな方をお前らで頼む。』

二手に分かれて行動。

「なんか小細工してるみたいだけど私らには敵わないからね☆」

男とも女とも取れない見た目は依然として変わらないが、喋り方、行動の仕方で判別はできる。

不絶光速を起動し攻める。

「人知を超えた力か知らないけど、あんまり神を舐めないでもらいたいね。」

そういうと、神の片割れは魔法の弾幕を浴びせながら創造した槍を構え攻めてくる。

魔法防御をしながら、近接戦となると脳のリソースが持たないな。

ならば、

「不絶、霊妙なる治癒・マナ。」

フルオートで回復をかければいい。

大抵の攻撃は鎧を貫通するほどの力はないが、衝撃一発一発で体制を崩される。

だが、それは相手も同じ。

「マルチエストセイクリッドバラージ。」

こちらも弾幕を仕掛ければいい。

弾幕対弾幕、その中で巻き起こる戦闘。

大剣鎌ソードサイザーを手足のように操り果敢に攻めていくが、イマイチ相手を捉えきれない。

軽そうに見えるあの槍になにか、特殊な力が備わっているのか...。

鑑定スキルを使っても出てくる文字は???だけ。

予想にはなるが、未知の武器アーケインウェポンなのかもしれないな。

「さあさあ、もっと盛り上げていこうよ~!!」

ギアが一段上がった。先刻よりも速い。だが、余裕で反応可能。

ガキッガキンとひたすらに鳴り響く金属音。

天罰スカージ

叩き込まれる、必殺の攻撃。

流石にいなせなかったのか、槍の柄で攻撃を止めようとする。

確かに大剣は止められた、だがアローンの武器は大剣鎌だ。

大剣の刃こそ、受け止められたが

ズシャッ

と、鎌の部分が脳天を貫く。

カハッっとかすれた声を上げ怯む片割れ、腹へ蹴りをお見舞いし、倒れたところを大剣鎌で八つ裂きにする。

鬼の速度で再生するが、お構いなし。治ったところから切り裂く。

「この、ニンゲン風情ガァァァァ!!」

叫んだところで無駄。無慈悲に切り裂き続ける。

胴体から再生していたが、急に再生が止まった。次はなにがどっからくる?

分裂したのを元に戻すのか、肉体を必要としない何かがあるのか?

「アーケイン・ペネトレイト。」

ッ?!後ろ!

後ろから声が聞こえたかと思えば、そこには刺突の構えをした片割れが。

間に合う訳もなく、背中から見事に槍が貫通した。

こいつ、飛び散った血から再生しやがった。クソ、抜けていた。

「これはチェックメイトってやつじゃないかな☆」

片割れは槍を引き抜こうとするが、

あれ?抜けない?どうして?

「お前の武器、貰おうか。」

アローンは槍の貫通した部分を掴んでいた。

「ウラァァァァ!!」

あろうことか、それを自分の手で引き抜く。

青白い血がぼたぼたと垂れるが。心配ご無用。霊妙なる治癒にて一気に回復していく。


—一方オエンチーム。

「アドレナリンドバドバでいくぜ!!」

「兄者、あんまし調子に乗るなよ。」

オエンが護者、トューン攻者...ではない。

今回に限り、

「俺も攻者だぜ!」

トューンが駆けまわり、それを追いかける形になる片割れ。

「チャージ!!」

何かを貯めるオエン。

そしてそこに突っ込んくるトューン、

「からの~、インパクト!!」

鮮やかに宙返りをするトューン、そしてその後ろ追う片割れに、大槌が

バコォォンとヒットする。

玩具の如くゴロゴロと転がっていく片割れ。

そして、暇を与えずにトューンが詰める。そこに

「グラップル。」

魔法で構成された縄をつなぎトューンの加速力を借りてオエンも詰める。

「「我らが正義の名の下に、眼前に立ちふさがりし万物を、裁く!!」」

タイミングを合わせて、

「「ジャッジメント!!」」

吹き飛んだ片割れに必殺の一撃をお見舞いする。

トューンの加速力を借りたオエンの火力はいつも以上に跳ね上がり、

ドゴォォォンという轟音と共にとてつもない衝撃波が走る。

大斧と大槌、二つの超重量級武器によってぐちゃぐちゃにへちゃげた片割れ。

「動力変換は想像よりも厄介だな。」

やはり、即刻再生される。

「まあ、一筋縄ではいかないデスヨネー。」

いつも通りのお調子者ムーブを始めるオエン。

「あまり神を舐めるなよ?」

苛っときているのかな?

「舐めないよ、だってまずそうじゃん?」

追い打ちの挑発をする。

さあこいと言わんばかりにどっしりと構える。

「正面から受ける気か?おもしろい、耐えれるものなら耐えてみろ!」

「カウンター・カウンター...スタート。」

オエンはカウンターのために構えをとる。

片割れが無から生成したのは一振りの刀。どんな性質を持ち合わせているかは不明。


先ほどの戦いを見たところ、こいつは護者。ならば護力が高いほど攻撃が通るような性質を持たせればいい。


「神・一閃。」

瞬く間にオエンを一閃して通過すると思われた片割れだったが、

なに?!


動力変換のお陰か、キリキリと音を立て競り合えている。

「カウンター・カウンター...エンド。」

どんな技でカウンターをするのか?と警戒して距離を取ろうとする片割れを、

「GRAP!!からの、背負い投げ!!」

オエンが背負い投げをする—トューンはこの機会を淡々と待っていた。

オエンの後方へと移動し、振り落とされる肉体へ大斧で一撃を加える。

そして、そのまま斧ごと地面に打ち込み、

「ぶちかますぜハンマー!!」

その上からオエンが回収した大槌を使って完全に地面に打ち込む。

ここで、短剣のレイジを発動。

完全に片割れを捉え、

「「せーのっ。」」

と同時に短剣を突き立てる。瞬間、片割れの時が止まる。

分裂したことを考慮すると、停止時間は先ほどよりも長くなる。

ということは、アローンの助太刀に行ける。

こちらの片割れに核の反応がということは、核持ちはアローン側。

アローンの方を見ると。

「「嘘...だろ。」」

背中から槍で突き刺されているのが見えた。そんなはずはないと二度見するがやはり、突き刺されている。

だが様子がおかしい。

「マジかよアイツ。気が狂ってるな。」

「ほんと、どっちが悪党かわかんないよ。」

槍を引き抜く姿を見てドン引きする2人。ササっと切り替え加勢のためアローンの下へ向かう。


 さあ、仕返しだ。

大剣鎌と槍を構え片割れへ襲い掛かる。

「もう一本ぐらい武器は出せないのか?」

純粋な疑問。これだけの力がありながらあんな槍一本で済むわけがない。

「出せるんならとっくのとうに出してるよーだ!!」

これはブラフというやつだな。

「その喋り方どうにかなんないのか。」

『どうにもならないやろ。』

『正直うざい。』

テレパシー...。

『終わったのか?』

『一応止めてきた。そっちに核があると思う。』

そして駆けつける2人。

「うわっ、2人増えたじゃん。ということは向こう側は負けたってワケ?ふざけんなよ!!」

なんというか、この情緒不安定感は一昔前の自分を思い出すな。

核はこちら側確定。だが、最初の攻撃で核はバラバラに砕けたはずなのにピンピンしていた。ならばどうすればいい?確実に核にダメージを入れていく必要があるが、特にこれといった方法はない。

『俺の予想だが、核にダメージは入ってる。おそらく損傷した核の破片のどれかから「核を再生」したんだろう。まさしく神の御業ってやつだな。』

『ということは、砕いたところにレーザー系統の魔法を照射して、再生する前に焼き尽くせばいいということか。』

『まあ、今出せる解の中では最適だろう。』

方針は固まった。1対3。完全に有利だが気は抜くな。落ち着いて、丁寧に対処していけ、焦るな、二人もついてる、焦るな、落ち着け。よし。

『さあ、ラスト気合入れてくぞ~!!』


説明v2

悪意の神

 神は人間界に堕ちると弱体化がかかる。もし天界でアローンたちが悪意の神と戦ったとすると、9割ぐらいの確率で負けます。寝起き且つ、封印されていた神なので、ぶっちゃけこの状態だと悪意の神は神の中じゃ雑魚です。それでも悪意を増幅できる点は強いですね。まあ、彼らには効かなかったのでご愁傷さまです。

人格について

 神として威厳のある姿であろうとする人格(対オエン、トューンの片割れ)と、悪意の神らしい、悪いことしてニヤニヤしたい子供じみた人格(対アローンの片割れ)とが共存してます。





 神の核を焼き尽くすとすれば、並大抵の魔力じゃあ話にならない。極振り且つマギア、これは最低条件だ。さらにそこへ緻密な魔法操作によって限界まで密度を高めたレーザーをぶち込む必要がある。

だがまあ、二人の援護があれば容易、押し切るだけ...だったはずなのに、

「限界突破・神。」

ニタニタ笑いながら神が発動したのは、まさかの限界突破。

「これで、お前ら全滅だな。」

『マジか?!ここに来てこれかよ...。さすがに厳しいな。』

流石の三人も背筋が凍る。

『でも、逃げるわけにもいかない、というかそもそも逃げれんし。』

瞬間、神は動き出す、分裂前の状態よりも数段速い。

だが、動力変換、次元の刃のお陰もあってか、ついて行けないレベルではない。といっても余裕があるわけではもちろんなく、紙一重で致命傷をかわすのが精一杯。

まともに打ち合えば押し負ける。核を狙ってもやはり再生される。

魔法で焼き付きしたい。だが、

『魔力極振りは厳しいな。この調子じゃ疾力に割くリソースが大きすぎる。』

被弾をしようと思えば疾力は削れない。

もともと硬いオエンは喰らっても大したダメージはない様子。トューンも今は俺より速いから、あまり被弾していない。

これじゃあただの器用貧乏だ。

俺の装備している鎧は度重なる被弾でもうすぐ限界、となれば必然的にダメージも増え回復に回すマナが枯渇するのも時間の問題。ジリ貧だ。相手の魔力はどれだけ持つ?神なら無限大なのか?

時間がないなら、無理やりにでも押し通すしかない。マナにオドを追加して回復速度と精度を上げる。

喰らいながらも詠唱を続けろ、腕が飛んだって、足が飛んだって再生できる。被弾を恐れるな。俺は腐者ゾンビ、そう思い込め。痛みを無視しろ、ただひたすらに詠唱に集中しろ。

『無理矢理だが、詠唱魔法を撃ち込む。誘導及び、囮を頼む。』

『防御と回避はどうすんだよ?』

『問題ない、すべて回復魔法で治す。』

『もうどうなっても知らねぇからなコノヤロー!!囮は任せとけ!!』

神の前に立ちふさがる漢。覚悟を決め、すべての攻撃を耐えてやろうと意気込む。


詠唱を始めるアローン。

「信頼の失墜、」


「まずはお前か?三下。」

「三下とは失礼、生憎サイコロの目は4以上しか出たことないんですわ~。もっともこれからのすんのは命を賭けた大博打だがな!」

ニャハハハ!と笑うオエン、そして武器を投げ捨てたと思えば、突如現れたトューン

の光速に捕まり、一気に間合いを詰める。


「孤独からの逃走、」


「要は、殴るのは魔法の前、それまでは捕まえ解きゃいいんだろう?」

そう叫ぶと後ろからとびかかり、後ろから腕を回し拘束する。


「愛情への激欲げきよく、」


振りほどこうとする神だが、気合の入ったオエンは強い。歯を食いしばり、死んでも離さないといった具合で抱きしめるような形で抑える。

こうやって近くで抑えていれば範囲魔法は自分を巻き込むだろうから使えまい。

万一自損覚悟で使われようと、そのレベルの攻撃ならアイツの回復魔法で乗り切れるはず。


「感情の欠落、」


「どうだ、俺からの熱い抱擁は?」

ここでも挑発はかかさず行う。

「今までにないくらい不快だな!」

「さあ、何本まで耐えられるかな?」

そう言うと何本もの剣を生成し一本ずつオエンに突き立てていく。


「血に染まりし暴徒、」


グサッ、グサッと一本一本深く突き刺さっていく。

「流石に厳しいが、そんなもんで離すほどやわじゃないぜ。」

これでいい、このままこっちの流れに乗せ続けろ。奴の精神は思ったよりガキだ、こ

んな挑発で留められるなら安いもんだぜ。


「狂乱を乗り越え、冴え返る眼光、」


さあ、そろそろだ。

「トューン!火力は任せた!俺ごとやっちまえ!!」

「了解した!」

光速で突っ込みトューンは兄の言葉を信じ、神へと大斧を振り下ろす。オエンにより拘束された神には完璧に攻撃が入る。

怯んだな?

「さっきの剣(件)のお返しじゃあ!!」

自分の体に刺さった剣を引き抜きひたすらに核のある部分に突き立てる。


「闇より出でたるは一筋の光、」


いよいよ核が露出する。が、

「こんなところで我が終わる訳がなかろう!」

悪意のエネルギーによる衝撃波でトューンはおろかオエンすらも吹き飛ばされる。

「さっきからそこでコソコソ貯めてんのはバレてんだよ!」


氷々ひょうひょうと、飄々と、己が道を邁進まいしんせよ。」


魔弾で腕が吹き飛ぶ、腹に穴が開く、足が欠損する、だが詠唱は止めない。

そしてついに、神の刃がアローンを貫く。

だが、アローンに集中しすぎたのが運の尽きだ。

「「後ろがお留守だろ!!」」

核だけに集中した攻撃で、再び核を砕く。

「ニンゲンの分際で!!」

怒りのあまり神が振り返るがそこに2人はいない。

その後ろでは

「立ちふさがる障害よ、灰燼と化せ。」

右手を天へと掲げるアローンが立っていた。手のひらには謎の魔法陣。

罪火ざいか。」

足元より超高密度のマギアによって生まれた火柱が神の核を捉える。

端から端から徐々に融解し消失していく核。

「熱い、熱い、熱い。なぜ消えない?なぜ再生しない?たかが人間の魔法だぞ?」

「熱い、熱い、熱い。なぜ消えない?なぜ生きている?俺の最高レベルの魔法だぞ?」

長時間発動し続けるには魔力消費がデカすぎる。

次元界からひっぱってこれるから枯渇はしないが、媒介している俺の体がもたない...。

「燃え尽きろォォォォ!!」

「こんなところでェェェェ!!」


「あっつ。こんなんあんな近く追ったら焼け死ぬで?」

「ほんまな。というかここは俺らの出る幕やないな。」

「せやな。魔力ステはクソやし、ただただ見守ることしかできんねんな。」

端の方でアローンを見守る2人。その造反者に向ける瞳は、アローンの呪いが発動しているとは思えないほどに、元破壊者に向けるとは思えないほどに、輝いていた。


「「こいつ、しぶとい。」」

どれくらい経っただろうか、数秒な気もするし数十秒のような気もする。

ついに、神の核の最後の一片が...

灰燼となった。

もちろん、悪意の神だ。簡単にやられてくれるわけがない。

何かしら魔法を残して散ったに違いない。だから、

「一旦逃げるぞ!」

「ラジャー!!」

「りょ。」

三人は一目散に入ってきた扉へ走る。

「扉が、開かない。」

「任せとけ!超スーパーウルトラー!フツーのタックル!」

といいながら大槌で扉を粉砕する。タックルとは?とはいえ、道は開けた。

長い階段を上り、念のため障壁を張って待機する。

「何も起こらないな。」

「ですな~。」「やな。」

『お~?ここに戻って来たってことは僕を倒したのかな~?どうせ死んだ後になんかあると思ってここまで走ってきたんでしょ~?ギャハハハ、そんなもなありませんよーだ!』

苛。

...。

「え?これで終わりってマジ?!」

「そのようだな。」

「アイツ、あんだけ自信満々でいて、自分が死んだとき用の煽りまで遺してるとかどんな奴だよ。」

「そりゃあ、こんな奴さ!」

???

ギギギとカクカクの動きで後ろ振り向くと、人が立っていた。黒髪、赤眼、長いようで短い髪、性別がどちらともとれる体躯、おまけに声まで中性的ときた。先ほどの神と同じ雰囲気を感じる。が、強さや威圧感というものはない。

「人間に戻っちゃったね。いや~本当封印解かれたかと思ったら即死亡。我ながら笑えるね。おおっと刃を向けるのは止めておくれよ。次死んだらガチで死ぬから。」

状況が全く飲み込めない。

「どういうことだ?」

「まあ、そのうちわかるんじゃない?」

そう言って早々に立ち去ろうとする元神。

「まさか、そのまま帰すとでも?」

「デ..デスヨネー。」

元神が言ったことをまとめるとこうだ。

神には元から神だったもの、人間がなったものとの二種類がいるということを。

後者に関しては、神から核を渡され神になった者と、ある物事の極致へとたどり着いたものが極稀にその物事を象徴する神になると言ったものだった。コイツの場合は前者だった。といっても性格の悪さは悪意の神さながらだったらしい。というかそうだったから核を渡されたらしい。で、それが消失したから人間に戻ってしまった、ということらしい。

「いや~、まさかたった三人の人間に負けるとは思わなかったよ~。まあ僕が舐めプしすぎてのもあるけどね。それに、人間から神になった僕、しかも悪意とかいう信仰してるような人が少ないような概念を司ってる僕。神の中では最弱クラス。神々と僕の相性が良かっただけで、僕単体の性能は全く高くない。」

「要は、お前に勝ったごときで調子に乗るなと?」

「そそ、ソユコトー。話早くて助かる~。」

とまあ、なんだかんだで神を殺した?一行であった。


「こいつをどうするのかはお前たち審問官に任せる。」

「個人的にはぶち殺してやりたいが、まあ何かの役に立つだろうし俺達が見張っておくよ。」

「そうか。」

「んじゃあまあ、帰りますか~。」

待て待てとトューンがオエンの肩を掴む。

「神がいたところ、なんかあるかもしれないだろ。」

「ああ~忘れてた~。というかこいつに聞けばよくね?」

ちらっと元神の方を向く。

「いや、なにもないよ~?ホントニ...」

「こりゃあなんか隠してるやつだ。」

「二人で回収に行ってくれ。俺は元神コイツと話がある。」

オッケーというとオエンとトューンは先ほどの戦場へ降りて行った。

「なんだい、話っていうのは?」

こちらの顔を覗き込んで問うてくる。

「お前は、対価と代償の神を知っているか?」

「もちろん。でそれがどうかしたの?」

明らかに顔がニヤニヤしている。

「分かってて言っているのだろう?」

「まあね。最初は驚いたよ、失われたはずの魔法からスキル、君はなんでも使えた。明らかに普通の人間じゃない。それこそ弱いとはいえ地上に顕現した神に匹敵するほどに。君は選ばれたんだよ、対価と代償に。君からはあいつと同じ匂いがする。言ってしまえば対価と代償臭いってこと。さっきの審問官だっけ?あの二人は時限の神臭かった。まあ、彼らの場合あの忌々しい一対の短剣せいだと思うけどね。」

「アイツはどこにいる。」

怒りが沸々と沸いてくる。自分が力を望んだ代償であると分かっていても無性に腹が立つ。

「さあ、知らないよ。君たちが起こしてくれるまで僕は寝ていたようなものだしね。」

「そうか。」

その後はディーサイドやら罪火やらの話をさせられた。

そうこうしているとオエンたちが戻ってきた。

「いやいや~まさかの収穫ゼロ。ガチでなんもなかったわ~。」

「なんも、ではないだろ。一応こんなのがあった。」

トューンが差し出したものは、神を殺した証明だった。神が死んだときにできると言われている指輪。人類で神を殺した者はおらず、神同士での戦いを観測したものが発見した情報だから定かではないがおそらくそうだ。

「これを持って帰ってお前の手柄にすれば、多分だがプレデター級まで一気に昇格だ。」

「そうか。」

ここで緊張の糸が切れ、一行は地面に座り込んでしまった。

ここからが地獄だ。限界突破の活動限界を超えて動き続けた代償が待っている。

キュクロプス戦よりも長かったのに損傷が少ないのは、体が順応しているからだろうか...。

さて、帰ろうとは思ったが、そう易々と帰れそうもない。

「さすがに、今晩はここで休んで帰ることにしますか~。」

「りょ。」

「わかった。」

「え?僕先に帰っていい?」

そそくさとここから離れようとするが、

「「俺たちが許すとでも?」」

オエンとトューンの視線にやられ大人しくなった。




説明ry

神が地上に顕現する場合、肉体が必ず必要となる。正確には核とそれを取り巻く体が必要となる。

核を壊される前に天界に帰ることもできなくはいが、帰るためには多少準備がいるので今回のような場合は不可能である。

核が抜けたことにより、ちょっと丸くなったね、元神。



厨二感出したかったけど、やっぱ難しいっすね。

信頼の失墜。孤独からの逃走。愛情への激欲。感情の欠落。血に染まりし暴徒。狂乱を乗り越え、冴え返る眼光。闇より出でたるは一筋の光。氷々と、飄々と、己が道を邁進せよ。

罪火。

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空虚な強者(通常版) サクリファイス @raurua

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