間話 対価と代償
「対価と代償」それはいかなるものにもついて回る普遍の原理である。
「この世に存在するすべての力が使える代わりにたった1人からしか愛されなくなる」この対価と代償の関係は一見、代償が見合っていないようにも思われる。なぜ彼はこんな代償でこんな対価を得たのか。答えは簡単である。彼にとって何よりも重要だったのは「愛される」ことであり「戦う力」はその手段の一つであった。もし仮に、別の方法で愛されることが可能だったのならその力もきっと望んだだろう。たとえそれに「愛されない」以外のどんな代償があったとしても。それほどに愛を欲していた。
人間は望むもののために力を欲し、その代償は望むもの以外なら何でも払うという。
だが、神はそれを許さない。望みを叶えるための力を渡しておいて、その代償はその望みを叶えられなくするものにする。生物を絶望させるのは楽しいからだ。趣味の悪いやつは完全に望みを叶えられないようにせず、蜘蛛の糸のようにか細い望みを残し、見にくく足掻くのを見て楽しむものもいる。
対価と代償の神はこの「遊び」が大好きだ。他の神もこの「遊び」をすることもあるが、対価と代償の神よりはマシだ。そして奴の被害者はアローンだけではない。
ある女はこの世のすべての美食を欲した。それを買う財力を神より授けられた、だが女は味覚を奪われた。なにを食べても味はしない。使う当てのなくなった金は彼女にとってゴミ同然であった。
ある男はある女に恋をした。なにがなんでも妻にしたいと望んだその男は、優れた容姿、優れた頭脳、優れた身体能力を得た。男は誰もが羨むな存在になった。だがその代償はその女に嫌われることだった。そうなれば、そんなものはゴミ同然であった。
ある者は誰よりも強くなることを望んだ。ステータスをこの世の誰よりも高くされた。だがその者は寿命を奪われた。誰よりも強い力があろうとそれを顕示する前に死ねばその望みは叶えられない。その力はゴミ同然であった。
代償によっては他のことに対価を使うこともできると思うだろうだろう。しかし、彼彼女らにとっては望みは全てであり、それがなければ生きていく意味はないと思うほどだ。神はそれほどに一つのことに執着する者の前にしか現れない。
善良な神はいるが神の中ではたった一握りにすぎない。四大国家、攻の国、守護の国、疾の国、魔法の国の四神...善良であるが故多くの生物に信仰されている。血の国、暴虐の国の二神はなぜ信仰されているのか、それは国民たちにもわかっていない。ただ生まれたときから当たり前に信仰してきた、それだけである。ひどい代償がないのは破壊者たちが供物を捧げているから、それだけは確かである。
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