第8話 「謎の男 その②」

 クエスト屋に来た。

今あるギルドクエストは、

『モンスターの進行を止めて下さい。』(レベル46)

『ある男性を探して下さい。』(レベル無し)

『ホワイト・ドラゴンを討伐して下さい。』(レベル70)

『迷子の猫を捜してください』(レベル8)

『【迷いの森】で[針鼠の皮]を採ってください』(レベル16)

『[急募]ブルー・ドラゴンを倒せ。』(レベル99)

 そもそもこのゲームにおけるクエストは、プレイヤーが依頼料を払い代わりに採集や討伐などを行うのとランダムでクエストが出るのがある。

このクエストは全部プレイヤーが依頼したものだろう。

俺が興味を持ったのは『ある男性を探してください』だ。

気になる。もし違う人だとしても、罠だとしても行く価値はある。

「なぁ、やっぱり気になるか?」

横に居たクロムに話しかけられた。

「ああ、もちろん。」

このタイミングでだ。いくらなんでも怪しいだろう。

「何か情報があればいいが…」

レベル無しと書かれているが何があってもおかしくない。

準備だけはしておかなければ。

「みんな、準備はできているか?俺達は今からこのクエストを受けようと思う。」

俺がそう聞くと、

「僕はいつでも大丈夫だよ。」と、ウルフが。

「私も大丈夫ですわ!何があるか分からないので気を付けましょう。」と、リーフェが。

「死なないようにな。」と、クロムが。

決まりだ。このクエストを受けよう。

「このクエストを受けたいんですが。」

俺は受付に聞いた。

「ああ、はいはいこのクエストですね~少々お待ち下さい~」

俺達は数十秒待った。

「こちらのクエスト、依頼主さんは…書いていないですねぇ…詳細は、『私のパーティーメンバーがいなくなったので探してください。場所は【迷いの森】です。見つかっても見つからなくても依頼料は払います。』だそうです。」

迷いの森…か。もしかしたら俺の探している奴かもしれない。

だがあの男はパーティで行動するのだろうか。

まぁ依頼料はどのみち頂けるしやっておいて損はないだろう。

罠じゃなければいいが…杞憂であって欲しい。

こうして俺達は『迷いの森』へと向かった。


~迷いの森~

『迷いの森』へ来た。これでくるのは三度目だろうか。

「わぁ、ダンジョンなんて初めて来ました。こんな感じなんですね!!」

 そうか。リーフェは初ダンジョンか。

ちなみに今のレベルはこんな感じだ。

俺→20レベル クロム→29レベル ウルフ→18レベル

リーフェ→13レベル

みんなそれぞれ順調にレベルは上がっている。

装備は、

俺→鉄の剣Ⅰ クロム→火炎剣 ウルフ→水の拳

リーフェ→僧侶の杖Ⅰ

防具は…まぁいいだろう。

一応言うが俺とリーフェの武器に付いているⅠは武器強化の証だ。

武器を強化する度に数字が増えていき、最大でⅩまで強化できる。

クロムとウルフは武器に属性が付いている。

あと、戦う時の作戦も考えている。

まず、クロムが敵に突っ込む。そして俺とウルフでサポート。

リーフェは遠距離から魔術攻撃と回復魔術を使用。そんな感じだ。

「結構歩くな。」

クロムが言う。

「もしかしたら同じところ歩いているかもな。」

前も言った通り、このダンジョンでは同じところを歩くことがとても多い。

幸いにも、敵は出てこない。

同じ景色ばっかりで正直飽きてきた。

そう思った時だ。

「なぁあれって…」

最初に口を開いたのはウルフだ。

ウルフに言われ顔を上げるとそこには、

『偉大なる壁』レベル36がいた。

「嘘だろ…」思わず口から零れた言葉。

今のレベルじゃ勝てない。絶望。

逃げることも不可能だ。既に奴の射程圏内に入った。

「クロムッ!攻撃だ!」

俺はクロムに指示を出す。作戦通りに。

クロムは全力の攻撃を奴に当てた。が、奴はびくともしない。

「リーフェッッ!援護しろッ!」

次はリーフェに指示を出す。

「『希望の光』ッ!」

リーフェの魔術攻撃。光属性だ。奴にはあまり効かないかもだが動きは封じた。

ここでッ!

「ウルフッッッッ!攻撃だッ!行くぞォォッ!」

ウルフと共に一撃を決めるッ!

「うおおおおおおおおおおおッッッッッッッッ!!!!」

ガキィィィィィィィィィィィィィン

金属音が響く。

奴は粉々に砕け散った。そこには、何か光るものが浮かんでいた。

俺が触れると、何かを得たような気がした。

[スキル『偉大なる壁』を習得しました。効果 自分またはパーティーメンバーの周りに壁を配置します。]

なんだ…これは?

もしかして、データドレインってやつか?

倒した敵からスキルを入手するものなのだろう。

『偉大なる壁』のドロップアイテムを拾っていると、一つの影が見えた。

まさか…俺は追いかけた。

「あの、あなた…」

俺が声を掛けると、

「あ、君は?」

違う。あの声じゃない…

「俺達はクエストで人探しを頼まれたんだ。もしかしてあなたですか?」

俺が訊くと、

「そうか、そうだったか…だけど、俺はもうここから出れない…」

何だと?

「どうしたんだ?」

「それがだな…このダンジョンから出ようとしたとき、ある敵とあった。その敵はこのダンジョンで出るような強さの敵じゃない。レベルが異常に高かった。奴に魔法を掛けられた。それも、治癒のできない数日で死に至る魔法だと知った。俺はもう死ぬんだ…そうだ…彼女に伝えておいてくれ…『約束果たせなくてごめんな…俺はお前を愛している。俺の分まで生きてくれ。』と。それから、俺の装備やアイテムは取ってって構わない。」

彼は覚悟を決めていた。

「ああ、分かった。伝えておくよ。」

俺がそう言うと、男は笑顔で…息を引き取った。

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