第6話 「それぞれの一日」

 どこへ行こうか…頭が痛い…

正直今日はどこも行く気がしない。

「みんな、今日はそれぞれ好きなことをしていいぞ。俺は頭が痛すぎて何もする気が起きない。」

その方がいいかもしれない。

「そうだね…僕はもう帰るよ…」

「私もそうします。」

「俺も帰るわ…」

これからは自分の時間だ。

何をしようか…

頭が痛い。やっぱ何もしたくねぇ…

おえぇ…今にも吐きそうだ…

とりま宿に帰ろう…このままだと昨日ものが全部出てくる…

俺は宿へと向かった。


~ウルフ視点~

「うう、気持ち悪い…」

何故あんなに飲んだのだろう。昨日の自分を助走つけて殴りたい。

何もしたくない。吐いて楽になりたい。

家へ帰ろう…

僕は自分の家へと向かった。


~リーフェ視点~

「私、あんなに飲めたんだ…」

昨日の記憶が少し戻った。初級だけど解毒魔術を使ったのでちょっと楽になった。

自分でも驚いた。私がこんなにお酒飲める…ということに。

何をしようかな…

 お金は少しあるから新しい杖を買いたいな。

私は武器屋の方へ向かった。


~クロム視点~

 クソッ!調子に乗って金全部使ってしまった。

財布は空っぽだ。あーあ、しばらく酒やめよ…

 初級の解毒アイテムがあったので多少は楽になった。

「金、稼ぐか…」

たしかいいクエストがあったはずだ。見てみよう。

 俺はクエスト屋へと向かった。


~クロス視点~

 優しい人がいて良かった。

初級の解毒アイテムをくれたので少し楽になった。

さて、何をしようか…

金がないからな…クエストでも受けるか?

ちょっとしたクエストなら受けられる。

決めた。クエストを受けよう。

 俺はクエスト屋へ向かった。


~クエスト屋~

 クエスト屋に人はいなかった。その代わり(?)クロムが居た。

「クロム!!大丈夫なのか?」

「ああ、解毒アイテムがあったからな。そういうお前こそ、大丈夫か?」

「親切な人が居たからな。解毒アイテムをくれた。」

「良かったな。」

「ところで、クロムは何しにここに?」

「金が無いからな。クエストを受けに来た。」

「俺もだ。せっかくだし2人でなんかするか?」

たまには一緒にクエスト受けようぜ?親友。

「そうだな。」

「何を受けようか?」

 ゴブリン討伐、幻の花の採集、河童を見つけて下さい…などなど、今日もクエストは豊富にある。どれも報酬は豪華だ。

その代わりレベルが高い。だが、人数制限は無いようだ。

 ここは無難に、『ダンジョンの報酬を取ってきてください。』で良いだろう。

 俺はクロムに聞いた。

「クロム、このクエストなんてどうだ?」

頷くクロム。

「うん、いいな。レベルも低いし報酬そこそこいい。」

決まりだな。

 俺達はそのクエストを受けた。


~迷いの森~

来たな。

 ここはレベル10までの敵が多く出る。

主なモンスターはスライム、ゴブリン、ガブリエル、ミミックくらいだ。

 俺のレベルは10。クロムが22だ。

苦労することは無いだろう。

だが、このダンジョンは『初心者殺し』と呼ばれる序盤最難関ダンジョンだ。何故なら、『迷いの森』というように、このダンジョン自体迷路のようになっていて、同じ道を通る。というのはよくあることだ。

まぁ、俺もクロムも初心者じゃないし迷うことは無いだろう。


~数分後~

迷った。数分前の自分を殴りたい。フラグ回収とかいうやつだ。

 本来ダンジョンには、地図があるのだが『迷いの森』には地図がない。

このダンジョンのレベルが高ければ高いほど、上級者でもよく迷いやすい。

言い訳乙とか思った奴、一回このダンジョン入れ。絶対迷うから。

「ここ、さっきも通ったよな?」

景色が変わらないのでさっきと同じ道かすら分からない。

「分からない。とにかく進むか。」

俺たちはとにかく進んだ。道中、襲い掛かる敵を撃破しながら。

そのおかげか?レベルが上がった。俺が13レベル、クロムが23レベルに上がった。

もう体力も限界に近づいた頃、光が見えた。

まさか、神殿か?

ダンジョンの奥には神殿が必ず1つ以上はあり、宝箱からはアイテムが絶対出る。

「やった!神殿だ!」

そう思ったのもつかの間、2人の男女が見えた。

女の方は青の髪で、男は金髪。どこかで見たことのある服装。特徴のある声。

「やっぱり来たわね、クロム。」

まさか。

「雑魚のクロスもいんじゃん。何しに来たの?お前のレベルじゃ無理だよww」

エリナ、ロキ…なんでここが?

「お前ら…なんでここに?」

クロムが訊く。それに対しエリナは、堂々とした態度で、

「今日はクロム、貴方に提案しに来たのよ!あんな雑魚共なんかと一緒に居ないで私達の『夜桜』に入らないかしら?金、名声、富、女、なんでも手に入りますわ!」

下衆が。俺の目指す『夜桜』なんかじゃない。

俺の親友の答えは決まっている。

「断る。」

やはりな。クロムはやはり本当の親友だ。

「俺の仲間を悪く言った時点で、お前らのとこには行かない。まぁ、最初から行く気なんてないけどな。」

かっこいいぞ、我が親友よ。

「じゃあ、殺すしかないわね。」

は?

一瞬だった…

一瞬で、俺達の後ろに…

まずい、と思った時には遅かった。

ああ、今度こそ死ぬのか。こいつらに復讐できないまま…

悔しかった。あんな奴に負けるなんて。

死にたくない。

そう思った時だ。

周りが白くなった。あの時と、一緒だ。

「閃光。周りを切り裂け。」

あの時と同じ声。俺が初めて『killer』と会ったとき。

俺は男に助けられた。今も。

そこから俺の記憶は無くなった。


~???視点~

やはり、『夜桜』が来たな。

クロム、クロスは確実に死ぬ。

少しばかり様子を見ていこう。

男は『迷いの森』の中へ入っていった。そして、一度も迷わずに…

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