第3話 「最初のクエスト」

 あれから1週間が経った。

 全てが嫌になった。憂鬱だ。彼女にも、仲間にも裏切られて。いや、あんな奴らは初めから仲間なんてもんじゃなかったのだ。

 資産も全部奪われた。武器も、装備も。

友情?そんなもの最初から無かったのだ。

 もういっそ死ぬか?死に場所でも探すか…

 ひと思いにゾンビあたりの殺されるなら嬉しい。

 そう思い俺は宿から出ようとした。そのときだ。

ドンッ!

誰かとぶつかった。

「す、すみません。」

俺はすぐ謝った。

「わ、私こそごめんなさい!!そそそ、その、怪我とか、してないですか?」

ぶつかったのは女だった。もう女なんて見たくないんだ。やめてくれ。

「あの~私、リーフェっていいます。もしかしてあなた初心者ですか?」

なんだこのアマ?いきなり失礼な奴だな…

「まぁ、一応初心者だ。俺はクロス。」

一応俺も自己紹介をした。

「わぁ!おんなじなんですね!!よかったらフレンドになりませんか?」

は?突然何を言い出すんだ?イカレてるのか?

「いきなりなんだ?もしかしてフレンドになるためにわざとぶつかったとかないよな?」

そんなわけないだろう…

「そそそそそそそんなことなななななななないですよよよよ」

分かりやすいな!!下手か!!!

「まぁ、仕方ない。フレンドになるか。」

正直トラウマだ。でもここで俺が下がらないと、いつまでくっつくか分かんないしな。

「ありがとうございます!!それであの、これからどこに行くんですか?」

正直に話すか?

いやめんどいな。適当に言っとくか…

「ちょっと暇だからな。その辺歩いてくるだけだ。」

「私も一緒でいいですか?」

どうしようか…

正直一人の方が気楽だ。だけど、今の俺には話す人が必要かもな。

「いいぞ。折角だしなんか見ていこうか。リーフェだっけ?お金持ってる?」

まぁ、死に場所を探しているんだ。最後の思い出づくりだ。

「お金無いんです。」

なるほど。

「じゃあ、お金稼ぎにクエストでもやってみるか?」

俺がそう言うと彼女はびっくりした様子で

「え?クエスト…ですか?」

「この世界では基本的に、序盤はクエストでお金を稼ぐんだ。最も稼げるのが討伐系のミッションだが今は弱い。最初は採集系のクエストでお金を稼ぐ。報酬の経験値もあるから、序盤はこれで稼げる。」

「そうなんですね!知らなかったです!!」

え?まじ?

「とりあえずクエスト屋に行くか。」

「はい!」

俺はリーフェとともにクエスト屋へと向かった。


クロス…4レベル リーフェ…2レベル ウルフ…10レベル


クエスト屋には、たくさんの人がいた。

俺が順番待ちをしていると、急に声を掛けられた。

「あれ、クロス君じゃん!!君もクエストかい?隣の子は?」

1つづつ質問をしろ。

「暇だからクエスト受けに来た。隣はリーフェ。俺と同じ初心者だ。」

俺はそう答えた。

「大変なときに始めちゃったね~二人とも。俺はウルフ。分かんないことがあったら教えてね!!」

爽やかな笑顔でウルフはそう言った。

「はい!ありがとうございます!!ウルフさん!!」

笑顔でリーフェも答える。

「折角だし3人でクエスト受けるか?3人だと色々楽だしさ。」

俺はそう二人に問いかけた。

「いいですね!!」「僕も大丈夫だよ!!」

二人からOKをもらった。

「何受ける?」

「二人ともクエストは初めてかな?初めてなら簡単なクエストにでもしようか。」

別に俺は初めてじゃないんだがな。

「『スライムを10体倒してください』なんてのはどうでしょうか?」

スライムか…別に大丈夫だろう。

「ちなみにリーフェちゃんはジョブ何にしたの?」

「あ、私は僧侶です。回復なら任せてください!!」

僧侶か…回復役もいないしちょうどいいんじゃないか?

「僕はウォーリア(闘士)だよ。素早さとか防御は低いけど攻撃力が高めだよ!」

ウォーリアか…攻撃か…俺と被るが俺の方が素早さ、防御は高い。俺がサポート役に回るのもありだな。

「俺は剣士だ。素早いからウルフ、お前をサポートする。」

回復のリーフェ、攻撃のウルフ、サポートの俺で結構バランスがとれてるな。

「二人とも、武器は何を使っているの?」

武器か…たしかそんな持ってなかったはずだ。

「私は『見習いの杖』です。他の武器は無いです。」

やっぱりか。初期装備だが特殊効果はない。そのかわり、絶対壊れない。

武器にはそれぞれ耐久度があって、壊れると威力が大幅に下がったり特殊効果が発生しない。治すにはリペアキットを使うか武器屋に持っていくしかない。このゲームの不満点の一つだ。

「俺はスライム特攻の剣と初期装備しかない。」

3日前。裏切られたショックとストレスが溜まり、腹いせにスライムを殴りまくった。そのとき偶然思いついて、『スライムソード』を作った。この剣は、攻撃力こそ低いもの(それこそ、初期装備よりも低い)、スライム系統の敵にダメージが1.3倍というものだ。

「じゃあちょうどいいね。『スライムを10体討伐』のクエストを受けよう!!!」

こうして俺達は、初めてのクエストを受けることになった。


親密度 リーフェ 0.3(+0.3) ウルフ 0.6(+0.6)



~平原~

「ついたよ。ここがスライムがよく集まる平原だよ!」

 懐かしい…と、言いたいがもう思い出したくもない。

 一応言っておく。ここは俺がチュートリアル後に初めて来た平原だ。あのクソビッチに連れられ俺は戦闘の仕方を学んだ。

ああ、思い出すだけで吐きそうだ。

「あ!あそこにスライムがいますよ!」

 スライムだ。相変わらずムカつく面してんなぁ…

「オラァッ!!」

 俺は『スライムソード』で思いっきりスライムを切った。

スライムはスッと2つに分かれた。

一度刃が入ったらスゥーーと切れるように。

その後は順調にスライムを倒していった。

リーフェも何体か、スライムを倒した。

 10体目を倒し終わったその時だった。

どこからともなく一つの影が横切った。

「あ、危ないッ!!」

俺は咄嗟にリーフェを守った。

すかさずウルフは防御魔法を展開した。

「危なかったッ!!防御魔法を覚えていなかったら3人とも死んでいた…」

この敵は…?

見たことが無い…

全身が黒く覆われている中世の騎士のような敵?だ。

「なんだこの敵…見たことがないぞッ!!」

ウルフも見たことがない?アプデで追加されたわけでもないしな…

まさか…

そういえばエリナ達が言っていた…『killer』なのではないのか?

あの騎士は…俺が中級者に上がったときにジョブチェンジしたときに選んだジョブだ…

「我は『夜桜』から貴様らを殺すよう命じられた…クロス、貴様の『騎士』としてのデータを使い、我が生まれたのだ。」

 やはりか…

「クロスってもしかして…」

「すまん!!その話は後だ!!タウンへ急げッ!!」

 今の俺達では無理だ…死ぬ。

俺達は走ってゲートへ向かう。

そのときだ。

「キャア!」

な…なんだと…

振り返るとリーフェが足を滑らしてした。ただ転んだのではなく…奴の魔法だろう…

このままだとリーフェが…

だが助けたら俺達も…

クッ…考えるのは面倒だッッ!!

俺はリーフェの元へ走る。

「リーフェ、大丈夫か?」

「ありがとう…でも…」

「俺は大丈夫だ…急ぐぞ…」

しかし、奴の攻撃が来た…

恐らくここで俺は死ぬだろう。

死ねるならよかった…なんて考えは出てこない。

俺はまだ、この世界でやらなきゃいけないことがあるッ!!

だが…現実は非情だ。

俺は死を覚悟した。

そのときだ。辺りが白い光で包まれた。

刹那、『killer』の体が2つに分かれた。

何が起きたか理解が追い付かない。

「クロスか?早く逃げろ!!」

男の声だった。誰かは分からない。

俺は言われるがまま逃げた。

俺達はゲートをくぐった。

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